俺はスキルポイントの使い道を考えている。
以前より保留していた15ポイント、クラーケンのミッション報酬の20ポイント、そしてレベルアップによる20ポイント。
合計で55ポイントもある。
「やはり、ヤマト連邦向けのスキルは上陸後に決定するべきか……。とはいえ、全てのスキルポイントを温存するのもやり過ぎだな。上陸時にはまた別のミッションが達成となって、ポイントが20入ってくる予定だし……」
俺は思考を続ける。
ミッション
ヤマト連邦を訪れよう。
報酬:スキルポイント20
このミッションは、ヤマト連邦に上陸した際には確実に達成扱いとなっているはずだ。
つまり、現時点で保有しているスキルポイント55と合わせ、俺はヤマト連邦の任務に向けて75ポイント分の強化をすることができる。
ただ、ヤマト連邦の件とは別に、今まさに差し迫っている問題がある。
それは、人魚の里の件である。
里の近くでジャイアントクラーケンと激闘を繰り広げた俺は、人魚族に警戒されて拘束されているのだ。
これをどうにかする必要がある。
初日に絡んできた不良集団『海神の怒り』は大したことなかったので、戦闘面において全力で警戒するほどではないが……。
(ネックなのは、ここが海底であることか……)
この『海神の大洞窟』は大地から空気が漏れ出ていて、地上のような環境となっている。
また、俺には人魚メルティーネの加護があり、水中でも最低限の呼吸はできる。
そのため、海底であってもそれ自体が即座に危険なわけではない。
ただ、海底から海上に戻る難易度は高い。
俺1人でここ『海神の大洞窟』を脱出しても、途中で追手に追いつかれたり、海の魔物に襲われるリスクがある。
メルティーネ1人に手伝ってもらっても似たようなもの。
複数の人魚族に協力してもらわないと、海上への帰還は難しいだろう。
一昨日に与えられた新たなミッション『10人以上の人魚族に加護(微)を付与せよ』の件もあるし、ここはしっかりと人魚族に向き合うべきだな。
「人魚の里で発生している小さな困りごとを解決していけば、加護(微)ぐらいはいけるか……? いや、その前にこの拘束から解放してもらうのが先だな。どうにか、俺が人魚族に敵意を持っていないことを示して……。あとは、『海神の怒り』のリベンジも警戒するか……」
俺は腕を組む。
なかなか難題である。
「……よし。今はとりあえず、水中行動系のスキルを強化しよう。何があったかな……」
俺はスキル一覧を表示させる。
水中行動系のスキルは、これまであまり注目してこなかった。
なぜならば、取得しても恩恵が少ないからである。
冒険者は基本的に陸上で活動し、水中で戦わなければならないことはあまり多くない。
もちろん海や川で魔物と戦うこともあるので、水中行動系のスキルも全くの無意味ではないのだが……。
優先度は低いと言わざるを得なかった。
しかし今の状況を考えれば、水中行動系スキルを取得しておいてもいいだろう。
「ええっと……。『水泳術』『波乗り術』『水中機動術』『潜水術』『肺活量強化』『銛(もり)術』『水流把握術』『水圧適応術』『操魚術』あたりか……。全てを取得したいが、もちろんスキルポイントが足りない。それに、そこまでするほどでもないな……」
水中行動系のスキルが活きる状況は限定的だ。
直近では役立つが、長い目で見るとあまり有用ではない。
ここでの活動において、特に重要そうなスキルに絞って2~3つぐらい取得するのが良さそうか。
「まず、『水泳術』は無難そうだな……。取得しておいて損はないか……」
泳ぐのが上手くなれば、海中で人魚族のチンピラに襲われたときでも戦いやすくなる。
また、海底から海上へ向かう際にも有用だろう。
「『波乗り術』は不要だな。ここは深海だから、波は起きないし……」
俺は候補を絞り込んでいく。
波乗りが上手くなれば、ビーチでギャルからモテモテになるかもしれない。
オルフェスやルクアージュにはビーチがあったので、ゆくゆくは取得してもいいだろう。
しかし、今は不要だ。
非常に惜しいが、サーフィンで黄色い歓声を浴びるのはしばらく先のことになる。
こうして俺は、取得候補のスキルを絞っていくのだった。
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