【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1728話 報告

公開日時: 2025年4月25日(金) 12:10
文字数:1,124

「――くそっ! やはり、一筋縄ではいかないか……!」


 1週間後。

 薄く揺れる陽光が、桜花城の天守閣に射し込んでいた。

 静寂と緊張が共存する空間の中、俺は木目の浮いた机に広げられた報告書を握りしめたまま、無意識に奥歯を噛み締める。

 紙面に滲む指の熱は、未だ冷めやらぬ怒りと焦燥の表れだった。


『状況は芳しくありません。他藩から来た者が櫛名田比売の加護を得たという情報あり。樹影さんの力に若干の低下傾向。迷宮探索は保留とし、加護を得た者の情報を探ります』


 最初に届いたのは、翡翠湖に派遣した紅葉からの報せだった。

 くぐもった筆致から、彼女の焦りが垣間見える。

 クシナダの加護――神の選定が、俺たちの手からすり抜けてしまった。

 紅葉たちが到着する前に、余所者がすでにその力を得ていたのだ。


 しかも、その者は他藩の人間だという。

 噂に過ぎなかった『新たな適性者の出現』は、もはや確定的な現実へと姿を変えていた。

 そいつが遥か遠くの余所者ならまだいいが、近麗地方の藩に忠誠を誓う侍とかであれば話がややこしくなる。

 紅葉の言う通り、情報は必要だ。 

 しかし……


「紅葉は強いが、攻めの立場だと厳しいかもな……。樹影の力も弱まっているそうだし」


 口に出すことで、少しでも思考を整理する。

 紅葉の実力を疑っているわけではない。

 だが、相手が神の加護を得た者となれば話は別だ。

 今は無理に仕掛ける必要はない。

 彼女には、戦うのではなく見極めてもらいたい。

 加護者の素性、その目的、背後に潜む意図――それを暴くのが、今の最優先だ。


「次の一通は……」


 続いて手にしたのは、虚空島に関する報告書。

 そこに記されていたのは、予想以上に異様な情報だった。

 浮遊する島の下に広がる山脈、その奥地を進んでいた探索隊が、突如として“天降る弓矢”に見舞われたという。

 雷鳴のような轟音が空を裂き、直後に無数の弓矢が降り注いだ。

 しかもそれらは、ただの矢ではなかった。

 妖気を帯び、神の気配すら纏う矢だったという。


「虚空島……。神気の濃い場所だとは推測していたが、まさか神が直接的に守護しているのか? いや、あるいは適性者が力を行使したのか……」


 桔梗たちは懸命に応戦したが、その中で雷轟が矢に貫かれて負傷。

 夜叉丸も、部下を庇って防御系の秘術を連発し、満身創痍となったらしい。

 幸いにも追撃はなかったとのことだが、それで安心できるものではない。

 彼女たちは今、山脈内のとある洞窟へ一時的に避難中。

 警戒を解くことは、即ち死を招く――そんな桔梗の意思を感じさせる記述だった。


 そして、三つ目の報告が俺の胸中に最も深い怒りを呼び覚ました。

 流華からの書簡。

 その文面は、他の誰の報告よりも冷静で簡潔であったが、そこに綴られていた内容は、俺の感情を静かに逆撫でした。

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