【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1213話 密航者

公開日時: 2023年11月23日(木) 12:23
文字数:2,051

 ヤマト連邦への船旅において、『食料の減りが早い』事件が発生した。

 空間魔法にも食料はあるので、特に問題はない。

 だが、念のために調査しておいた方が安心だ。


「密航者か小動物か……。いずれにせよ、怪しいのは船内だろうなぁ」


 俺は船内の見回りを行う。

 快晴の今、船は普通に海上を進んでいる。

 操舵当番のサリエやリーゼロッテ、自由時間のユナやマリアを始めとして、搭乗員はデッキに出ている。

 隠れる場所があるとすれば、船内だ。

 俺たちがたくさん楽しんだ寝室か、船倉あたりだろう。


 もし密航者なら確保しておいた方がいい。

 場合によっては船から放り出す必要がある。

 いや、こんな海のど真ん中に放り出すのはマズイよな。

 ヤマト連邦への潜入作戦に部外者が交じるのもリスキーだし、難しいところだ。


「さて、ここが船倉だな……。食料を置いてある一角は……」


 俺は船倉を覗いてみる。

 モニカとニムが、食料の残量を確認してくれているようだ。

 その他に、人は誰もいないようだが……。


「……ん? なんだ?」


 妙な気配を感じた。

 俺は『気配察知レベル2』のスキルを持っているので、生物の気配を感じ取る能力に長けている。

 どうやら、船倉に何かいることは確定――


「いや、違うな。この気配は大型の魚か何かだ。たまたま、船の近くを通ったといったところか……」


 俺は考えを修正する。

 スキル『気配察知』はとても便利だ。

 気配というイマイチ不確かなものを感じ取ることができる。


 しかし、決して万能ではない。

 気配を感じたとして、『何かいる』以上の情報を得ることは難しい。

 船の床や壁を隔てた向こう側に大型の魚が通ったら、それが部屋の中にいると誤認する恐れがあるのだ。

 今回についても、この船倉に何かがいると感じたのは勘違いだったらしい。


「ふむ、密航者も小動物もいないようだな。となれば、あまり長居する意味もないか……」


 俺は船倉を一通り見回ると、部屋を出る。

 結局、モニカの勘違い説が濃厚かな?

 モニカとニムが改めて食料の残りを確認中だし、それではっきりするだろう。


「一応、あの部屋も確認しておくか」


 俺は、潜水中にみんなで楽しんだ例の部屋に向かう。

 あそこは寝室でもある。

 船倉とは違い、ミリオンズの面々がよく出入りする部屋だ。

 密航者がいたとしても、そこに潜んでいる可能性は低いだろう。

 だが、小動物か何かが俺たちと入れ替わるようにして、隠れている可能性は否定できない。


(……おっと。念のため、『気配隠匿』スキルを使っておくか……)


 俺は気配を消し、そっと寝室に近づく。

 ただの寝室に近づくために気配を消すなんて、あまりないことだ。

 これまで、密航者や小動物が潜んでいるなんて考えなかったからな。

 気配を消して部屋に入れば、密航者だろうと小動物だろうと姿を見つけられるかもしれない。


(さて、中に何かいるかな……?)


 俺はそっと扉に耳を当て、部屋の中の様子を窺おうとした。

 中からは何も聞こえない。

 どうやら誰もいないようだ。


(念のため……)


 俺は静かにドアを開く。

 そして部屋の中に入った。


「……ふむ。やはり、誰もいないか」


 部屋の中を見渡してみても、怪しい点はなかった。

 念のため部屋の隅から隅まで確認したが、何も不審な箇所は見つからなかった。


「気のせいだったか」


 俺はホッと一安心する。

 少し神経質になっていたようだ。


「しかし、やけにきれいだな……」


 ここで俺たちは何度も……というより毎日しているのだから、多少は汚れていてもいいはずだ。

 だが、部屋がきれいなのは不自然だった。


「誰か掃除でもしてくれているのかな?」


 長い船旅だ。

 ミリオンズの面々で、役割分担をしている。

 掃除当番は決めていなかった気もするが、誰かが自発的にしてくれているのかもしれない。

 最有力は、メイドのレインか。

 古代アンドロイドのティーナの可能性もあるな。

 後でお礼を言っておこう。


「とりあえず戻るか……」


 俺は部屋から出るために振り返った。

 ――その瞬間、何者かと目が合った。


「えっ!?」


 思わず声を上げてしまう。

 気配を感じなかった。

 いや、気配は技術次第で消せるので、あり得ないことではないが……。

 それよりも、船内に人がいることが問題だ。

 俺は急いで構えるが――


「ぐへっ!?」


 何かに躓いて転んでしまった。

 しかも、謎の人物に馬乗りされてしまった。

 手際が良い。

 そして、力も強い。

 とっさのことでまだ俺が闘気を全開放していないというのもあるが、それにしてもこの俺を押さえ込むほどの力とは……。

 いや、これは複数人に襲われている!?


「くっ……!?」


 俺は身体を起こそうとする。

 しかし、馬乗りになった人物に動きを封じられてしまった。


(くそっ!)


 俺が焦りを感じ始めたそのとき――


「タカシさん~。そんなに慌てないでよ~」


「……ここまで船が進んだなら、もう引き返すことはないはず。だから、こうして姿を見せれた……」


「私の影魔法のおかげで、何やかんやで潜入に成功したわね。でも、まだ油断できないわよ。私たちの魅力を使って、まずはハイブリッジ男爵を籠絡しないとね」


 聞き覚えがある声が聞こえた。

 この声は――

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