「さて……。メルティーネやエリオットたちと別れたあと、重力魔法を使って陸地の近くまで来れたが……」
俺はヤマト連邦らしき島国を見ながらつぶやく。
ここまでは順調だ。
近海まで運んでもらえたおかげで体力に余裕がある。
別れたあとは重力魔法を用いての自力飛行だが、これぐらい距離であればさほどの負担ではない。
「そろそろ、海中に潜っておくか……」
速度の面では、重力魔法の方が優れている。
また、体力や魔力の総合的な消耗度という点でも重力魔法の方が少ない。
現代日本で例えれば……海中行動は、普通にそのまま水泳するぐらいの体力を消耗するイメージだろうか。
俺は『体力強化』や『水泳術』のスキルを持っているので常人よりも長距離の移動が可能だが、根本的には肉体運動なのでどうしても疲労は蓄積する。
一方、重力魔法による移動はどうか?
こちらは、バイクや車の運転に近いかもしれない。
ここが海上であることを考えれば、水上バイクが近いか。
体力はさほど消耗しないが、それなりに集中する必要はあるといった感じだ。
俺には『魔力強化』があるので、極端に強い集中とかは不要だけどな。
「さて、海中に潜って……と」
移動手段としての水泳(潜水)と水上バイクを比較するなら、後者の方が総合的なメリットは大きい。
ただし、水泳(潜水)にもメリットはある。
それは、海中に潜っておくことで敵から発見されにくくなるというメリットだ。
また、重力魔法を使用しないことで、魔力感知されるリスクを低減させることも可能である。
ヤマト連邦の海岸沿いには忍者や侍が配置されているという話だし、しかも妙な結界の気配も感じる。
用心しておいた方がいいだろう。
俺は慎重に海中を進んでいく。
「――むっ!? この感覚は……何か特殊な結界か? 一応、無事に通り抜けたようだが……」
人魚の里にも、結界魔法使いはいた。
魔法師団の分隊長であるヨルクだ。
彼女から結界魔法について少し教わったのだが、結界魔法にもいろいろ種類があるらしい。
侵入事態を阻まれなかったということは……侵入者を感知する類の結界だろうか?
魔力を抑えた状態なので、さほどの警戒はされないはずだが……。
俺という侵入者が存在すること自体は、バレたかもしれない。
「効果は限定的なものとはいえ、かなり広大な範囲に張っているようだ。やはりヤマト連邦は油断できない国だな。先行しているミティたちは無事だろうか……」
俺は先行しているミティたちのことを考える。
合計で16人の集団だ。
ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華、レイン。
こちらの10人に関しては、通常の加護を付与済みだ。
戦闘能力という点では全く問題がない。
だが、蓮華以外はヤマト連邦に詳しくないし、不安がないわけではない。
ティーナ、ドラちゃん、ゆーちゃん。
こちらの3人については元々が人外の存在である上、俺の加護(小)も付与されている。
戦闘能力という点では心配無用だろう。
ただ、人族の常識に疎いのが難点ではある。
最後に、雪月花の三姉妹。
加護(小)を持っている上、ヤマト連邦の生まれである。
最も頼りになる存在だろう。
だが、個人単位での戦闘能力という点で全幅の信頼を置けるかというと……少々微妙なところだ。
そこらの一般兵や一般冒険者よりは強いだろうが、超人レベルではない。
また、ヤマト連邦の生まれとはいっても、実際に詳しいのは彼女たちの地元ぐらいだろう。
頼りにはしたいが、あまり期待しすぎるのも良くない。
「まぁ、16人の力を合わせればどんな困難だって――って、ん? な、なにぃっ!?」
共鳴水晶が光っている。
この発光パターンからすると……ミティたちは無事なようだ。
それはいい。
だが――
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