【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

198話 1回戦 ニムvsビリー

公開日時: 2021年2月1日(月) 20:32
文字数:2,813

 メルビン杯の続きだ。

第5試合のモニカvsハルトマンは、モニカが勝った。


 そして第6試合は、ギルバートが登場した。

対戦相手はカルロス。

ババンやレナウと同じく、初級の武闘家だったようだ。

あっさりとギルバートが勝った。


 ギルバートの実力はかなりのものだ。

前回のガルハード杯では1回戦負けだったが。

あれは相手が悪かった。

相手のマクセルは、前回のゾルフ杯の準優勝者だからな。


 ガルハード杯の前にあった小規模大会の決勝では、ギルバートがジルガに勝っていた。

そのジルガは、ガルハード杯1回戦で当時のアイリスに勝っていた。

このあたりの試合結果から推測すると、当時の武闘における戦闘能力は、アイリス<ジルガ<ギルバート<マクセルといった感じになる。


 今回のメルビン杯でも、ギルバートは優勝候補の1人だろう。

2回戦以降で要注意の相手だ。


 まあ、2回戦以降のことはとりあえず置いておこう。

今は、目の前の試合に注目だ。


 今から第7試合が行われようとしている。

ニムの出番だ。


 対戦相手はビリー。

ラーグの街を拠点に活動している、Dランク冒険者だ。

黒き旋風というパーティを組んでいる。

俺と西の森への遠征で同行したこともあるし、食事会に招いたこともある。

知らない仲ではない。


「続きまして、第7試合を始めます! ニム選手対、ビリー選手!」


 司会の人がそう叫ぶ。


 ニムがコロシアムのステージに上がる。

対戦相手のビリーと対峙する。


「よ、よろしくお願いします」


「ああ。よろしくな」


 2人が試合前のあいさつを交わす。

ニムは少し緊張しているようだ。


「両者構えて、……始め!」


 試合が始まった。

まずはお互いに距離を保ちつつ、様子を伺っている。


「やれやれ。少しやりにくいな……」


 ビリーがそうつぶやく。


「な、なにがでしょうか?」


「そりゃ、君みたいな小さな女の子と闘うことがだよ。変な勝ち方をしてしまうと、観客からブーイングを浴びそうだし」


 ビリーの懸念ももっともだ。

ニムは10歳と少しの少女。

対して、ビリーは10代後半くらいの青年。

ビリーがニムをボコボコにしたりすれば、間違いなくブーイングが起きるだろう。


「むっ! その心配は無用です! 全力できてください!」


 ニムが少し気分を害したようだ。


 彼女の実力は確かだ。

加護の恩恵により、身体能力が高い。

この1か月のメルビン道場での鍛錬により、格闘術レベル1と闘気術レベル1も習得した。

さらにステータス操作により、腕力強化をレベル2、脚力強化をレベル2、体力強化をレベル2、闘気術をレベル3まで伸ばしている。

そこらの初級の武闘家などに引けをとるとは考えにくい。

なめられるのは心外だろう。


 とはいえ、外見は幼い少女である。

ビリーの感覚も理解できる。

これは、身を以て理解してもらう以外にないだろう。


「わかった。ケガをさせないよう、せめて注意するよ。いくぞ!」


 彼がニムに駆け寄る。


「はっ! せいっ!」


「なんの!」


 ビリーの攻撃を、ニムが耐えている。

受け流すというよりは、腕などで的確に防御している感じだ。


 彼女の身体能力は高い。

腕力、脚力、体力。

それぞれバランス良く伸ばしている。

近接戦闘における安定感という意味では、モニカやミティとはまた違った良さがある。


 ニムとビリーの攻防が続く。

ややニムが優勢か。


 ビリーの格闘術は、レベル1ぐらいの初級だと思われる。

格闘術における力量は、ニムと互角だ。

単純に身体能力の差で、ややニムが優勢に闘いを進めているといったところか。


「くっ。はあ、はあ……」


 ビリーの息が上がってきた。

ニムは特に体力に秀でるからな。

長期戦は彼女の望むところだ。


 息が上がったビリーのスキを突き、ニムが攻撃を仕掛ける。


「せえぃっ!」


「ぐっ!」


 ニムの腹パンだ。

ビリーにそれなりのダメージが入ったようだ。

彼がとっさに後ろに引き、体勢を立て直す。


「なるほど……。確かに、少女と侮っていたら負けてしまいそうだ」


「も、もう遅いです。このままわたしが勝たせてもらいます」


「そうはいかない。まだ俺には奥の手がある。見せてあげよう」


 ビリーが手に闘気を集中させていく。

彼の手が黒色に染まっていく。


「これが我が奥義……黒色の旋風である。しかと見るがよい」


 ビリーが決め顔でそう言う。

口調も変わっている。

中二病か?


「で、ではわたしも奥の手を出しますね」


 ニムが闘気を開放する。


「剛拳流、動かざること山の如し」


 ニムの新技だ。

メルビン師範から伝授された、風林火山の内の”山”である。

耐久力が大幅に向上する。


「ほう。貴殿もなかなかやるようだな。それでこそ我が宿命の相手よ」


 ビリーが決め顔でそう言う。

何が宿命だよ。

君とニムは初対面だろうが。


「いくぞ! 奥義ーーブラック・サイクロン!」


「”鉄心”」


 ビリーの渾身の”ブラック・サイクロン”。

まあ実態は、闘気を込めたただのパンチだろうが。


 それに対するは、ニムの”鉄心”だ。

闘気を込めた鉄壁の防御である。


 はたしてどちらが勝つか。

俺はハラハラしつつ見守る。


 ドガン!

ビリーのパンチとニムのガードが激突する。


「ぐっ。バ、バカな……」


「残念でしたね。わたしには効きませんよ」


 ビリーの攻撃を耐えきったニムがそう言う。

まったく効かなかったわけではなさそうだが、戦闘不能というほどのダメージは負っていない。


「む、無念……」


 ビリーはそう言って倒れた。

闘気を使い果たし、力尽きたのだろう。

審判がカウントを始める。


「……8……9……10! 10カウント! ビリー選手のダウン負けです! 勝者ニム選手!」


 審判がそう宣言する。

無事にニムが勝利を収めることができた。


 治療魔法士がビリーに駆け寄り、治療魔法をかける。

治療魔法は外傷や毒の治療の他、体力や闘気の回復にも多少の効果がある。


 ニムがビリーに歩み寄る。

手を差し伸べる。


「お、お疲れ様でした。対戦ありがとうございました」


「ああ。こちらこそ対戦ありがとう。……それにしても、見かけからは想像もできないぐらいの強さだな。びっくりしたよ」


 ビリーがそう言う。

口調が元に戻っている。


「あ、ありがとうございます。メルビン師範やタカシさんに教えてもらったおかげです」


「タカシか。こんな小さな女の子をパーティに入れていると聞いて、正直どうかと思ったが。なかなか見る目があるみたいだな」


 ビリーがこちらに視線を向けつつそう言う。

会釈だけしておく。


 ニムがステージからこちらに戻ってくる。

祝福しておこう。


「おめでとう! ニム!」


「お疲れ様。ニムちゃん」


 俺とモニカ、それにミティとアイリスでニムを出迎える。


「あ、ありがとうございます。なんとか勝ててよかったです」


 ニムが安心したような顔でそう言う。

実力で言えば、ニムのほうがビリーよりもやや上だったと思う。

しかし、試合運びによっては彼女の敗北もあり得たかもしれない。


 今回は、ビリーの全力での攻撃vsニムの全力での防御という形に持ち込めたことが功を奏した。

2回戦以降も、試合運びによっては勝つことも可能だろう。

期待したいところだ。

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