【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1309話 決着

公開日時: 2024年2月29日(木) 12:27
文字数:1,626

 タカシが海溝の奥底で態勢を立て直している頃――


『フム……。少シヤリ過ギタカ?』


 海神ポセイドンの石像が唸る。

 彼はタカシがいるはずの海溝を見据えた。


『ソロソロ、戻ッテキテモ良イ頃ノハズダガ……。奴ヲ買イカブッテイタカ?』


 彼は神である。

 だが、全知全能の神ではない。

 その名の通り、海を管轄する神だ。

 それも、この世界全ての海を掌握しているわけではなく、およそ7つ程に分けられた区分の内の1つを管轄しているのみである。

 加えて言えば、今の彼は依代の石像を使って活動している。

 暗い海溝に沈んだタカシの動きは、彼には見えなかった。


『所詮ハ矮小ナル人ノ子カ……。失望シタ』


 ポセイドンの石像はそうつぶやく。

 彼はタカシを、抜きん出た存在として認めていた。

 だからこそ、依代の体で出せる範囲で本気の一撃を与えたのである。

 しかし、今の彼は失望していた。

 所詮は人間であり、矮小な存在の1つであると。


『サテ、ソロソロ追撃シテ終ワラセルカ。千年以上ノ時ヲ経タ我ガ依代デ、直々ニ引導ヲ渡シテヤロウ』


 ポセイドンはそうつぶやき、海溝の底に沈んでいるであろうタカシの元へ向かおうとする。

 その刹那、ポセイドンの石像は何かを感じ取った。


『ナ……!?』


 彼は股間の下を見る。

 するとそこには――いつの間にかタカシがいた。

 それも、魔力や闘気を全開にした臨戦態勢である。


『馬鹿ナ!? ソレホドノ出力ヲ発揮シテ、我ガ気付カナカッタナド……!!」


 ポセイドンは驚愕する。

 とっさに体勢を変えようとするが、もう襲い。


「うおおおおっ! 千年以上の時を生きる海神ポセイドンよ!! 俺の必殺技を食らえぇえええ!!!」


 タカシは左右の手を組み、構える。

 両の人差し指に、膨大な闘気と魔力が込められた。


「【万年殺し】ッ!!!」


 タカシの必殺技が繰り出される。

 それは、千年以上の時を戦い抜いた海神ポセイドンの依代のケツを襲った。


『オッ……オオオォオオオーーッ!! ソ、ソンナ馬鹿ナァアアアーッ!!!』


 ポセイドンの絶叫が海底洞窟に響く。

 その石像は、あくまで依代ではある。

 しかし、痛覚的な感覚は一部共有されていた。


「ハァ……ハァ……! ど、どうだっ!!」


『ヌオオオオォーッ!? 千年ズット守ッテキタ急所ヲ……一目デ見抜イタト言ウノカ!?』


 タカシの攻撃を食らったポセイドンの石像は、海中で体勢を崩して悶えている。

 どうやら、この石像の弱点は肛門部だったらしい。


『グオォオオ……ッ!! 依代ガ……壊レル!! 我ガ依代ガァアアアーッ!!!』


「……やり過ぎたか? やっべ……」


 タカシは焦る。

 彼としては、命まで取るつもりはない攻撃だった。

 よく考えてみれば、海神は最初に『力を与えるに足りる存在かどうか見極めてやる』という趣旨のことを言っていた。

 それに、戦闘中には『海流爆陣』で魔力回路や気門をほぐしてくれたりもした。

 不意打ちで全身全霊のカンチョーをするのは、やり過ぎだったかもしれない。

 石像はひび割れ、今にも壊れそうだ。


『グヌッ! 我ハ神デアルゾ!! 依代ナド、マタ作リ直セバ良イ! ダガ、ソノ前ニヤルコトガアル!!』


 ポセイドンの石像は吠える。

 その刹那、彼の体が発光した。


「うおっ!?」


『貴様ノ強サヲ認メヨウ! ポセイドンノ名ニオイテ、貴様ニ弐級水精ノ加護ヲ授ケル!!』


 ポセイドンの石像はそう叫ぶ。

 そして――

 ドッゴーン!!!

 石像は、そのまま粉々に砕け散った。


「弐級水精……。ああ、君がそうか」


 タカシの目の前には、一雫の魔力水があった。

 ピカピカと光っており、意思が宿っていることが分かる。

 だが、人型になったり言葉を発したりすることはなかった。


「炎精サラマンダーと同じパターンか? 力が馴染むまで、時間が必要なのかもしれないな」


 タカシはそうつぶやきながら、魔力水に手をかざす。

 それは彼の体へと吸収されていった。


「さて……。里に帰るか。突然いなくなって、メルティーネや陛下たちが心配しているだろうしな」


 タカシはそうつぶやく。

 そして、彼は『海神の大洞窟』の出口を目指して泳ぎ始めたのだった。

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