【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1297話 魔道具『玉手箱』

公開日時: 2024年2月17日(土) 12:40
文字数:1,588

 俺はエリオット王子が発動した魔道具『呪鎖』により、再び拘束された。

 そこに『海神の憤怒』や『海神の怒り』が殺到してくるも、ネプトリウス陛下の『王の威厳(キングズ・マジェスティ)』によって動きを封じられる。

 これで終わりかとも思ったが、エリオット王子にはまだ奥の手があるらしい。

 彼は懐から小さな水晶玉を取り出した。


「ははは……! 海神よ! その憤怒をここに示したまえ!!」


 エリオット王子が叫ぶ。

 すると、水晶玉に海中の魔素が集まってきた。


「……なんだ?」


 俺は訝しむようにつぶやく。

 その直後だった。

 水晶玉が発光し、何かが部屋の壁を突き破って現れる。

 それは――大きな蛇のように見えた。


「これは……!?」


「海神の化身、アビス・サーペントだ!!」


 エリオット王子が叫ぶ。

 ……どうやら、魔物を召喚・使役する類のアイテムだったらしい。


「なるほど。それが殿下の切り札か」


 かなり強そうな魔物だ。

 今の俺は、『海神の呪鎖』によって再び魔力や闘気が抑え込まれている。

 力を込めれば、身動きが取れないほどではないが……。

 この状態での勝算は……。


「勘違いするな。真の切り札はこれからだ!」


 エリオット王子は叫ぶと同時に、懐から箱のようなものを取り出す。

 ずいぶんと物々しい雰囲気の箱だ。


「エリオット! 貴様!! 宝物庫からそれを持ち出したのか!?」


 ネプトリウス陛下が目を見開く。

 その表情は怒りというより驚愕や不安の色が濃い。


「へ、陛下?」


「あれは……。魔道具の――」


 ネプトリウス陛下が何かを言いかける。

 だが、エリオット王子はそれを遮るように言った。


「魔道具『玉手箱』だ! これを開けると――ぬううぅん!! はあああぁ……!!!」


 エリオット王子が玉手箱を開けた。

 その瞬間、周囲に濃密な魔素が溢れ出てくる!

 彼の周囲が白く染まり、こちらから見えなくなった。


「ぐううぅっ……!!」


 エリオット王子は、苦しそうな声を上げる。

 一体何が……?

 俺は嫌な予感を覚えながらも、状況を見守るしかない。

 やがて魔素の放出は終わり、視界がクリアになってきた。


「な……!?」


 俺は驚愕する。

 なぜなら、エリオットの姿に大きな変化が訪れていたからだ。

 彼の体は一回り大きくなり、瞳は真っ黒に輝いている。

 口は大きく割れて鋭くとがり、両手には鋭い爪が伸びていた。


「おお……!!」


 エリオットは歓喜の声を上げる。

 その口元は愉悦に歪んでいた。


「な、なんだ……!? あれは!!」


 俺は戦慄する。

 まさか、こんなことになるなんて……!


「魔道具『玉手箱』は、未来の力を前借りするもの……」


 ネプトリウス陛下がつぶやく。

 未来の力を前借りする……だと!?


「使用すれば、一足飛びに強大な力を得られるだろう。しかし、その代償として使用者の寿命を削ってしまう」


「なんですって!?」


 ネプトリウス陛下の言葉に、俺は驚きの声を上げる。

 そんな恐ろしい魔道具があるのか……。


「くふっ……。俺の寿命が尽きるのが先か、人族を殲滅するのが先か……」


 エリオットがニヤリと笑う。

 その体からは濃密な魔素があふれ出していた。


「エリオット兄様……。なぜそんなことを……」


 メルティーネが悲痛な声を上げる。

 彼女の表情は青ざめていた。


「なぜ? 決まっていよう。俺は世界を手に入れるのだ!!」


 エリオットは高笑いする。

 もはや、彼の目には俺やメルティーネ姫の姿もまともに映っていないようだ。


「ぐふふ……。『海神の化身』よ! まずは人族に死を!! 奴は海の支配者たる我が種族の敵である!!」


 エリオットが叫ぶと同時に、アビス・サーペントが動き出す。

 鋭い牙がずらりと並んだ巨大な口を開き、こちらへと飛び掛かってきた。


「ナイ様!! 逃げてくださいですの!!」


 メルティーネ姫が叫ぶ。

 しかし、俺はその場から動かなかった。


「男には、引けねぇときがある。俺の場合……それは今だ!!」


 俺はグッと拳を握りしめる。

 そして、アビス・サーペントやエリオットを迎え撃つのだった。

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