俺はエレナのスカートの中で、ひたすらペロペロし続けた。
「へっへっへ……! ペロペロペロペロ……!!」
「やめてぇ! ダメだったらぁ!! エッチなワンちゃんなんだからっ!!」
エレナが涙声で何かを言っている。
もっと、ということだろうか?
水魔法と俺の舌で、前の男を忘れさせてやるぜ!
ペロペロ……。
ペロペロペロペロ……。
「んっ! んんんっ!!」
エレナがビクッビクッと身体を痙攣させている。
どうやら、満足してくれたらしい。
唾液は全て水魔法で流したし、その上から俺がたっぷりと舐めてあげた。
これで前の男は忘れてくれたことだろう。
俺がそんなことを思ったときだった。
「――ワンッ! ワンッ! ワオーンッ!!」
「がうっ! ぐるるるる……!!」
俺の背後から、犬たちの鳴き声がした。
俺はエレナのスカートから顔を外に出し、振り返ってみる。
すると、可愛らしい犬たちが俺に敵意を向けていた。
それに、その飼主であるワワワワンの男共も俺を睨んでいる。
「どうかしたかね?」
「どうかしたかね――じゃねぇだろ!? お前、頭がイかれてんのか!?」
「このクソ野郎が……。俺たちの依頼主に、なんてことをしやがる!!」
俺はワワワワンの連中に怒鳴りつけられた。
狙っていた女を横取りされた恨みかと思ったが、そういうわけでもないようだ。
「依頼主? 依頼主とはエレナのことか?」
「ああ、そうだぜ! 俺たちは、エレナさんから頼まれたんだ!」
男はそう言うと、懐から紙を取り出した。
あれは、冒険者ギルドの依頼状で使われる形式の紙だな。
彼はその紙を俺に向かって広げてみせる。
「なになに……?」
俺はその紙に書かれた内容を読む。
そこにはこう書かれてあった。
『ワワワワンに対する指名依頼。依頼主:エレナ』
『私はテイムに少し興味があるの。あんたたちの犬を使って、私に練習させなさい。これはあんたたちの社会奉仕活動の一環なんだから、もちろん依頼料は格安でね』
依頼状の末尾には、エレナのサインがあった。
冒険者ギルドの押印もある。
なるほど……。
どうやら、これは正式な依頼状らしいな。
エレナからワワワワンに対して、犬でテイムの練習をさせろとの依頼が出されている。
「……そんな事情があったとは知らなかった」
社会奉仕活動か。
確か海水浴をしていた際にも、そんなことを小耳に挟んだ気がする。
旧ダダダ団――現ワワワワンは、安めの依頼料で世のため人のために活動しているようだ。
「知らなかったで済ませる気か!? 俺たちの社会奉仕活動を邪魔しやがって!」
「お前……! 俺たちの仲間を蹴り飛ばしやがって! 覚悟はできているんだろうな?」
俺はワワワワンの男どもに迫られる。
これは困った。
いや、待て待て。
まだ正義は俺にあるはずだ。
「蹴り飛ばしたのは仕方ないだろ? エレナのスカートの中に顔を突っ込んで、襲っていたじゃないか! あれは明らかな犯罪だ!!」
俺は反論する。
ワワワワンの男は、エレナのスカートの中に顔を突っ込んでいたのだ。
俺の行為はエレナを救うための正当防衛だろう。
「はぁ!? 俺たちがエレナさんを襲っていただと!?」
「犬がエレナさんに懐いて、少しばかりスキンシップをとっていただけだ!」
男たちが顔を真っ赤にして言う。
どうにも、会話のキャッチボールができていない気がする。
「犬だって? ――あ」
俺はそこで、ようやく気付いた。
エレナのスカートの中に入り込んでペロペロしていた野獣のような男。
俺が蹴り飛ばした彼は、よく見れば男ではなかった。
人でもなかった。
ただの可愛らしい大型犬だったのである。
獣みたいな奴だと思っていたが、本当に獣だったとはな。
「あー……。すまんすまん。勘違いだったぜ」
俺が出るまでもなく、ワワワワン(旧ダダダ団)は真面目に社会奉仕活動をしていたらしい。
俺はそこで思い出す。
ニムが言っていたのは『ダダダ団が暴れ回っている』ではなく、『ダダダ団が走り回っている』だったことを。
つまりニムは、こう伝えたかったのだ。
ダダダ団が街を走り回って活動している、しっかりと心を入れ替えているようだ――と。
俺は言葉の途中で早とちりし、暴走してしまった。
「な、何かが変だと思ったら……! またあんたなのね、タケシ!!」
呆けていたエレナが復活し、俺に食ってかかる。
マズイな……。
これは非常にマズイ。
エレナにボコボコにされる未来しか見えない。
「おうおう! 活動を邪魔された俺たちも激おこだぜ!」
「ワンッ! ワンッ! ワオーン!!」
ワワワワンの男や犬も怒っている。
特に、俺に蹴り飛ばされた犬は怒り心頭といった様子だ。
今回ばかりは俺が悪い。
どうにか切り抜けないと……。
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