次の日も、ファイティングドッグ狩りに励んだ。
報酬は金貨2枚と銀貨5枚だった。
あまり多いとは言えない。
以前金貨2枚を稼いでいたときは、俺はまだレベル5でソロだった。
あの時と比べるとレベルもスキルも格段に向上し、パーティにミティが加わっている。
それなのに大して報酬は増えていない。
やはりこの北の草原でのファイティングドッグ狩りは、初心者向けだ。
ミティのレベリングが終われば、さっさと狩場を移すべきだな。
その次の日も、ファイティングドッグ狩りに励んだ。
早めに狩りを終え、冒険者ギルドへと向かう。
報酬は金貨2枚だった。
ギルドを後にし、ミティと街を散策する。
ちょっとしたデートのようなものだ。
ミティと親睦を深めるには、狩りだけではなくこういうこともしないとな。
露店を適当にブラブラと見ていく。
おしゃれなアクセサリー屋があった。
ミティが物欲しそうに見ている。
「ミティ、アクセサリーが欲しいのかい?」
「えっ。いえ、あの、えっと」
ミティがうろたえている。
きっと欲しいんだろうなあ。
「遠慮しなくていいよ。どれが欲しいんだい?」
「あの、あそこにあるアクセサリーがきれいだなって……。いえ、別に欲しいわけではないのですが……」
ミティが指さした辺りを見てみる。
宝石がついたきれいなアクセサリーがたくさん置いてある。
いや、宝石じゃなくてガラス細工かな?
さすがに宝石を露店では売らないだろうし。
あの緑色の首飾りはミティに似合いそうだ。
俺とミティが興味深げに商品を見ているところに、店員が話しかけてきた。
「こちらの商品に興味がおありですかな? お目が高い。これらはエルフが加工したものでね。ファンも多いのですよ」
値段を聞いてみるとさほど高くはなかった。
銀貨3枚。
やはり宝石ではなくガラス細工のようだな。
せっかくだし、どれかミティに買ってあげよう。
「ミティ、どれが欲しい?」
「いえ、私などにアクセサリーはもったいないかと思います」
ミティはここ数日でずいぶんと俺に心を開いてくれたように思う。
しかしこの辺はまだまだだな。
遠慮が抜けない。
「そんなことを言わずに。俺がミティにプレゼントしたいんだ。ほら、俺とミティが出会えた記念にさ」
「は、はい。ありがとうございます。実はあちらの緑色の首飾りが気になっています」
奇遇だな。
俺もミティにはそれが似合いそうだと思っていたんだ。
「お目が高い。こちらの首飾りは、風の精霊をイメージして作られたものです。どうです? 試着してみては?」
店員はそう言ってその緑色の首飾りを手に取り、ミティに渡してくる。
この店員、とりあえず「お目が高い」と言っておけばいいと思ってんじゃないか。
まあ別にいいけど。
ミティが首飾りを受け取り、首に着ける。
「タカシ様、どうでしょうか? 似合いますか?」
「うん。似合っているよミティ。まるで女神のようだよ!」
「そんな大げさです。でもうれしいです」
ミティがクスッと笑う。
大げさじゃないよ。
可愛いよ。
「ではそちらをご購入されるということでよろしいでしょうか? お値段の方は銀貨3枚です」
銀貨3枚を店員に渡し、首飾りを購入する。
そのままミティには首飾りを着けておいてもらう。
その後もしばらく辺りを散策した。
暗くなってきたところで宿へ向かう。
宿の自室に着いた。
イスに腰掛ける。
ミティもイスに腰掛ける。
もう地面に座ったりはしない。
「今日は楽しかったよミティ。ありがとう」
「そんな、それは私のセリフです。きれいな首飾りも買って頂いて……。タカシ様がご主人様で私は幸せ者です」
「これからもずっといっしょにいような」
「はい。ずっと、ずーっといっしょです」
その日はいっしょのベッドで寝た。
もちろんやましいことはしていない。
そういうのはまだ早い。
ミティの寝顔は天使のようだ。
うん、こんなに可愛いミティがいるんだ。
もう日本に戻らなくてもいいかもしれない。
ずっとこっちで暮らそう。
●●●
今日も朝から犬狩りだ。
途中でミティのレベルが3から4に上がった。
新たに得たスキルポイント10を消費し、槌術と腕力強化をそれぞれレベル2にした。
これで彼女の腕力のステータスは補正込みで67。
俺は補正込みで36。
2倍近い差がある。
俺のレベルは10のまま変わっていない。
やはりレベルが高いと上がりにくいな。
ミッションのために早いところ火魔法をレベル5にしたいのだが。
なかなかもどかしい。
そろそろ西の森に2人で行ってみるのもいいかもしれない。
森の深くまで入らなければ、それほどの危険もないだろう。
ゴブリンが主な標的だ。
俺のファイアートルネードで適度に数を減らす。
あんまり減らし過ぎるとミティのレベリングに支障がでるため、多少の手加減が必要だ。
クレイジーラビットはまだ厳しいかもしれない。
ファイアートルネードの範囲と威力を調節すればいけるかもしれないが。
討ち漏らしたときが心配だ。
狩りを終え、冒険者ギルドへと向かう。
街の露店通りに入ったときに、ふいに服を引っ張られる感触があった。
ミティか?
そう思ったが違ったようだ。
目をやると、まだ小さい少女だった。
いや、少女というよりは子どもといったほうが正確か。
頭には犬耳がある。
犬の獣人だ。
「あ、あの、リンゴを買っていただけませんか?」
そう言ってカゴに入ったリンゴを差し出してくる。
彼女をよく見てみると、かなり薄汚れている。
顔つきも少し暗い。
このラーグという街は比較的栄えた治安の良い街である。
しかし、彼女のように生活に困窮している者ももちろん一定数はいるのだ。
ミティの方を見ると、なんとも言えない悲しがっているような顔をしていた。
同情しているのだろうか。
残念ながら俺にはこの少女をどうこうすることはできない。
自分の背負った金貨320枚の借金がある。
それに、今の俺にはミティを守って生きていくだけで精いっぱいなんだ。
せめてリンゴだけでも買わせてもらおう。
「ああ、もらうよ。いくらだい?」
「ひ、ひとつ鉄貨3枚です」
鉄貨は銅貨の1つ下の貨幣である。
銅貨1枚と鉄貨10枚が同じ価値を持つ。
日本で言えば、銅貨は100円玉、鉄貨は10円玉といったところだ。
つまり、このリンゴは1つ30円ほどということになる。
「2つもらうよ。お釣りはいらない」
俺はそう言って銅貨1枚を彼女に渡し、リンゴを2つもらう。
「あ、ありがとうございます」
これでほんの少しでも彼女の生活が楽になれば良いのだが。
食べてみると、ややすっぱいがまあまあ食べられる味だった。
そのまま食べながら冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドに到着した。
中に入り、受付嬢にギルドカードを提出する。
素材の買い取りも合わせてお願いする。
今日の報酬は金貨2枚と銀貨8枚だった。
ミティのレベルが上がりステータスとスキルが強化された分、狩りの効率が良くなった。
俺との連携もなめらかになってきている。
明日は西の森に行ってみるか。
そう考えつつギルドの出口へ向かおうとした時、チンピラ集団から下品な声がかけられた。
「おいおい、弱そうなガキがこんなところで何してんだあ?」
「くっくっく。ガキのくせに一丁前に色気づきやがって。生意気だぜ」
レベル4、ミティ
種族:ドワーフ
職業:槌士
ランク:E
HP:43(33+10)
MP:22(17+5)
腕力:67(29+9+29)
脚力:16(12+4)
体力:27(21+6)
器用:5(4+1)
魔力:21(16+5)
武器:ストーンハンマー
防具:レザーアーマー
残りスキルポイント0
スキル:
槌術レベル2
腕力強化レベル2
MP回復速度強化レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
読み終わったら、ポイントを付けましょう!