「高志様っ!? 一体、これは!?」
「くっ……。この力は……」
呻きながら、俺は状況を分析する。
だが、何かがおかしい。
ただの魔力封じでも、物理的な拘束でもない。
体の奥深く――まるで魂の根幹にまで干渉されているような感覚だ。
これは……一体、何系統の力だ?
物理的な干渉か?
それとも、闘気や魔力、聖気、妖気の類か?
どれにも当てはまるようで、どれとも違う。
俺の知識の範疇を超えている。
「舐めるなよ……! 俺がその気になれば、この程度……!!」
この世界には、様々な力が存在する。
それぞれが独立した法則を持ちつつも、互いに影響を及ぼし合う。
たとえこの術の正体が不明でも、俺のチート級の力の前では大したことはない。
身体能力を限界まで引き上げ、闘気・魔力・聖気・妖気を全開放すれば、この程度の拘束など吹き飛ばせる。
そう確信して、力を込めようとした――だが。
「うっ……!? た、高志様……」
隣で紅葉が苦しげにうめいた。
「紅葉! くそっ……!!」
最悪だ。
紅葉と同時にこの術の影響下にあるのが、最大の問題だった。
俺が力任せに突破すれば、何らかの形で彼女を巻き込む可能性がある。
陣を経由して俺の魔力が彼女に逆流するかもしれない。
あるいは、拘束そのものを強引に破壊した瞬間に予想外の爆発が起き、紅葉を傷つけるかもしれない。
それだけは――絶対に避けなければならない。
「高志様! 私のことは構いません! 早く、この術を……!」
「……っ!」
俺は歯嚙みする。
そんなわけにはいかないだろう。
つい先ほど、俺は彼女と”永遠の絆”を誓ったばかりだ。
彼女を傷つけてまで生き延びる道など、俺には選べない。
だが、どうやってこの状況を打開する?
焦るな――冷静になれ。
一つでも突破口があればいい。
しかし、術式の解析には時間がかかる。
拘束の感触からして、これは単なる足止めではなく、対象を完全に制圧するための術。
中途半端に力を込めれば、相手の術者が意図した罠に深入りしてしまう可能性が高い。
だが、あまり悠長に考えている時間もない。
俺がそんなことを考えているときだった。
『蒼き月輪の導きよ、光となりて闇を祓え――』
突如、周囲に響く透き通った声。
まるで夜の帳に降り注ぐ星のように、どこか神秘的で、しかし冷徹な響きを持つ声だった。
直後、俺の目の前に少女が姿を現す。
その場の空気が一瞬で変わる。
静寂が満ち、肌に触れる空気すら違って感じられた。
青白い輝きに包まれた少女――その身に纏う神秘的な衣が、ただの人間ではないことを告げていた。
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