タカシたちが女風呂に急行している頃ーー。
女風呂では、各自が温泉を堪能していた。
「これが温泉ですか。いいものですね。ただ、お湯自体はいつものお風呂と変わらないようですが……」
サリエがそうつぶやく。
「いえ、この温泉には様々な効能がありますわよ。ほら」
リーゼロッテが温泉の脇に置いてある看板を指差す。
ユナがそれを読んで、口を開く。
「ふふん。美肌にも効くのね。冒険者をしていると、どうしても肌が荒れがちだし、ありがたいわ」
「そうですね! ふふ……。これで、またタカシ様にかわいがってもらえるかもしれません」
バシャバシャ。
ミティが湯船のお湯を自身の顔に馴染ませていく。
「ミティは十分にかわいがってもらっているじゃない。子どももできるかもしれないんでしょ?」
「そう言うアイリスも、ちゃっかりいつも楽しんでいるじゃない。私の耳はごまかせないよ」
モニカがそう言う。
彼女の超聴覚により、タカシとミティやアイリスとの夜の営みは筒抜けである。
「もうっ! 聞かないでって言ってるのに……」
「仕方ないじゃない。基本的には聞かないようにしているけど、敵襲とかもある程度は警戒しないとだし……」
モニカは兎獣人だ。
その生来の優れた聴覚に加え、聴覚強化レベル2も持っている。
単純に聴覚が強化されるだけではなく、ある程度の調節能力も付随して得ている。
聞きたくないときは、聴力を常人以下にまで落とすことも可能だ。
しかし、警戒のためにある程度聞き耳を立てる必要はある。
彼女たちは高ランクパーティであり、リーダーのタカシは騎士爵を授かっている。
カネ目当ての賊に襲撃されないとも限らないからだ。
「み、みなさん、羨ましいです。わたしは、まだしてもらえていません……」
ニムがそう言う。
彼女はまだ12歳なので、タカシが手を出さないのも仕方ない。
いくら彼がロリコンだからといって、体ができていない少女に手を出すほどの鬼畜ではないのだ。
「なんの話ー? マリアはよくわかんない!」
「マリアさんには、まだ早いでしょう。後数年はお待ちなさいな」
千がそう言う。
マリアは11歳だ。
タカシが彼女に肉体的に手を出すまで、最低でもあと数年は待つべきだろう。
ちなみに、ハガ王国の一件では彼女の謀略によりマリアの祖国が危機に陥った。
加えて、上級土魔法のゴーレム生成のためにマリア自身の血も流れたことがある。
しかし、マリアはあまり気にしていない。
祖国はタカシたちの活躍により無事で、死人も出なかった。
彼女自身が傷付いたことに対しても、彼女の生来の並外れた生命力と回復力、それに痛みに対する耐性により、結果的にはほぼノーダメージだ。
千は内心でやや申し訳なく思っていたが、マリアが気にしていない様子を見てこれ幸いと普通に接している。
「ふふん。ニムちゃんとマリアちゃんがまだということは、そろそろ次は私の番かしら? 大きな用事も片付いたことだし、結婚式を挙げたいわね。……いえ、その前に強引に迫るのもありかしら……」
ユナがそうつぶやく。
タカシと出会った順番やミリオンズに加入した順番を考えれば、確かに次はユナの順番だ。
「私も応援してるよ! ユナとタカシには、番になって幸せになってほしい!」
ドラちゃんがそう言う。
巨大トカゲの彼女は、しれっと女風呂に入っている。
体をしっかり清潔にした上で他の入浴者にも了解を得たので、特に問題はない。
「ピピッ。マスターである個体名:タカシの意向を推察します。……個体名:ユナが強引に迫った場合、受け入れる確率は98パーセントです」
高性能ゴーレムのティーナがそう言う。
彼女の外見は10歳前後の少女なので、女風呂に入ることは特に問題ない。
彼女はマスターであるタカシの利益と意向を第一に考えている。
それに合致する場合は、このように他者に口出しすることもある。
「ふふん。なるほどね……」
ユナがにんまりとほほえむ。
何かを企んでいるようだ。
「むう……。てぃいな殿。拙者はどうでござろうか?」
蓮華がそう問う。
彼女はタカシから、加護(小)を付与されている。
その条件を満たしていたことからもわかる通り、彼女からタカシへの評価は高い。
「ピピッ! 個体名:タカシと蓮華の相性を計算します……」
ティーナがそう言う。
「拙者は、故郷の仲間を守るためにまだまだ強くならねばならぬ。それに、金銭的な援助も……! たかし殿の助力を得られれば、これ以上ない成果でござる!」
バシャッ!
湯船から蓮華が立ち上がり、力強くそう言う。
タカシの加護により、蓮華の実力は増している。
また、加護による直接的な強化を考慮外としても、強者揃いのミリオンズに混ざって活動することは蓮華にとっていい刺激となっている。
また、金銭的な援助を得られたのも大きい。
少し前には、タカシが得たアヴァロン迷宮の金銀財宝の一部を受け取ることができた。
パーティメンバーに利益を分配すること自体は一般的なことだ。
しかし、蓮華はあの時点ではミリオンズに加入していなかった。
蓮華の希望を受けて、タカシの判断で利益を分配したのである。
彼女はそのことに恩義を感じていた。
湯船から立ち上がった蓮華を、ティーナの目が捉える。
「ピピッ! 追加情報として、個体名:蓮華のボディをスキャンします……」
ティーナが無機質な声色でそう言う。
彼女は、マスターであるタカシの趣味嗜好を把握しつつある。
タカシの好みと蓮華の体型が一致していれば、2人の相性の判断にプラスの材料となる。
……かなり下世話な情報ではあるが、人工知能である彼女にもちろん悪意はない。
「れ、蓮華さんって、意外と……」
「ふふん。そうねえ……」
ニムとユナが蓮華の体を見て、何かを言いたそうにする。
「ぬ? 何でござる?」
蓮華が首をかしげる。
「剛の者なんですね」
ニムがそうぶっこむ。
「なっ! ななな……」
バシャッ!
ニムのあんまりな言いように、蓮華が慌てて湯船に浸かる。
彼女の顔は真っ赤になっている。
いくら同性からとはいえ、デリケートな体の特徴に言及されてダメージは大きい。
「ピピッ! 計算結果が出ました。個体名:蓮華が強引に迫った場合、個体名:タカシが受け入れる確率は74パーセントです。ただし、下の処理を適切に行っていた場合は、86パーセントに上昇します」
ティーナが無機質な声でそう言う。
タカシはロリコン気味なので、あまり剛毛は好きではないのだ。
あまり好きではないというだけで、決して嫌いというほどでもないが。
この短期間でそのような趣味嗜好まで把握しているとは、ティーナの性能は破格である。
「…………わかったでござる。一応、頭に入れておくでござる……」
蓮華が湯船に半分顔を沈めながら、そう言う。
ニムやティーナからデリカシーなく散々好き勝手に言われて、たまったものではない。
しかし同時に、有益な情報でもあった。
即座に行動に移すとは限らないが、これで彼女がハーレムに参戦する可能性は高まったと言えるかもしれない。
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