【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1279話 刺し身

公開日時: 2024年1月30日(火) 12:04
文字数:1,123

 休憩中。

 俺は海ぶどうを堪能した。

 しかし一方で、俺以外の面々は生魚を食べている。


「美味そうだなぁ……」


 俺は少し興味をそそられた。

 サザリアナ王国にも魚は存在する。

 だが、生で食べる文化は存在しないのだ。

 海洋都市ルクアージュで食べた寿司はあくまで例外的な存在だし、寿司としての再現度も怪しい感じだった。


「おい兄ちゃん、興味本位ならやめときな。人族は生魚を食べないんだろう?」


「まぁそうだが……」


「無理せず、海ぶどうを食っとけ。1日の作業が終われば、魔道具で加熱処理した魚を用意できるはずだ。生魚に挑戦する意味はねぇ」


「うーむ……」


 生魚を食べる文化と、食べない文化。

 この二つは水と油だ。

 サザリアナ王国において、前者は多数派であり、後者はマイノリティである。

 俺が海ぶどうを食べて満足し、生魚を食べるのを止めるのが合理的な判断だろう。


(だが……)


 俺は、生魚を食べる戦士たちを見やる。

 彼らは、実に美味しそうに生魚を食べていた。

 そのままかぶり付くのではなく、刃物で加工済み。

 まるで、刺し身のような雰囲気がある。


(良いんじゃないか? 別に)


 俺はそう思った。

 人族の常識に囚われて、せっかくの海の幸を楽しめないのは勿体ないことだと。


「忠告ありがとう。だが、せっかくだし挑戦してみることにするよ」


「おいおい……。本気かよ……」


 俺の言葉を聞いて、俺を引き留めていた作業員が驚いた表情を浮かべる。

 しかし、俺の決意は固い。


「おーい、俺も生魚を食うぞ!」


 俺は海ぶどうを食べ終えると、そう宣言する。

 そして、生魚を食べている戦士たちのところへ向かった。


「お! 兄ちゃんも生魚に挑戦するのか!?」


「ああ。海ぶどうは十分に堪能したからな」


 俺は答えながら、戦士たちの輪に加わる。

 すると、数人が懸念を示した。


「おいおい! 人族が生魚なんて食って、腹壊しても知らねぇぞ?」


「過去にも生魚――刺し身に挑戦した人族はいたらしいが……。体が受け付けなかったと聞いている」


「お前もそうなる前に、海ぶどうのおかわりでもしに行ったらどうだい?」


「ふむ……」


 俺は刺し身を食べている戦士たちを見る。

 どうやら全員、俺が刺し身を食べられるとは思っていないようだ。


「いや、俺は大丈夫だ。俺にも分けてもらっていいか?」


「お、おう。それはいいけどよ……」


 俺が言うと、一人の作業員が刺し身の塊を差し出してくれる。

 俺はそれを受け取ると――かぶりついた。


「うぐっ!?」


「おい、兄ちゃん。本当に大丈夫か!?」


「う……! ううう……!!」


 俺の様子を心配した作業員が、俺の背中をさすってくれる。

 しかし俺はそれどころではなかった。


(こ、これは……!!)


 人魚族が日常的に食べている生魚――刺し身。

 それがこれほどまでに……。

 これほどまでに……!!

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