俺はティーナにマッサージをしてもらっている。
古代アンドロイドである彼女の腕力は強く、俺の要望を受けて適度に加減することもできる。
とても気持ちがいい。
その上、何やら人生相談みたいなことまでしてもらった。
彼女の人工知能は、かなり高度である。
「ふぅ……。ありがとう、ティーナ」
俺は上半身を起こすと、ティーナに礼を言う。
少し身体が軽くなった気がする。
「ピピッ! どういたしまして、マスター」
ティーナが嬉しそうな声を出す。
俺はうつ伏せ状態から起き上がり、座ろうとするが――
「お待ちください、マスター。まだマッサージは完了していません」
「ん? いや、もう十分に……」
「ピピッ! 次は反対側にご奉仕いたします」
「うおぉっ!?」
俺はティーナにひっくり返される。
簡単に仰向け状態にされてしまった。
凄まじい剛腕だ。
戦闘態勢ではなかったとはいえ、この俺があっさりとひっくり返されるとは……。
つくづく、彼女が加護付与の対象者ではないことが残念である。
加護(小)だけでも付与できれば、かなりの戦力になるのだが……。
いやまぁ、現時点でも高性能だけど。
「ピピッ! では、改めて……」
ティーナが俺の腹に跨る。
彼女は超重量のはずだが、過度の重みは感じない。
各部にかかる重量を適度に調整しているらしい。
「おお……。これは……気持ちいいぞ……」
俺は思わず声を漏らす。
ティーナは、俺の身体のあらゆる場所をマッサージしていく。
うつ伏せ状態では手の届かなかった胸筋あたりを中心にしつつ、首、肩、腕も念入りに揉みほぐされる。
特に胸は入念に揉まれ、俺は思わず声が出てしまった。
「ああぁぁ……」
まるで身体が溶けていくかのようだ。
この背徳感もいい。
なにせ、ティーナの外見年齢は10歳ぐらいだからな……。
俺は全裸だし、10歳の少女にマッサージを強要している感覚に陥る。
もちろん彼女は古代アンドロイドなので問題ないし、そもそも強要しているわけでもない。
「ふふ……。どうですか、マスター? 当機のマッサージは?」
「ああ、最高だ……。最高の気分だ……」
「ピピッ! それはよかったです」
ティーナが嬉しそうな声を上げる。
俺は目を閉じ、マッサージを堪能していく。
「しかし……マスターは色欲がお強いのですね」
ティーナがそんなことを言い出す。
色欲が強い……つまり、俺が女好きのエロエロ大魔神だと言いたいのだろう。
どこを見てそう判断したのか、問い詰めたいところが……。
そうすることに意味はないか。
一目瞭然だもんな。
「いや……まぁな。今までそういう機会に恵まれなかったし……」
「マスターほどの方であっても、そういうものなのですか?」
「ああ……。俺が強くなれたのは、ここ数年の話だからな」
俺は昔から女好きだった。
しかし、たくさんの女性と深い仲になれるほどの魅力や甲斐性は持っていなかった。
今の俺があるのは、概ねチートスキルのおかげだろう。
この世界に来る前の俺は……他の人よりも少し勉強が得意なタイプだったかな。
運動はやや苦手だったが、技術や判断力が介入する球技系はそこそこ。
幼なじみの千秋とも、悪くない関係だったと思う。
もし全てが順調に進んでいたら、彼女と結婚する未来もあったかもしれない。
だが、現実はそうならなかった。
いろいろあって俺は精神的にダメージを受け、無職となったのだ。
千秋との連絡もすっかり途絶えてしまっていたのだったな。
「ピピッ! そのあたりを詳しく――」
「ティーナみたいな可愛い女の子にマッサージしてもらって、感無量だよ。本当にありがとう」
ティーナの言葉を遮ってしまう形になったが、俺はお礼を言った。
これは素直な気持ちだ。
「ピピッ!? と、当機は確かに少女風の外見をしていますが……。あくまで人工知能に過ぎないのですが……」
「大丈夫だ、ティーナ。そんなの関係ねぇ」
「ピピッ! そ、そうですか」
ティーナが顔を真っ赤にする。
もしかすると、彼女は照れているのだろうか。
うーむ……。
ますます人間っぽくなってきたな……。
「ぎ、疑似感情に予期せぬエラーが発生しました……。お、落ち着きましょう。当機は正常です……」
「ん? どうかしたのか?」
俺はティーナに声をかける。
しかし、彼女はしばらく深呼吸をしていた。
「マスター……」
ティーナが俺の顔を見つめる。
なんだろう?
改まって。
「どうかしたのか?」
俺は同じ問いを繰り返す。
すると――
「マスターがお望みなら、当機と深い仲になることもできます」
ティーナがとんでもないことを言い出したのだった。
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