【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1103話 エリアヒール

公開日時: 2023年8月4日(金) 12:27
文字数:1,852

 秘密造船所の作業員たちが頑張っている。

 そこで、モニカやニムが料理をすることを申し出た。

 だが、それに対してゴードンが大げさな反応を見せる。


「どうかしたか?」


「ハイブリッジ卿の奥様方に、そのような雑事をさせるわけにはいきません!」


 ゴードンは、鬼気迫る勢いで叫ぶ。

 奥様方というと、モニカとニムのことだよな?


「あの……。ゴードンさん? 私は別に……」


「わ、わたしも、気を遣ってもらう必要は――」


 2人もゴードンの剣幕に驚いていた。

 しかし、彼は引き下がらない。


「何を言っているんですか! 貴方方はハイブリッジ卿の奥様ですよ! しかも、ハイブリッジ卿は奥様方をとても大切になさっていると聞いています。そんなご家族に、このような作業をさせるなど――」


「ええっと。私はタカシと結婚したけど……元は平民だよ?」


「わ、わたしも同じです。畑仕事とかリンゴ売りとかしていましたし、手伝えることがあれば何でもやりますよ」


「いえいえ、そういうわけにもいかないのです。貴方方のような美しい方々に、そのようなことをさせてしまうわけには、いきません!」


「「……」」


 あちゃ~……。

 どうやら、俺の妻だからという理由で、ゴードンは頑ななまでに拒否するようだ。

 本当に気遣いなんて不要なんだけどな。

 俺は元平民、モニカも元平民、ニムも元平民。

 目立たないようにするため、わざわざ平民トリオでこのオルフェスまでやって来たぐらいだし……。


「ゴードン。気遣いは無用だ。もちろん、2人が料理をすることが邪魔になるなら話は別だが」


「そ、そんなことはありません! モニカ殿が料理を得意とされていることは知っています。身分を抜きにすれば、むしろこちらからお願いしたいくらいです! しかし、さすがに――」


「なら問題ないじゃないか。遠慮するな」


「し、しかし――」


「くどいぞ。美味い料理を食べた方が、作業も捗るだろう?」


「……そうですね。わかりました」


 俺の言葉に、ようやくゴードンが折れる。


「で、では……私は部下たちに知らせてきますので――」


 ゴードンは逃げるようにしてその場を離れた。

 どことなく、背中から疲労感が漂っているような気がする。


(ゴリ押しして、逆に気疲れさせてしまったか? いかんな、ねぎらいのプレゼントのつもりだったのに……)


 これでは逆効果である。

 まぁ、実際に後で美味い料理を食べれば回復するかもしれないが……。

 少なくとも、今の時点では俺の気遣いがマイナスに作用してしまっている可能性がある。


「よし、せっかくだ。疲労感も少しばかり取り除いておいてやるか」


「何をするの? タカシ」


「決まっているじゃないか。治療魔法でゴードンや部下たちの疲労を取り去るんだよ」


 俺は治療魔法の詠唱を始める。

 秘密造船所の全体を効果範囲にイメージする。


「――【エリアヒール】」


 俺が呪文を唱える。

 すると、柔らかな光が周囲に満ちていった。


「うわぁっ!? な、なんだこの光は!?」


「心地よい……。身体が軽くなった」


「そうだな。今まで感じていた疲労が嘘のように消えていくぞ!」


 周囲の作業員たちがざわめく。

 誰かが魔法を使ったことにすぐに気づいたらしい。

 本来、治療魔法の疲労回復効果は微々たるものだが……。

 疲れが極限にまで蓄積しているのなら、体感効果は大きくなる。


「魔力の元は……あのあたりか?」


「ん? あの人は……誰だ?」


「知らない顔だ……もしかして侵入者か!?」


「なわけないだろ。優秀な警備担当者たちが何人も警戒しているんだぞ?」


「じゃあ、あれはいったい……?」


 作業員たちが俺の存在に気づく。

 少しばかり不審感を抱かれているが、俺は気にせず魔法の発動を続けた。


「おぉ……!! やはり身体が軽くなっていく!」


「なんだ、これは!? 疲れが吹き飛んだぞ!」


「やはり、あの人から魔力を感じる!」


 作業員たちからの注目度が一気に高まる。

 ま、別に正体を隠す必要もない。

 ダダダ団や冒険者ギルドと違って、ここはそもそもが秘密造船所だからな。

 機密性が高い。

 この俺の正体が『タカシ=ハイブリッジ男爵』であることを明かしたとして、何も問題は――


「あっ、あの人……」


「あ……私も知っている人ですっ!」


 ――あるかもしれないな。

 特務隊の作業員たちに混じり、2人の少女の姿があったからだ。


「ナイトメア・ナイトさん!」


「タケシさんっ!」


「「…………え?」」


 少女たちはそれぞれ違う名前を叫んだ。

 片方は俺のことを『ナイトメア・ナイト』と呼び、もう片方は俺を『タケシ』と呼んだ。

 マズイ……。

 これは非常にマズイ。

 俺は自分の迂闊さに気づき、思わず天を仰ぐのだった。

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