【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1256話 軽傷者の治療

公開日時: 2024年1月6日(土) 12:26
文字数:1,893

「おお……! すごいな、これは……!」


「みるみる傷が治っていく……」


「これほど治療魔法、見たことも聞いたこともないぞ……」


 人魚族の戦士たちが感嘆の声を上げる。

 俺が治療魔法を行使することで、彼らの負っていた傷が見る見るうちに塞がっていった。


「どうだ? 俺の治療魔法は役に立てたか?」


 俺は人魚族の戦士たちに尋ねる。

 彼らの表情を見れば、効果があったかどうかは一目瞭然だった。


「あ、ああ……。ありがとうな……」


「軽傷とはいえ、全治にはもう少し時間がかかる予定だった。おかげで、復帰を早められる」


「……この恩は忘れないぞ」


 人魚族の戦士たちはそう言って頭を下げた。

 よし、これで重傷者の治療にも応じてもらえるだろう。

 いや……その前に、左手や両足の『魔封じの枷』を外してもらう必要があるか。


「まぁ、恩に感じることはないさ。人魚族と人族はともにこの世界で暮らす仲間なんだ。困ったときはお互いさまだからな」


 俺はそう応じる。

 これで軽傷者の治療は問題なくなった。

 今しがた治療した戦士たちの忠義度も20を超えているし、治療岩の訪問は大成功と言っていいだろう。


「では、今日のところは『海神の大洞窟』に帰るか」


「はいですの。軽傷者の治療実績を元に、国王や元老院を再説得しておきますの。左手だけでも『魔封じの枷』を外す許可が下りれば、ナイ様の治療魔法をもっと活用できると思いますの」


 メルティーネは嬉しそうに言った。

 俺がその気になれば無理やり『魔封じの枷』や『闘気封印の縄』を突破することも可能だが、そんなことはしない。

 今回の行動目的は、俺が人魚族から信頼を得ること。

 小さなことから実績を積み重ね、拘束を少しずつ解いてもらい、活動の幅を広げていく。

 それが、ミッション『10人以上の人魚族に加護(微)を付与せよ』を達成する道のりだ。


「ここの責任者に一言挨拶してから帰ろう。ええっと……さっきの女性職員は……」


 俺は先ほどの女性職員を探す。

 彼女はすぐに見つかった。

 重傷者エリアで働いている。


「メルティーネは帰り支度をしておいてくれ。俺が1人で挨拶してくるから」


「お一人で大丈夫ですの?」


「大丈夫さ、問題ない。それに、こういうのは人族の俺ができるだけ1人でやった方が、活動の意義が高まると思う」


「なるほど……。そういうことなら、お任せしますの」


 メルティーネの一時的に別れ、俺は女性職員の方に近づいていく。

 すると、彼女も俺の存在に気付いたらしい。

 彼女がこちらに視線を向け、口を開く。


「おやおや……。ひょっとして、もうお帰りですか?」


「ああ。今日のところは切り上げさせてもらう」


「そうですか。やはり、人族に期待しなくて正解でしたね。これほど早々に治療を諦めるとは……」


 女性職員がため息をつく。

 俺に対する心象は最悪かもしれない。

 メルティーネ姫の紹介だから丁寧に接してくれているだけで、人族に対する偏見や嫌悪感は強いように思う。


「それは誤解だ。別に、治療を諦めたわけではない」


「ふん……。では、どうしてすぐに切り上げるのですか? 人族の治療魔法で、いったい何が救えると?」


「少なくとも、軽傷者全員の治療は果たしたぞ」


 俺はそう言う。

 だが、女性職員は鼻で笑った。


「あなたに軽傷者の治療を任せてから、まだ1時間も経っていませんよ。全員の治療など、できるはずがないでしょう」


「だが、事実として俺はもう治療を終えた」


「そんな嘘で油断させて……。何か企んでいるのではないですか?」


「そんなことするわけがないだろう」


 俺は反論する。

 しかし、女性職員は聞く耳を持たない。


「ふん……。こんな嘘をつくなんて、これだから人族は信用できません。ジャイアントクラーケンの件も、何かの間違いだったのでしょう」


「いや、俺は本当に……。そうだ、実際に治療を受けた戦士たちから話を聞いてみればいい」


「時間の無駄ですね。少なくとも、今は無理です。私はこれでも忙しいのですから……」


 そう言って、彼女は冷たい視線を向ける。

 やれやれ……。

 完全に嫌われてしまったな……。

 いや、俺が人族という事実だけで最初から嫌われていたというべきか……。

 まぁ、軽傷者の治療だけでもこなしたんだし、今はこれでよしとするか。


「とにかく、時間のあるときにでも元軽傷者の様子も見ておいてくれ」


「はいはい……分かりましたよ。後で見に行きますから」


 女性職員が面倒くさそうに言う。

 あまり期待できそうにないな。

 まぁ、軽傷者の経過観察も彼女の仕事のはずなので、放置したりはしないはずだが……。


「じゃあ、今日のところは帰るよ」


 俺はその場から立ち去る。

 そして出口あたりでメルティーネと合流し、『海神の大洞窟』に戻ったのだった。

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