「桔梗、お前の番だ」
「……うん。よろしく……」
桔梗が静かに頷く。
俺たちは共に、ステータスを記載した紙を見る。
そこにはこう書かれていた。
レベル11、柊木桔梗(ひいらぎききょう)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:剣士
ランク:ー
武器:木刀
防具:道場着
HP:80(61+19)
MP:44(34+10)
腕力:51(39+12)
脚力:47(36+11)
体力:47(36+11)
器用:47(36+11)
魔力:47(36+11)
残りスキルポイント:65
スキル:
剣術レベル4
闘気術レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
桔梗の初期レベルは11だ。
紅葉の9、流華の10よりも高い。
武神流道場師範の孫娘として、幼い頃から厳しい稽古を重ねてきた成果だろう。
ただ、その割には紅葉や流華との差が意外に小さいように思えるが……。
それは、経験値テーブルが関係していると思われる。
レベルが上がるほど、その次にレベルアップするために必要な経験値は増加していくのだ。
また、経験値の獲得システムも関係しているだろう。
経験値は、魔物や妖獣を倒したり対人戦をこなしたりする他、地道な剣の素振りなどによっても得られる。
だが、同じようなメニューばかりを繰り返すと経験値の入手量が少なくなっていく。
武神流道場での鍛錬は、剣術のスキルレベル上昇や試合慣れには適しているが、基礎レベルそのものを上げることに関してはあまり効率的ではない……。
まとめるとそんな感じだと思われる。
まぁ、俺と出会わなければ『基礎レベル』なんてものを意識することもなかったはずだし、これまでの彼女の鍛錬方針が間違っていたわけではないのだが。
「しかし、『桜刃三戦姫』か。メチャクチャ格好良い名前だな」
「……うん。私も気に入ってる……」
この語句は、ステータスの『役割』欄の他、『称号』欄にも記載されている。
称号の獲得条件はよく分かっていないのだが、おそらくは大きく2つあると推測している。
1つは、システム上で何らかの条件を満たすこと。
彼女のステータス欄に記載されている『タカシの加護を受けし者』は、おそらくこれだろう。
そしてもう1つは、世間一般に広くその功績が知られること。
格好良い『桜刃三戦姫』という称号は、おそらく後者だと思われる。
紅葉、流華、桔梗。
桜花藩の謀反に関わった3人の戦士だ。
刀をメイン武器にしているのは桔梗だけだが、流華も短剣やクナイは装備しているし、紅葉も護身用の短刀は持っている。
3人とも平民なので、『姫』という単語は微妙だが……。
新たな藩主となった俺が気に入っている娘たちという意味では、彼女たちを姫扱いするのもあながち間違ってはいない。
「……ん? いや、待てよ……?」
「……どうかした? 高志くん……」
俺の独り言を聞き、桔梗が首を傾げる。
「いや……ちょっと気になってな」
そう言えば、流華のステータス欄にも『桜刃三戦姫』の文字があったような……。
彼は男なのに、いったい何故だ?
……ああ、そうか。
民衆たちは流華のことを少女だと思っているのか。
彼は中性的な美少年だし、勘違いしてしまうのも仕方ない。
「ま、細かいことはいいか。それより、桔梗の強化方針を決めていこう」
「……うん。よろしく……」
俺の言葉を受け、桔梗はいつも通り静かに頷いたのだった。
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