【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1008話 紅杖・レーヴァテイン

公開日時: 2023年5月1日(月) 12:13
文字数:1,958

 チンピラたちにボコボコにされていた俺を、エレナが助けてくれた。

 彼女はCランクパーティ『三日月の舞』のリーダーだ。

 対するチンピラたちは、おそらくDランク下位相当と思われる。

 普通に考えれば、エレナが負ける要素はない。


 しかし、チンピラたちの数は多い。

 多勢に無勢という言葉もある。

 いくらエレナが凄腕の魔法使いとはいえ、複数の男を相手にするのは厳しいかもしれない。

 俺はそう考えたのだが……。


「――起動せよ。万物を破壊する魔導の杖よ。我が魔力を糧とし、破壊の力を顕現させよ。――【紅杖・レーヴァテイン】!!」


 エレナが美しい杖をかざすと、彼女の周囲に炎の渦が出現した。

 渦巻く火炎は、まるで巨大な龍のようだ。


「なんだと!?」


「うぉぉ!? 火魔法だぁ!?」


「バカな! あんな若い娘が、これほどの威力の魔法を使うなんて!?」


 チンピラたちが驚愕の声を上げる。

 無理もない。

 彼らの常識に照らし合わせれば、エレナの放った魔法は異常に見えたのだろう。

 俺としても、少しばかり驚いている。


(俺やユナに比べれば、やや劣るが……。Cランクにしては高出力だな。Bランク冒険者に匹敵しそうな感じだ)


 そんなことを思う。

 俺たちミリオンズの面々は、俺の『加護付与』や『ステータス操作』のチートによって高い成長率を誇る。

 だが、一般の冒険者はそうはいかない。


 エレナ率いる『三日月の舞』の面々は、3年程前の時点でCランク冒険者だった。

 そして、今現在もCランクに留まっている。

 ここに来て、何かしらのきっかけで才能が開花した感じだろうか?

 俺はそんなことを考えつつ、エレナの様子を伺う。


(……ん?)


 ふと気付く。

 エレナがかざしている杖。

 彼女は『紅杖・レーヴァテイン』と叫んでいた。

 名前に心当たりはないが、その形状に見覚えはある。


「あ、俺の杖じゃん」


 俺やミティの主導の元で製作し、ハイブリッジ男爵領内の街や村に配った杖だ。

 その1本が、エレナの手にある。

 なぜだ?

 まさか、所有者がエレナに横流しをしたのか?

 あれは魔法の素人が初めての火魔法を成功できるように、魔法補助を施した杖だ。

 それを、俺の目の前でエレナが使っているということは――


(――もしかして、俺がハイブリッジ男爵だと気付かれたか? それとも、ただの偶然か……)


 俺は内心で冷や汗を流す。

 しかし、その心配は必要なかった。


「なによ、その顔は! 聞き捨てならないことを言ったわね? これがあなたの、ですって?」


「あ、いや……」


「この杖はとある村で譲ってもらったものよ! その村に火魔法の適性を持つ者がいなかったから、大金と引き換えに無理を言って譲り受けたの!!」


「なるほど……」


「ああ……。タカシ様が近くにいる気がするわ……。この杖がある限り、私は無敵なんだから!!」


 エレナが恍惚とした表情で叫んだ。

 タカシ様?

 つまり俺のことだ。


(彼女は俺のファンだったのか?)


 これは素晴らしい展開だ。

 かつての俺はDランク冒険者で、彼女はCランク冒険者だった。

 彼女は言わば格上の存在であり、俺に対してやや雑な態度を取ることが多かった。


 しかし、今は違う。

 彼女はCランク冒険者のままである一方で、俺はBランク冒険者となり男爵位まで授かっている。

 さらにその上、彼女は俺のファンだと言うのだ。


(よし……。ここは俺もファンサービスをしてあげよう)


 そう決めた俺は、エレナに声をかけることにする。


「おい、エレナ」


「なに!? 私のことはエレナさんと呼びなさい!! 別にあなたのことは嫌いじゃないけど、格下に呼び捨てされるのは気に入らないわ!」


「ふふふ……。そんな口を聞いていいのか? 俺は――」


 ハイブリッジ男爵だ。

 そう名乗ろうとした寸前で、気付く。


(あ、ダメじゃん。この場にはチンピラたちがいるんだぞ? こんなところで、ハイブリッジ男爵だってバラしたら大騒ぎになる……)


 チンピラたちが俺の正体に気付いたら、間違いなく大騒ぎになるだろう。

 その方がサーニャちゃんの安全度は高まるし、隠密小型船の完成も近づく。

 ただ、ネルエラ陛下が重視している『ヤマト連邦への秘密潜入』というミッションを達成することが難しくなってしまう。

 それは困る。

 非常に困る。


「何よ? 何か言いたいことでもあるの?」


「いや、なんでもない……」


 エレナの問いに、俺は歯切れ悪く誤魔化すことしかできない。

 俺たちがそんな会話をしている間に、チンピラたちは戦闘態勢を整えたようだ。


「へへっ! この状況でのんきに話ができるとはな……。余裕があるじゃねぇか。その態度がいつまで続くかな?」


「舐められたまま引き下がるわけにはいかねぇぜ! 女だからといって容赦はしねえ! お前は性奴隷にしてやる!!」


「そうだ! 俺たち『ダダダ団』を敵に回したことを後悔させてやるぜ!!」


 チンピラたちが叫ぶ。

 こうして、エレナとダダダ団の戦いが始まろうとしていたのだった。

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