俺は『ステータス操作』で仲間たちのスキルを強化した。
自分自身、紅葉、流華、桔梗の4人だ。
これによって、謀反後の桜花城での安定感は一気に増したはずだ。
新藩主である俺に不満を持つ者たちがリベンジ謀反を起こしても、概ね対応できる。
強化した当日は、スキル効果の把握に努めた。
そして、翌日。
俺たちは再び天守閣に集まり、今後の方策を練っていた。
(……まだまだ油断はできないな。次なる一手は……)
以前から考えている通り、実現すれば最も効果的なのは『元藩主である景春の処刑もしくは籠絡』だろう。
景春を屈服させられれば、彼の妹である双子姉妹も同じく俺に従うはず。
景春の父は長らく病床に伏せっており、政治的な影響度はかなり落ちていると聞く。
ならば、やはり景春さえ政治的に排除できれば俺の敵はいなくなる。
……のだが、この作戦は少しばかり難易度が高い。
有力な作戦は既にあり、それを練っているところだ。
今は他の手頃な方策から手を付けよう。
(やはり『桜花七侍』をどうにかするべきだな……)
樹影、夜叉丸、蒼天、巨魁、雷轟、金剛、無月の7人。
俺が桜花城を攻め落とした日、俺はそれぞれを苦も無く撃破したが……。
あれは、相手にコンディション不良があったことも大きい。
樹影、夜叉丸、蒼天、巨魁の4人は、紅葉たちとの戦闘でダメージや疲労が蓄積されていた。
雷轟と金剛は、無月の忍術による半洗脳状態が解けた直後で、思考力や判断力が一時的に低下していた。
そして無月は、早とちりによって突っ走り過ぎていた俺に対して遠慮があった。
つまり、それぞれ万全の状態ではなかった。
(万全であっても、1対1ならどうとでもなるが……)
5人ぐらいを同時に相手すれば、勝率95パーセントぐらいにまで落ちるだろう。
それでは不安だ。
……え?
十分だろって?
いや、勝率95パーセントは、逆に言えば5パーセントは負けるということだ。
それに、もっと条件が悪くなるパターンもある。
7人同時に襲ってきたらどうなるか?
事前に罠や妖術陣を張り巡らせているところに誘い出されたら?
桜花四十九侍など、多数の侍と共に一斉攻撃されたら?
紅葉たちをガチの人質として取られたら?
最悪の最悪を想定すれば、勝率が30パーセントを切ることも十分に考えられる。
いや、先ほどのステータス強化によってリスクが軽減されたので、最悪の最悪でも勝率50パーセントぐらいはあるか?
搦め手の紅葉、忍者の流華、近接特化の桔梗はそれぞれ計算できる戦力になったしな。
とはいえ、総合的に見てリスクゼロにはまだまだ程遠い。
「……来たぞ、高志坊」
「我が主よ、お呼びにより参上した」
「おう、2人とも。よく来たな。入ってくれ」
俺が物思いに耽っていると、襖(ふすま)の外から声をかけられた。
入室の許可を出し、2つの人物が室内に招き入れる。
この2人こそ、桜花城の安定度を左右するキーパーソンだ。
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