俺は変質者の汚名を被せられようとしている。
それに抵抗すべく、カゲロウという女性と戦っていた。
「悪くない術だ。しかし、俺を倒すには威力が足りない。もっと修行を積むのだな」
俺はそう言ってカゲロウを挑発する。
しかし内心はワクワクしていた。
まさか、ヤマト連邦に来てさっそく忍者に出会えるとは思っていなかったのだ。
しかも、見慣れない特殊な武技付きで。
「実に変わった技術だ。なぁ……もう少し見せてくれないか?」
俺はカゲロウに尋ねる。
すると、彼女は怒りの表情を浮かべて叫んだ。
「ちぃっ! な、舐めるなよ変質者が!! くらえっ! 【忍法・火遁の術】っ!!」
カゲロウはそう叫ぶ。
そして、俺の望み通りに『忍法・火遁の術』を乱発してきた。
「ふむ……。やはり、威力が弱いな」
俺は次々に火球を処理していく。
この程度の術ならば、いくらでも対処できた。
俺の魔力や闘気を貫くことはできない。
「だが、一度くらいは身をもって体験しておくのも悪くないな」
俺はカゲロウの放った火球をあえて受けてみることにする。
魔力や闘気によるレジストを控えめにし、右腕にその火球を受けた。
それはあっという間に燃え上がり、俺の腕を包み込む。
「ふふふ……。熱いな……それにきれいだ。これが『火遁の術』か……」
「なっ……!?」
俺は炎が消えるまでその状況を楽しんだ。
そして、カゲロウに笑いかける。
彼女は驚愕に目を見開いた。
何をそんなに驚いているのだろう?
「さぁ、次だ。もっと奥の手があるのだろう? 出し惜しみせず、俺に見せてくれ」
「この……変態が!!」
カゲロウは俺の煽りに激昂して、さらなる術を繰り出すことにしたようだ。
彼女のオーラが膨れ上がる。
「赤く赤く……! 染まり……爆ぜろ!! 【忍法・螺旋火遁の術】!!!」
そして、カゲロウは新たな技を放った。
その威力は先ほどとは比べ物にならない。
螺旋状の炎が俺を襲う。
「ほう……これもまた素晴らしいな」
俺は感嘆の声を漏らした。
カゲロウが放った螺旋状の火は、俺の身体にまとわりつく。
そして……。
「な、なに!? なぜ燃え上がらない! 私の最大火力だぞ!?」
俺は平然としていた。
あえてレジストせずに生の炎を体感するのは、もう十分だ。
今回は、再び観察に移らせてもらったわけだが……。
魔力や闘気でレジストすれば、この技でも少し熱いくらいに留まる。
発動過程に物珍しさはあるものの、結果として出力される炎は普通の火魔法と似たようなものだ。
「ふむ……。そろそろ飽きたな」
俺はそう言って、カゲロウに近づいていくことにした。
彼女は警戒して、もう一度『火遁の術』を発動しようとする。
だが――
「それはもういい」
「なに?」
「攻撃は十分に見せてもらった。だから――」
俺は魔力を開放する。
カゲロウが放った火球よりも、さらに強大な炎を生み出した。
「な、なんだ……!? これはいったい!?」
カゲロウは呆然とする。
そんな彼女の目の前で、俺は魔力を一点に集中させていく。
「次は防御を見せてくれ! 【爆裂火炎弾】ん!!」
「うわああああぁっ! や、やめ――」
俺はカゲロウの制止を無視する。
そして、火魔法を放ったのだった。
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