ダンジョン攻略メンバーの選別試験が行われているところだ。
開始早々、多数の冒険者に狙われてしまったが、ミリオンズのみんなの活躍により撃破した。
後続の”魅了”のフレンダという少女に俺は魅了されそうになったが、アイリスの五光一閃によって撃破した。
俺たちが戦っている間に、多方面でも戦いは繰り広げられていたようだ。
残るは、俺たちの他に1パーティのみである。
「ふん。少しは骨のあるやつが残っているようだな」
男がこちらを見据え、そう言う。
彼の名はウィリアム。
支配者の二つ名を持つ、強力な冒険者だ。
ウォルフ村の一件ではミリオンズと敵対気味だったが、最終的には共にキメラを撃破した仲だ。
「またあいつらですか……。今度こそ、私めが勝利を収めてご覧に入れましょう」
猫獣人の少女……ニューがこちらをにらんでそう言う。
彼女がライバル視しているのは、ミティだ。
ウォルフ村で戦ったことがあり、その後のキメラ戦やレッドホットチリ祭りでも張り合っていた。
「私もがんばるぞー! がうっ!」
牙をむき出しにしてそう吠えるのは……。
ええっと……。
ああ、そうそう。
確か、暴れるディルム子爵を押さえつけていた少女か。
名前はイルだったように思う。
あの頃は、一般人程度の身体能力しかない様子だった。
今の彼女は、なかなかに鍛えられた体つきをしている。
この数か月で、しっかりと鍛錬を積んだようだ。
ウィリアム、ニュー、イル。
さらに、他にも2人の女性のパーティメンバーがいる。
彼は彼で、着実に仲間を増やしてきたわけか。
「ウィリアムたちが最後の相手だな。強敵ではあるが、8対5なら勝てそうだ」
まだ新人のマリアとサリエを頭数から除いたとしても、6対5だ。
こちらがかなり有利である。
「そうですね。多少は手加減してもいいかもしれません」
ミティがそう言う。
しかしーー。
「悪いが手の抜き方を、俺は知らない」
俺は火魔法の詠唱を開始する。
こういうのは先手必勝なのだ。
「マグナムッ!」
俺は爆速で移動する。
フレアドライブのインスタント版のようなイメージの魔法だ。
速度や攻撃力を抑える代わりに、詠唱時間を短縮しているのである。
ドゴン!
俺の拳がウィリアムを襲う。
だがーー。
「ふん。なかなかの速さだ。良い技を習得しやがったな」
ウィリアムが手のひらで俺のパンチを受け止め、そう言う。
俺のマグナムを受け止めるとは。
かなりの動体視力と反応速度だ。
「このっ……! ウィリアム様に無礼なことを!」
「がうっ!」
ニューとイルがワンテンポ遅れて、俺の攻撃に反応する。
俺の拳がウィリアムによって押さえられているうちに、反撃を行おうといったところか。
少しマズい。
だがーー。
「もうっ! 1人で突っ走らないでよ」
「ボクも助太刀するよ!」
モニカとアイリスが加勢に来てくれた。
モニカは術式纏装”雷天霹靂”。
アイリスは聖闘気”五聖の型”を発動している。
ミリオンズ内でも、この2人の機動力は特に優れている。
さらに少し遅れて、ミティやニムたちも追いついてきた。
ウィリアム側の残りの2人も戦列に加わり、総力戦の様相である。
「ロック・パンク!」
「ふん、岩の鎧か。なかなかやっかいだが……。クロメ!」
岩鎧をまとったニムの体当たりを受け、ウィリアムがそう言う。
「はっ! 私にお任せを! ……音よ切り裂け。サウンドブレイド!」
ウィリアム一行のルーキーの片割れは、クロメという名前のようだ。
褐色肌の少女である。
彼女が使うのは音魔法。
以前、ブギー盗掘団のジョー副頭領も使っていた。
「うっ! ちょ、ちょこざいな!」
ニムが若干のダメージを受け、そう言う。
ニムのロックアーマーは、音魔法とやや相性が悪そうか。
固い岩の鎧も、音ならば貫通することができる。
そんな感じで、戦いは激しさを増していく。
「イル! シェーラ! ”あれ”を使え!」
「はっ! 承知しました」
「いきますわよ!」
ルーキーのもう1人は、シェーラという名前か。
ウィリアムの指示を受け、イルとシェーラが魔力を高めている。
2人が息を合わせ、詠唱を開始する。
「「揺蕩う水の精霊よ。我が求めに応じ、大波をつくりだせ。ウォーターウェイブ!」」
俺の知らない水魔法だ。
だれかが水魔法創造で開発したオリジナルの水魔法か。
イルやシェーラ自身が開発した可能性もなくはない。
ゴゴゴ!
ゴゴゴゴゴ!
海から、ひときわ大きな波が押し寄せてきている。
この円形のステージが飲み込まれてしまいそうな大きさだ。
ウィリアム陣営は、彼を中心に固まっている。
何らかの方法で、この大波を耐えきるつもりなのだろう。
「くっ。厄介な」
俺たちミリオンズはどうするか。
大波が来るまでにウィリアムたちを撃破するか、何かしらの方法で大波を耐えきるかだが……。
「……従順なる土の兵士よ。我が求めに生まれ出よ。クリエイト・ゴーレム!」
ニムが中型のゴーレムを生成している。
「み、みなさん、これを使ってください! 中を空洞にしているので、水に浮くはずです!」
なるほど。
浮き輪代わりのような感じか。
「ありがとう。さすがはニムだ」
「助かる。これがあれば、何とかなりそうだね」
俺とアイリスはそう言う。
それぞれ、中型のゴーレムとともに大波に備える。
そんな中ーー。
「ふふん。乗るしかないわね。このビッグウェーブに」
ユナがゴーレムをサーフボードのように操り、軽快にサーフィンをしている。
彼女の脚力はさほどでもないが、身のこなしの軽やかさやバランス感覚においてはトップクラスだ。
波乗り程度は朝飯前ということか。
「えへへ。マリアも、空を飛べるからだいじょうぶだよ!」
マリアはハーピィ。
生まれ持っての飛行能力に加えて、重力魔法もある。
彼女の前では、大波程度は脅威でも何でもない。
「私もだいじょうぶ。青空歩行」
モニカが並外れた脚力を活かして、空中でジャンプし続けている。
以前の彼女は空中で一度だけのジャンプが可能だったが、今の彼女は多段ジャンプが可能だ。
体力や筋力の限界があるので、1分以上の維持はまだ厳しいだろうが。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
とうとう、大波がこちらまで迫ってきた。
あとは、俺たちが耐えきれるかどうかだ。
ニムのゴーレム のおかげで溺れることはない。
しかし、物理ダメージは受けてしまうだろう。
俺、アイリス、ニム、サリエは大波に備えて身構える。
そんな中、ミティが大波に立ち向かおうとしている。
「侵掠すること火の如し。ビッグ……」
まさか拳で、大波に対抗する気か?
「バン!!!」
バシャーン!
大波が……割れた。
とてつもない一撃だ。
大波の威力は大幅に減退した。
だが、まだ余波は残っている。
余波が俺たちを襲う。
「ぐぼ……」
結構キツイ。
だが、なんとか耐えて反撃をしなければならない。
みんなはだいじょうぶだろうか?
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