メルビン大会の続きだ。
「続きまして、2回戦第3試合を始めます! モニカ選手対、ギルバート選手!」
司会の人がそう叫ぶ。
「じゃあ、がんばってくるよ」
「お、応援していますね」
「相手のギルバートさんはかなりの強豪だが、気後れしないようにな」
ニムと俺がそう言う。
モニカがコロシアムのステージに上がる。
対戦相手のギルバートと対峙する。
「両者構えて、……始め!」
試合が始まった。
まずはお互いに距離を保ちつつ、様子をうかがう……。
かと思われたが。
「剛拳流、疾きこと風の如し」
モニカがいきなり仕掛けた。
出し惜しみなしだ。
まあ、相手のギルバートは強豪だしな。
出し惜しみして負けてしまっては元も子もない。
シュッ。
モニカが高速移動して、ギルバートを撹乱する。
「ガハハ! やるな嬢ちゃん!」
ギルバートはどこか楽しそうだ。
強敵との闘いを楽しむタイプか。
俺とはタイプが異なるな。
俺はできれば格下を相手にして安全な勝利を収めたいタイプだ。
「ツー・ファイブ・マシンガン!」
モニカが攻撃を仕掛ける。
目にも留まらぬ蹴りの連撃だ。
闘気を多めに使うことにより、連撃の数も普段より多くなっている。
「ガハハ! 攻撃が軽い! 嬢ちゃんでは我は倒せんぞ!」
今のモニカは、移動速度や連撃に闘気を割り振っている。
その分、1発1発の威力はやや低めとなっている。
蚊が群れても獅子は殺せぬ。
といったところか。
いや。
待てよ。
「ガハハ! うっ。ぐはっ。……ちょっとは攻撃の手を緩めんのか!」
モニカの連撃はギルバートに一定程度のダメージを与えている。
どうやら、ギルバートのやせ我慢だったようだ。
そりゃそうだよな。
モニカの足技をあれだけ受けて、ダメージがないわけがない。
まあ、さすがにミティのビッグバンほどの威力はないだろうが。
「まだまだいくよ! もう1回! ツー・ファイブ・マシンガン!」
モニカがひと呼吸を入れて、再度蹴りの連撃を開始する。
「ぐぐっ。ええい! ぬあああーっ!」
ギルバートが吠えたかと思うと、衝撃波のようなものが発生した。
「きゃっ」
その衝撃波により、モニカが吹き飛ばされる。
場外に出たが、すぐにステージ上に復帰した。
ダメージはそれほどないようだ。
「あー、びっくりした」
「ガハハ! まさか嬢ちゃん相手にこの技を披露することになるとはな!」
ギルバートから燃えるような闘気が発生している。
あれは……。
「ガハハ! これは剛拳流の”侵掠すること火の如し”という技だ。この間習得したのだ。ミティの嬢ちゃんも使えるようになっていたのは驚いたがな!」
ギルバートがそう言う。
彼は彼で、日々の鍛錬により成長しているようだ。
「くっ。その闘気の量はすごいね。まともにぶつかったらやばそうだ」
モニカは移動速度や連撃に秀でている。
一方で、耐久力はさほどでもない。
今のギルバートの攻撃をまともにくらえば、戦闘不能にまで追い込まれてしまうだろう。
「ガハハ! 降参するなら今のうちだぞ!」
「それも悪くないけど。せっかくだから、最後まで闘うよ」
「ならば容赦はせん! いくぞ!」
ギルバートがそう言って、モニカに駆け寄ってくる。
彼がガンガン攻撃を繰り出してくる。
モニカは、やや慎重になっているようだ。
ギルバートの一撃を警戒しているのだろう。
しばらくはギルバートの優位で試合が進む。
モニカの動きが悪くなってきた。
「きゃっ」
モニカが体勢を崩す。
ダメージの蓄積や疲れが出てしまったか。
「ぬうう! ビッグ……」
ギルバートがチャンスとばかりに闘気を腕に込めて、振り上げる。
「バン!」
ギルバートの強烈なパンチが放たれる。
まともにくらえば、モニカはひとたまりもない。
「く……」
モニカは最後の力を振り絞り、回避行動に出る。
ジャンプだ。
空高くジャンプしてよけた。
「ガハハ! 空では身動きが取れんだろう! 格好の的だ!」
ギルバートがそう言って、モニカの落下予想地点で攻撃の構えを取る。
モニカが落下してくる。
ギルバートがそれに合わせて攻撃しようとする。
しかし。
「青空歩行-スカイウォーク-」
モニカが空中でもう一度ジャンプした。
ミティとの結婚式でのブーケトスで使っていた技だ。
とうとう、ちゃんとした試合で日の目を見たわけだ。
「なにっ! バカな!」
モニカの思わぬ挙動に、ギルバートが動揺する。
彼に大きめのスキができる。
「はああ……! 旋風カカト落とし!」
「ぐあっ!」
モニカのカカト落としが見事に決まった。
ギルバートが悲鳴とともに倒れ込む。
大きなダメージを負ったようだ。
そのまま起き上がってこない。
審判が駆け寄り、カウントを始める。
「……8……9……10! 10カウント! ギルバート選手のダウン負けです! 勝者モニカ選手!」
審判により、モニカの勝ちが宣言された。
見事な勝利だ。
治療魔法士がギルバートに駆け寄り、治療魔法をかける。
彼が立ち上がる。
まだ少しフラフラしている。
頭部に大ダメージを負っていたもんな。
まさか脳内出血とかないだろうな。
後で俺の上級治療魔法をかけておくか。
モニカがギルバートに歩み寄る。
「お疲れ様。いい勝負だったよ」
「ガハハ! 常識はずれの動きをしよって! 世界は広いということか!」
やはり、ゾルフ砦にいる強豪たちの認識でも、空中ジャンプは非常識なようだ。
モニカがステージからこちらに戻ってくる。
「お、おめでとうございます。モニカさん」
「おめでとうございます!」
ニムとミティ、それに俺とアイリスでモニカを出迎える。
「ありがとう。あー、疲れた。本当に疲れた」
モニカは疲労困憊のようだ。
まあ、最初からずっと飛ばしていたもんな。
「次の試合までじっくり休んでいなよ」
アイリスがそう言う。
「そうだな。俺の治療魔法もかけておこうか」
「ありがとう。お願いするよ」
俺はモニカに治療魔法をかけ始める。
なにはともあれ、これで彼女もベスト4入りだ。
今の所は、アイリス、エドワード司祭、モニカがベスト4に残っている。
次の試合は、ニムvsジルガだ。
ベスト4入りの最後の1人は、はたしてどちらになるのか。
見どころだ。
がんばってニムを応援しよう。
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