僕様ちゃんは、ミリオンズの下っ端と戦っているです。
4番手以降なんてザコ同然だと思っていたですが、和服を着た剣士の動きはかなり速かったです。
赤髪の女からも、なかなかの魔力を感じ取れます。
(こいつらが4番手と5番手で間違いない。そのはずです)
この2人にさえ注意すれば、残りは6番手以降のザコ中のザコでしょう。
落ち着いて対処すれば問題ありません。
僕様ちゃんはそう思ったのですが――
ビリッ!
雷が迸るような音がしました。
静電気?
いえ、これは――
「よくもタカシをバカにしてくれたね?」
「なっ!? い、い、い、いつの間に!?」
耳元から敵意むき出しの声を聞き取り、僕様ちゃんは慌てて振り向きます。
8人の少女のうちの一人が僕の背後に回り込んでいました。
そして、彼女の全身からは魔力が迸っています。
「くぅっ!」
咄嗟に距離を取ろうとする僕様ちゃん。
しかし、時すでに遅し。
「――【紫電】」
バチィィィッッ!!
凄まじい衝撃が全身を駆け巡りました。
意識が飛びかけますが、なんとか持ち堪えます。
どうやら、一瞬で感電させられたようです。
あの速さに、この威力の雷撃……。
彼女は纏装術を使いこなしているようです。
(まさか、6番手以下のザコが使えるとは……)
いえ、この雷魔法使いこそが4番手?
超速剣士は5番手?
赤髪の女は6番手?
訳が分からなくなってきました。
(くっ……。態勢を立て直さないと……)
そう思って体に力を込めようとする僕様ちゃんですが――
「――【ロック・デ・ロック】!」
今度はまた別の女性が魔法を発動します。
僕様ちゃんの四肢に岩の塊が出現して動きを封じてきました。
(くっ! これもまた魔法……!?)
次から次へと、こいつらはどうなっているです!
これほどの魔法の使い手が4番手以降に甘んじているなんて、さすがに想定外です!
その気になれば、自らがリーダーとなって別パーティを引っ張っていくことも可能なはずなのに……。
それほどの魅力がタカシ=ハイブリッジにあるということですか!!
「ぐっ! は、離せです!!」
とても重量感のある岩です。
僕様ちゃんは必死にもがくものの、ビクともしません。
全快ならどうにかできたかもしれないですが、先ほどの雷魔法による痺れがまだ残っていて力が入りません。
マズイです。
非常にマズイ状況です。
このままでは一方的に嬲られるだけです。
何か手を打たないと……!
そう考えている間にも、また追撃がきます。
「えへへっ! ごめんね? ――【グラビティ】」
ズンッ! という重圧が体全体を襲います。
重力魔法で押さえつけられたようです。
しかも、それだけじゃありません。
「うあぁっ……かっ……」
単なる重力魔法なら、珍しくはありますがたまに見かけることがあります。
しかし、これは明らかに次元が違います。
単純な重さではなく、魂そのものを押さえつけられているかのような感覚があります。
「ぐ、ぐるじぃ……」
息すらままなりません。
立っていることすら困難です。
僕様ちゃんは地面に倒れ伏しました。
「これで大人しくしてくれるといいのですが。――【ウォーターフォール】!」
別の女性が詠唱します。
すると頭上から大量の水が降り注ぎました。
水の勢いはとても強く、まるで滝のようです。
「うっ……! がぼがぼ……がばごばっ……!」
溺れる僕様ちゃん。
身動き一つできません。
(や、やばいです……!)
息ができない苦しさから、だんだんと頭がぼーっとしていきます。
(こ、このままじゃ……)
死ぬ……?
僕様ちゃんが……?
こんな簡単に……?
本格的に死の危険を感じたとき、不意に水が収まりました。
「少しやりすぎたでしょうか? 魔力の気配はまだ感じますが……」
「ふふん。タカシを倒したっていう聖女なら、これぐらい耐えられるわよ」
女性2人が話しています。
僕様ちゃんも舐められたものですね。
命までは取らないということで、魔法の発動を途中で止めたのでしょう。
甘いです。
甘すぎるです。
リンドウ温泉旅館で食べたスイーツのように甘いです。
……まぁ、あのままだとガチで命がヤバかった気もするですが、それとこれとは別です。
「て、てめぇら……。聖女たる僕様ちゃんにこれほどの不敬を働いて、ただで済むと思うんじゃねーですよ……?」
怒りのあまり、少し言葉遣いが乱れました。
僕様ちゃんは聖女として丁寧な口調を心掛けていたのですが、時にはこういうこともあります。
「あら、やっぱりまだ喋れるぐらいに元気なのね?」
赤髪の女性が言います。
「でも、もう限界近いかしら?」
「黙れです! 僕様ちゃんはまだまだ元気いっぱいです! お前ら全員、まとめてぶっ飛ばしてやるです!!」
「ふふん。お手並拝見といきましょう」
赤髪女が自信満々に笑います。
他の少女たちも、再び臨戦態勢を整えています。
「もう油断はしないです。――【神霊纏装・アーティルドラ】!!」
僕様ちゃんは全身に聖なるオーラを纏ってみせます。
神の力の一端を宿した僕様ちゃんに、敗北の二文字はないです!
先ほど受けた雷魔法、土魔法、重力魔法の影響も去っています。
今度こそ、この不敬者たちに身の程というものを教えてやるですよ!
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なお、昨日はウェブトゥーン版の12話が更新されました。
モニカが営む料理屋での食事会!
最後の方にはニムが初登場します。
ぜひ読んでみてください!
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