【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1066話 炎精纏装・サラマンダー

公開日時: 2023年6月28日(水) 12:32
文字数:2,101

 海中での作戦会議で、俺は炎精サラマンダーことサラの力を借り受けられることになった。

 打ち合わせを終えた俺は、水面に向かって上昇していく。

 そして、重力魔法を使って空中に浮き上がった。


「――ほう。逃げずに戻ってきたか」


 海上では、俺を待ち構えていたかのようにベテルギウスが佇んでいた。


「待たせたな。よく追撃してこなかったものだ」


「ふん。逃亡や時間稼ぎをするようであれば、容赦なく叩き潰していたところだがな」


「そうか……。だが、あいにくとお前に勝つための秘策を思いついてな」


「ほぉ……。やはり我が期待した通り、少しは楽しめそうだ。面白い。やってみろ」


 ニヤリと笑う俺。

 対するベテルギウスも、不敵に笑い返した。


「行くぞ」


 俺は体内で魔力を高める。

 そして、サラの力を借りるために詠唱を始めた。


「天より来たりしは紅蓮の焔。大地を灼くは煉獄の業火。我が心は既に燃え盛る炎なり。故に、我は炎の化身と化さん。――炎精よ。今ここに顕現し、我と融合せよ。――【炎精纏装・サラマンダー】!!」


 俺の全身が炎に包まれていく。

 同時に、体内で膨大な力が膨れ上がっていくのを感じた。

 炎精サラマンダーは、俺の中に宿ったままその力を開放したのだ。


「なんだ……その姿は……?」


 ベテルギウスが戸惑う。

 無理もない。

 今の俺は、真っ赤な炎の鎧を身に着けているのだから。


 俺は以前から、纏装術を使用していた。

 そしてネルエラ陛下との一戦から、新たなレベルの纏装術を模索し練習していた。

 炎精サラマンダーの力を借りることにより、それがいよいよ完成したことになる。


「さぁ、いくぞ。第二ラウンドの開始だ」


 俺はそう言って、拳を構える。


「ふん。たかが人間が、精霊の力を得た程度で調子に乗るなよ」


 ベテルギウスが両手を広げる。

 次の瞬間、彼の身体から強烈な闘気が吹き出した。

 それはまるで、荒れ狂う嵐のようだった。


「さぁ、来い。貴様の力を見せてみろ!!」


「言われなくてもそうするさ! まずは――【獄炎球】!!」


 俺の右手から、巨大な火の玉が放たれる。


「くだらん!!」


 ベテルギウスがそれを片手で受け止めた。


「まだだ! ――【爆裂火炎弾】!!」


 俺は左手からも火魔法を放つ。


「ふんっ!」


 ベテルギウスは右手を突き出したまま、今度は左手で魔法を受け止める。

 ――魔法攻撃を耐える際に最も効率がいいのは、自分の魔力を攻撃側の魔力と同じ属性にすることだ。

 そうすることで、効率よく抵抗力を上げることができ、ダメージを軽減することができる。

 次善策は、変質前の純粋な魔力で対抗すること。

 だが、ベテルギウスはそのどちらでもない方法で、俺の攻撃を防いだ。

 つまり、ただの闘気で対抗したのである。


「無駄だ! この程度の威力の魔法では、我が闘気を貫くことはできんぞ!!」


 ベテルギウスが叫ぶ。

 実際、それほどまでに彼の闘気の出力は高い。


「ならば、これはどうかな? ――【火炎車・炎帝乱舞】!!」


 俺は無数の炎の車輪を出現させる。

 それは、俺の周囲を取り囲むようにして高速回転し始めた。


「行け!」


 俺はベテルギウスに向けて、炎の車輪を放った。


「小賢しいッ!!!」


 ベテルギウスが吠えた。

 彼は俺が生み出した炎の車輪を、次々に殴り壊していった。

 だが、それだけではない。


「なに!?」


 ベテルギウスの姿が消える。

 ――それは俺が放った最後の炎の輪に紛れてのことだ。


「後ろだ」


 俺の背後からベテルギウスの声が聞こえた。

 それと同時に、彼が勢いよく腕を振り下ろす。

 その一撃は確かに俺の体を捉え――


「なっ!? バカな!!」


 ベテルギウスが驚愕の表情を浮かべる。

 それも当然のことだろう。

 なぜなら、彼が攻撃を加えた箇所の俺の体が、炎となって霧散してしまったのだから。


「残念だったな」


「まさか……幻か?」


「幻? そんなチンケなものと一緒にするな。今の俺は、まさに炎そのもの。物理攻撃は通用しないというわけさ」


「なるほど……。この火魔法こそが、貴様の切り札。影魔法は実力を隠すためのものか」


「ご名答」


 俺は素直に答える。

 英霊ベテルギウスは強い。

 だが、その強さの大部分を闘気に依存している。

 物理攻撃さえ無効化すれば、俺が圧倒的に有利だ。

 ダダダ団や一般民衆への正体バレだけは怖かったところだが、海上で異世界の英霊相手に戦う今はそんな心配は無用である。


「くっくっく……。はーっはっは!!」


「何がおかしい?」


「久方ぶりの美味い魔力に釣られて召喚に応じれば、召喚者はただの小物。ハズレを引いたと思っていたが、このような掘り出し物と出会えるとはな!!」


 ベテルギウスはそう言うと、不敵な笑みを浮かべる。

 どうやら、純粋に戦いを楽しむタイプのようだ。

 まぁ、『英霊』と呼ばれているぐらいなのだから、悪人ではないと思っていたが……。

 これはこれで厄介だ。

 戦闘で満足してくれるまで帰ってくれそうにない。

 10分間云々という話も、ベテルギウスからリオンに課しただけの制約だし……。


「さて、仕切り直しといこう。この戦いを思う存分に楽しもうではないか!!」


「いいだろう。龍神ベテルギウスの力、もっと深くまで見せてもらおう!」


 ベテルギウスが再び闘気を高め始める。

 そして、俺も負けじと魔力や闘気を練り上げたのだった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート