【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1253話 余計な手は出さないでください

公開日時: 2024年1月3日(水) 12:06
文字数:1,883

 俺とメルティーネは、人魚族の治療施設を訪れている。

 そこで働く女性たちに紹介してもらった。

 だが、彼女たちの表情には戸惑いの色が浮かんでいた。


「『ナイトメア・ナイト』……。ジャイアントクラーケンと戦ったという、あの……?」


「ああ。微力ながら戦わせてもらった。結果的には、勇敢なる人魚族戦士と共闘したと言ってもいいだろうな」


 俺はそう説明する。

 実際には、8割方のダメージを俺が与え、人魚族戦士たちは最後のひと押しをしただけだが……。

 彼女たちの警戒心を少しでも和らげるためには、これぐらいの説明にしておいた方がいいだろう。

 そして、『勇敢なる』という単語を用いて戦士たちをヨイショしておくのも忘れない。

 これが一番いいはずだ。


「そ、そうでしたか……」


 人魚族の女性たちは顔を見合わせる。

 俺の完璧な説明、そしてメルティーネ姫の存在のおかげで警戒心が少しばかり薄れたか……?


「失礼いたしました、ナイトメア・ナイト様」


 一人の女性が前に出て、俺に向かって頭を下げる。

 彼女は見た感じ、職員のリーダー格のようだ。

 口調や所作は丁寧だが……。

 その目は笑っていない。

 警戒、侮蔑、疑念……。

 そういった負の感情が読み取れた。


(まぁ、いきなり現れた危険な人族の男だからな。こういう反応も仕方ないか)


 メルティーネの紹介ということもあり、追い返されないだけマシだろう。

 俺は納得しつつ、彼女に告げる。


「では、何か手伝わせてくれないか?」


「しかし、失礼ですが……。ナイトメア・ナイト様は人族です。この場でできることは限られるのではないでしょうか」


「ふむ……。確かに、人魚族ほどテキパキと動けるわけではないな」


 俺はうなずく。

 メルティーネの加護により、俺は水中でも呼吸ができる。

 そのため忘れそうになるが、ここは海底だ。

 特殊な発光岩か魔法でもあるのか、深海でも視界は良好だが……。

 水中での細かな動きにおいて、俺は人魚族に敵わないだろう。


「だが、任せてくれ。俺は治療魔法を使えるんだ。魔力量も多くてな」


「そうなのですか? 確かにジャイアントクラーケンと戦えるほどの攻撃魔法を扱えるのであれば、膨大な魔力をお持ちなのでしょうが……。治療魔法まで扱えると?」


 女性職員が訝しむ。

 別に、変なことは言っていないはずだが……。

 それだけ、人族という種族への不信感があるということか。


「細かい話はあとにしよう。負傷者を見せてくれ」


「……では、まずこちらに」


 人魚族の女性は、俺とメルティーネを負傷者の元へと案内した。

 そこはケガ人の寝かされた空間であり、10名ほどの人魚族戦士たちが横たわっていた。


「ふむ……。それぞれ、手や足に傷を負っているな」


「はい。ナイトメア様は、こちらの軽傷者を中心に治療していただけますか?」


「もちろんだ。だが、重傷者の方は……」


「私が責任を持って治療しますのでご安心を」


 俺の疑問に、人魚族の女性は自信ありげな表情で答える。

 彼女は奥の負傷者たちの方を見る。

 そこには何人かの人魚族が付き添っていた。


「この場にいるのは、全員が尊敬に値する戦士です。人魚族の仇敵である、ジャイアントクラーケンの討伐に尽力してくださった戦士です」


「それは知っているが……」


「その中でも重傷者は、特に勇敢な戦士たちです。文字通り命がけで戦ってくれました」


「ああ。その通りなのだろう。……それで、何が言いたいんだ?」


 俺は疑問に思う。

 彼女の発言の意図が見えない。

 警戒、侮蔑、疑念などの感情も読み取れるが……。


「ナイトメア様の治療魔法が失敗すれば、重傷者の容態が急変する可能性があります。余計な手は出さないでください。メルティーネ姫様の面子のためにも、そこはしっかりとご理解いただきたいです」


「なるほど……。了解した」


 俺は素直にうなずく。

 それはそうか……。

 この場にいる戦士は里の英雄だ。

 その中でも重傷者には、称えられるべき貢献をした者も多いだろう。

 その戦士たちを治療している状況で、失敗が起こることは許されないというわけだ。


「もちろん、軽傷者の方々も偉大な戦士たちです。治療魔法に失敗していい……などと言っているわけではありません。しっかりとお願いしますよ。下手な治療魔法をかけるぐらいなら、帰っていただいても結構ですので」


 女性はそう釘を刺す。

 そして、彼女は重傷者の方へと行ってしまった。


「ナイ様……」


 メルティーネが小さくつぶやく。

 俺は安心させるように笑いかける。


「大丈夫だ、メルティーネ。こういうのは小さなことからコツコツと頑張るものさ。まずは、軽傷者をバッチリ治療していくぞ」


「……お願いしますの」


 そうして、俺たちは軽傷者の元へと向かうのだった。

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