侍女リマと別れた俺は、静かにリリアンの元へと向かう。
リリアンもまた、人魚族だ。
下半身は魚のそれである。
彼女は俺を見つけると、お辞儀をした。
「ナイトメア・ナイト様! 本日はお越しいただき、ありがとうございます!!」
「そんなにかしこまらなくてもいいさ。それより……おっと」
俺はふらついてしまう。
やはり、まだ酔いが醒めてないようだ。
「きゃっ!? あ、あの……このような場所ではちょっと……」
「ん?」
俺は首をかしげる。
何の話だろうか?
ふにゅっ。
「ひゃんっ!?」
変な声を出すリリアン。
俺は、そこでようやく自分が何を握っているか気づく。
どうやら、彼女の胸を鷲づかみにしていたらしい。
彼女は顔を真っ赤にしている。
「す、すまない……」
俺は慌てて手を離す。
リリアンは恥ずかしそうに身をよじった。
「い、いえ……ナイトメア・ナイト様は恩人ですので……その……お触りになりたいというのでしたら、どうぞ……」
「いやいや! そういうわけじゃないから!!」
俺は慌てて否定する。
女好きの俺とはいえ、パーティー会場でおっ始める趣味はさすがにない。
リリアンは頬を赤らめている。
(ヤバい……可愛いな)
酔っているせいかもしれないが、リリアンがとても魅力的に見える。
胸も大きいし、顔も可愛い。
俺は思わず見惚れてしまった。
「あの……ナイトメア・ナイト様?」
「あ、ああ! すまない。少し飲みすぎたらしくてな……」
「まぁ! そうでしたか……」
「酔いを醒ましてほしくて、リリアンのところに来たんだ。治療岩の責任者である君なら、できるよな?」
「ええ、もちろん。そういうことでしたら、お任せください!」
リリアンはうなずく。
そして、俺に向けて手をかざした。
「――【キュア】」
リリアンの手から優しい光が放たれ、俺の全身を包み込む。
その光は心地が良く、気分がスッキリしてきた。
完全に酔いから醒めるのではなく、適度な感じである。
数秒ほどで光が消えると、俺は再びリリアンに話しかけた。
「ありがとう。おかげで楽になったよ」
「いえ……。むしろ、私の方こそありがとうございました。ナイトメア・ナイト様のお力になれて光栄です。あなたは、私たち人魚族にとっての恩人ですから」
リリアンは、深々と頭を下げる。
俺は恐縮してしまう。
「大げさだなぁ……」
「いえ、そんなことはございません!」
リリアンは語気を強める。
彼女は興奮しているようだ。
「治療岩が怪我人でいっぱいになったとき……私はもうダメかと思いました。ナイトメア・ナイト様は、間違いなく私たちにとっての救世主です」
リリアンは深々と頭を下げる。
彼女からは、俺に対する感謝の念が感じられた。
「ああ、どういたしまして……と返しておこう」
「ふふ、ナイトメア・ナイト様らしいですね」
リリアンは口元に手を当てて笑う。
この笑顔がまた可愛いのだ。
彼女は20代。
10代後半の王女メルティーネ、10歳ぐらいの侍女リマとはまた違った魅力がある。
「感謝されるのは悪い気がしないな。これからも、人魚族のみんなが平和に暮らせることを願っているよ」
「はい! ありがとうございます!」
リリアンはそう言って微笑む。
そう言えば、彼女も例のアレの条件を満たしたんだよな。
談笑しながら、そのあたりも整理しておくことにしよう。
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