【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

965話 リッカが求めるもの

公開日時: 2023年3月19日(日) 17:24
文字数:2,131

 リッカの『ウォシュレット暴走事件』から数時間後――

 俺たちは再び、リンドウ温泉旅館の客室へと集まっていた。

 そして現在、俺は必死にリッカの機嫌を取っている真っ最中である。


「悪かったって。ほら、ジュースでも飲んで落ち着けって。りんごジュースがあるぞ!」


「ふんっ!」


 そう言って、そっぽを向くリッカ。

 完全に拗ねてしまっているようだ。


(うーん……。これは困ったな……)


 もともと、俺と彼女との仲は綱渡り状態だった。

 最初の戦闘では明確に対立し、激しい戦闘の上に俺が敗北した。

 その日の夜、傷を癒やすために温泉に突撃したところ、リッカと『風呂場でバッタリ事件』が起きてしまった。

 何とかなだめて共に湯に浸かったのだが、今度は『誓いの儀式』で俺が勘違いをし、彼女の下腹部に『淫紋』――じゃなくて『聖紋』を発現させてしまった。


 翌朝にも『聖女の貞操をうっかり奪いそうになる事件』が起きたが、これは軽く流せた。

 その後の『和食もどきの朝食』は喜んでもらえた。

 これは成功と言っていいだろう。


 次の卓球交流会は少しマズかった。

 ミティの必殺技で磔にされたり、俺の『マジックアーム付きゴーレム』でくすぐられたりしたせいで少し機嫌を損ねたのだ。

 旅館の庭を散歩しながらなだめ、俺のゴッドハンドによるマッサージでなんとか事なきを得た。

 さらには『魔法の絨毯』をプレゼントしたことで、俺とリッカの仲は友好寄りに大きく傾いた。


 だが、その後の『ウォシュレット暴走事件』によって一気に機嫌が悪くなってしまったのである。

 いや、正確に言えば、さらにその後の『トイレにおける脱衣文化』のおけるやり取りがトドメを刺した形かもしれない。


(うーむ……。どうやったら許してくれるかな……)


 このままでは、俺の狙いが達成できなくなる。

 彼女に”あれ”を付与できれば、俺の利益に――いや、世界の利益になるだろう。

 聖女であり滅私奉公の精神を持つ彼女の能力が増せば、恩恵を受ける人は多い。


(ここは下手に出て、ひたすら謝罪するしかないか……?)


 だが、先ほどから何度謝っても取り付く島もない状態だ。

 ここは思い切って――


「も、申し訳ありませんでしたッ!! 偉大なる聖女リッカ様ーー!!!」


 土下座である。

 床に頭をこすりつけて全力で謝るしかない。

 俺としては誠心誠意謝っているつもりだが、これで許してもらえるだろうか……?


「…………」


 そんな俺を無言で見下ろすリッカ。

 その目は氷のように冷たいものだった。


「……ふぅ。仕方ねーですね」


 やがて溜息と共にそんな言葉が聞こえてきた。

 俺は顔を上げて彼女を見上げる。


「僕様ちゃんは、もう怒ってないです。許すです」


「ほ、本当か!?」


「本当です。聖女たる者、過ちをいつまでも責め続けるような器の小さい女じゃねーのです」


 ドヤ顔で胸を張るリッカ。

 俺はホッと安堵の息を吐く。

 どうやら無事に許しを得ることができたようだ。


「そうか……。良かった……」


 心から安堵していると、不意にリッカが言った。


「でも、条件があるです」


「じょ、条件……?」


 その言葉に不安を覚える俺。

 まさか、この期に及んでさらなる要求があるというのか……。


「あ、あのですね……。えっと……」


「どうした? 俺にできることであれぱ何でも言ってくれ」


 言い淀んでいる様子のリッカに先を促す。

 聖女である彼女なら、大抵のことは自分でできるだろう。

 そんな中、俺に要求するのは一体どのようなことなのだろうか?

 俺は彼女の言葉を待つ。

 すると彼女は顔を赤らめながらこう言った。


「れ、例の……トイレが欲しいです……! ウォシュレット機能とやらが付いている……」


「……は?」


 予想外の言葉に思わず呆けてしまう俺。

 いや、だってそうだろう?

 なんでいきなりそんな話になるんだ?


「……」


 意味が分からず、しばらく俺は考え込む。

 そして、ようやく答えが分かった。


「なるほどな。ミネア聖国や他の国々にはない発想の魔道具だからな。興味を持ったというわけか」


「そ、そうです! その通りです!」


 何度も頷くリッカ。

 その表情からは必死さが伝わってくる。


(まぁ、確かにアレは画期的な発明品だもんな……)


 地球の発想をふんだんに使った代物なので当然といえば当然だが、この世界ではまだ普及していない技術なのだ。

 一流魔導技師のジェイネフェリアの腕がなければ、発想があっても再現できないしな。


「いいだろう。ネフィ、あれと同じトイレを用意できるか? できるだけ取り外しが簡易的な構造で、アイテムバッグに収納できるぐらいの大きさが理想的だが」


「ええっと、数日あれば可能なんだよ」


「資金は足りるか?」


「普段から潤沢な予算をもらっているから、大丈夫なんだよ。ラーグに帰ったらすぐに取り掛かるんだよ」


 ジェイネフェリアと会話する俺を見て、リッカの表情が――なぜか暗くなっている。

 なぜだ?


「リッカ? どうしたんだ?」


「いえ……なんでもないです……」


 そうは言うものの明らかに様子がおかしい。

 まるで何かに絶望しているかのような表情だった。


(なんだ? 彼女の要望と何かがズレてしまっているのか?)


 俺には思い当たる節がない。

 しかし、現にリッカのテンションが下がっている。

 例の”あれ”を満たすための数値も、停滞状態だ。

 ここはリッカが本当に求めているものを探る必要があるだろう。

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