【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1043話 エレナの困惑

公開日時: 2023年6月5日(月) 12:09
文字数:2,154

 ヨゼフが必殺技を放った。

 凄まじい威力の波動がこちらに向かってくる。

 格下だと思って油断していたが、これは少しばかりマズイ。

 なぜなら――


「ひっ!?」


「うわわっ!」


 エレナたちが傷つくかもしれないからである。

 彼女たちはCランク冒険者であり、確かな実力を持つ。

 しかし今はいろいろと消耗しており、すぐに動いたり防御体勢を取ったりすることは難しい状態だ。

 そもそも、彼女たちの状態が万全だったとしてもこの攻撃をノーダメージでやり過ごすことは難しいかもしれない。

 彼女たちは攻撃魔法の熟練者である一方で、防御や回避においてはさほどのレベルにないからだ。


「あ……あ……」


 魔導工房の少女に至っては、恐怖のあまり腰を抜かして座り込んでいる。

 ヨゼフはチンピラだが、幹部だけあって悪くない実力を持つ。

 そんな彼がブチ切れて全力を出した必殺技は、非力な一般人にとって恐怖の対象でしかない。


「ひゃははぁっ! 全部吹っ飛べやぁっ!!!」


 ヨゼフの叫び声と共に、衝撃がどんどん近づいてくる。

 仕方ない……。

 俺は俊足を活かし、エレナや魔導工房の少女を一箇所に集める。


「……っ! 何を……!」


 文句を言いたそうにしているエレナ。

 まぁ当然だろう。

 ヨゼフを彼女から引き離してやったのは俺なのだが、彼女視点ではまだ敵か味方か確定していないからだ。

 しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。


「動くな。死にたくないのならな」


「……っ! あなた、いったい……」


 やれやれ。

 この緊迫した状態でしつこい奴だ。

 ルリイ、テナ、魔導工房の少女は、大人しく俺に守られる態勢なのに。

 まぁ、目まぐるしく動く事態についていけていないだけかもしれないが。

 エレナだけが、俺に対する警戒心を解いていない様子だ。


「私は、あなたのような怪しい奴を信じたりは――んぷっ!?」


 俺はエレナを強く抱きしめ、彼女の顔を胸元に押し付けつつ口の動きを封じる。

 下手に動き回られると、守れるものも守れなくなるからな。


「話は後だ。今は大人しくしているがいい」


 これでしばらくは静かになるはずだ。

 さぁ、来るぞ!


「ひゃはははっ! 死ねやぁぁぁあああっ!!」


 ヨゼフの攻撃が目前に迫る。


「――【影壁】」


 俺は自らの前に分厚い闇の障壁を展開する。

 ガガガガッ!!!!

 強烈な衝撃波を受け止めるも――


(むぅ……。やはり1枚ではキツイか……)


 1枚の薄い壁で受け止めきるのは無理があったようだ。

 俺は瞬時にそう判断した。


「――【影壁・三連】」


 続いて、三重の影の壁を展開。

 ガガガンッ!!

 衝撃波が壁を襲うも、なんとか耐えることに成功する。

 まぁ他の魔法や闘気を使っても耐えれたんだが、今の俺は『ナイトメア・ナイト』だからな。

 使用するのは主に影魔法だけと決めている。


「んんっ! んーっ!!」


「む?」


 俺の胸元で、エレナが暴れ始めた。

 どうやら息苦しくなったらしい。


「こら、暴れるな」


「んっ! んんっ! ――ぷはっ!」


 ようやく解放されたエレナが荒く呼吸をする。


「はぁ……はぁ……はぁ……。――な、何するのよ!?」


「お前がゴチャゴチャと騒ぐからだ」


「はぁ? 私がいつ騒いだっていうのよ? 何時何分何秒っ?」


「お前は子どもか。……それよりも、少し顔が赤いが大丈夫か?」


「――っ! ……そ、それは……」


「熱でもあるのか?」


「だ、誰があんたなんかに心配されて喜ぶものですか! 余計なお世話よ!!」


「そうか」


 俺は淡々と答える。

 彼女はプイッと顔を背けた。

 よく分からない女だ。

 俺はそう思ったが――


(な、何なのよ、もう……。さっきの匂い……。何だかすごくドキドキした……。あんなの初めて……。でも、嫌じゃなかった……。むしろ、心地よかったというか……。……って違う! 私には心に決めたタカシ様がいて、彼以外の男性にドキドキしたりしちゃいけないのに!)


 エレナが小声でぶつくさ呟いている。

 聴覚強化のスキルを持つ俺にとって、盗み聞きぐらい造作もないことだ。

 しかし、俺の匂いを気に入ってくれるとはな。

 将来的にはぜひハーレムメンバーに加えて――


(それにしても、どこか嗅ぎ覚えのある匂いだったような……? そう、私がタカシ様にいただいたこの『紅杖・レーヴァテイン』と同じ……?)


 それ以上はいけない。

 今の俺は『ダークガーデン』のボス『ナイトメア・ナイト』である。

 間違っても、タカシ=ハイブリッジ男爵と同一人物であることがバレてはならない。


「呆けるのはそこまでだ」


「――えっ!?」


 俺はエレナを後方に押しやる。


「ちょ、ちょっと! 私は――」


「足手まといは邪魔だ」


「なっ……!?」


 エレナがショックを受けた表情になる。

 だが、ここはあえて冷たく突き放す。


「お前たちはそこで見ているがいい。闇に潜みし我らダークガーデンが闇を狩る瞬間を」


 俺はニヤリと笑う。

 そして、ヨゼフの方に視線を向ける。


「ぜぇ……ぜぇ……。ば、バカな……。どうして無事なんだ?」


「あの程度で我をどうにかできると思ったか」


「ちっ……まぁいい! 別に俺一人で戦う必要もねぇんだ! これだけの人数で囲めばどうとでもなる! お前はもう、袋のネズミだぜぇ!!」


「ふん……。試してみるか?」


 俺はヨゼフの後方を見る。

 そこには、俺とヨゼフの動向を伺っている10人以上のチンピラがいる。

 ヨゼフの号令がかかれば、おそらく一斉に襲ってくるだろう。

 俺は少しばかり気を引き締めたのだった。

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