「機会があれば、希少な植物の苗や種を求めて山々に足を延ばしてみたいと考えています。そのときに採集術が役立つかと」
「ああ……なるほどな」
俺は納得した。
今回の桜花七侍戦で活躍したのは、『吸魂花』という植物だと聞いている。
とある筋から俺が購入して、武神流道場の中庭に植えて……。
そして紅葉の植物妖術の鍛錬がてら妖力を日々与えつつ、大切に育てていたのだったな。
事前に準備していた植物を活用すれば、本来の実力以上のものを発揮できる。
それが、植物妖術使いの良いところだ。
「意図は理解した。その採集術は……レベル3ぐらいにしておくか?」
「そうですね。将来的には役立つと思いますが、今すぐに役立つわけではありませんから。謀反後の混乱から高志様をお守りするため、他のスキルも強化しようかと……」
「具体的にはどうする? 残りスキルポイントは……20になる計算だ」
現状のスキルポイントが55。
植物妖術をレベル2から4に上げるために、25ポイント。
採集術をレベル2から3に上げるために、10ポイント。
55-25-10で、20のスキルポイントが残る。
「まずは『高速詠唱』をお願いします」
「ふむ、弱点を補う形だな」
紅葉の植物妖術は、現時点でも悪くない。
植物妖術のスキルレベルを4に上げれば、さらに強力となるだろう。
彼女は頭もいいし、俺にはできないような立ち回りで格上を撃破することだってあるかもしれない。
だが、彼女はあくまで『搦め手専門』みたいなところがある。
正面からの近接戦闘では、剣術道場の娘である桔梗はもちろん、忍者見習いの流華にだって及ばない。
これからのことを考えると、このスキルは是非とも欲しい。
素早い詠唱ができれば、植物妖術使いだって実質的に近接戦闘員のような立ち回りができるからな。
……ちなみにだが、魔法と妖術には多くの共通項がある。
この『高速詠唱』というスキルは、魔法と妖術の両方の詠唱に作用する。
俺が桜妖術で実証済みだ。
「最後に、『栽培術』もお願いします」
「栽培術か。採集術や植物妖術とのシナジーが期待できるな……」
魔法や妖術には、既に存在している物体を操るという側面もある。
例えば、『乾燥地帯で使う水魔法』と『海の近くで使う水魔法』では、後者の方が強力になったりするのだ。
「はい。山々で採ってきた希少な植物を桜花城の敷地内で栽培して、植物妖術で操る作戦ですね。スキルの具体的な効力のほどは試してみないとわかりませんが、道場から植え替えたばかりの吸魂花だって素早く育ったりするかもしれません。そうなれば、今の不安定な城内で高志様をお守りすることにも役立てられそうです」
「分かった。栽培術も伸ばそう」
俺は頷いた。
やはり、紅葉は頭が良いな。
まずは自分で考えさせ、問題があれば俺が修正してやる方向性で考えていたのだが……。
修正する必要など、どこにもない。
既に伸ばしてある主戦力の植物妖術とのシナジー。
紅葉や俺を取り巻く喫緊の課題である、謀反後の桜花城の警備体制の確立。
しっかりと考えられている
「では……強化するぞ」
「はいっ!」
紅葉が元気よく返事をする。
俺はステータス画面を操作し、彼女のスキルを強化した。
これで高橋家の安定度は確実に向上したことだろう。
次は――
レベル9、深山紅葉(みやまもみじ)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:植物妖術使い
ランク:ー
武器:木刀
防具:村人の服
HP:68(52+16)
MP:36(28+8)
腕力:39(30+9)
脚力:39(30+9)
体力:43(33+10)
器用:39(30+9)
魔力:39(30+9)
残りスキルポイント:0
スキル:
植物妖術レベル4
高速詠唱レベル1
採集術レベル3
栽培術レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
読み終わったら、ポイントを付けましょう!