ヤマト連邦らしき島国に上陸した俺は、岩陰で休憩しつつ情報を整理している。
達成したミッションの報酬であるスキルポイントを受け取り、とりあえず『気配察知』のスキルを伸ばした。
そこで俺は、また別の新着情報に気づく。
「新たなミッションか……。ええと、『桜花城を攻め落とし、支配しよう』だって?」
ミッション
桜花城を攻め落とし、支配しよう
報酬:加護(大)の解放
スキルポイント10
「これはまた……何と言うか物騒な……」
俺はミッションの内容を読んで嘆息する。
桜花城という城を、俺は知らない。
だが、ある程度の推測はできる。
まず『桜花』というのはヤマト連邦の一地方だろう。
人魚族の一部の者たちが、『おうか』という人族の街について話していたことがある。
おそらくは『おうか=桜花』だ。
地域一帯の名前は、桜花国、桜花県、あるいは桜花藩あたりかもしれない。
暫定で『桜花藩』としておこう。
そして、その桜花藩を支配する領主もしくは藩主が住んでいるところが『桜花城』といったところか。
全て推測だが、大きく的を外してはいないだろう。
「このミッション、相当なリスクがあるぞ……」
俺は眉をひそめる。
なにせ、城を落とせというのだ。
ヤマト連邦は、もちろん連邦制だ。
いくつもの国が集まり、一つの大きな国を形作っている。
その連邦の一角である桜花を攻め落とせと言っているのだ。
「ヤマト連邦全体の国力、そして桜花藩の国力にもよるが……。いくらなんでも無謀すぎるだろ」
ヤマト連邦は鎖国国家だ。
国全体としてどれほどの力を持っているのか、俺は知らない。
俺が今までに関わってきた国は……サザリアナ王国、ハガ王国、ウェンティア王国、人魚の里あたりか。
あとは、ミネア聖国とファルテ帝国についても名前だけは聞いたことがある。
サザリアナ王国は、かなりの大国だ。
その名の通り、新大陸の南側を領土としている。
まぁ、あくまでも『開拓済みの地域における南側』だけどな。
新大陸の中央部には上から見てL字型の大山脈があり、そこから南や西への開発は進んでいなかったと聞いている。
俺がこの世界に転移してきてからはいろいろあった。
南の先住民であるハーピィやオーガの集団(のちのハガ王国)と争ったり、大山脈にある古代遺跡を通過して西の砂漠地帯を発見したりした。
砂漠地帯については聖女リッカに武力で制止されたこともあり、保留中だが……。
いつか訪れることもあるだろう。
そんなサザリアナ王国が保有する戦力は、かなり大きい。
まず、国王であるネルエラ陛下がトップにいる。
彼は政務能力だけでなく、戦闘能力という面でも破格の存在だ。
俺は彼とのドッキリ模擬試合で勝利を収めたが、彼がガチで戦えば負けていただろう。
次に、イリーナたち『誓約の五騎士』も強い。
コンラード第二王子も強いはず。
魔法師団の副団長を務めているぐらいだもんな。
第三王女のベアトリクスも、相当な実力者だ。
王都騎士団の大隊長を任されているので、弱いわけがない。
俺は彼女との決闘で、勝ったことがあるが……。
何かしらの奥の手がありそうだったし、お互いに本気で戦えばどうなるか予想できない。
その他、魔法師団の団長、王都騎士団の団長や副団長もいる。
俺は面識を持たないが、当然のこととしてコンラードやベアトリクスよりも強いだろう。
また、地方にはラスターレイン伯爵家やソーマ騎士爵家といった武闘派貴族の存在もある。
サザリアナ王国が保有する総戦力は凄まじい。
「俺はチート持ちだけどさ……。国という集団を相手取れというのはさすがに無茶振りじゃないか?」
俺は思わず唸る。
いくら俺が強くても、国家を相手に無双はできないだろう。
仮に桜花藩がサザリアナ王国並みの総戦力を保有していた場合、絶対に勝てない。
しかし……ミッションを完全に無視するのもなぁ……。
一口に『国』といっても、その規模には差がある。
もう少し検討してみることにしよう。
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