【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1099話 普通に接してくれ

公開日時: 2023年7月31日(月) 12:16
文字数:1,816

 俺、モニカ、ニムの3人は、秘密造船所の中に入った。

 そして、当然のように警備兵に囲まれる。

 だが、総責任者のゴードンが現れてくれたことで、どうにか話し合いの場を持てそうな雰囲気になっていた。


「嬉しそうだな、ゴードン。何かいいことでもあったのか?」


「はっ! それはもちろん、ハイブリッジ卿がいらっしゃいましたので!」


「ほう」


「厄介なダダダ団も壊滅したようですし、これで本来の私どもの役目を果たせそうです。さっそく、例の魔導技師を呼んで作業を進めているところです」


 ゴードンはそう言うと、再び嬉しそうに笑みを浮かべた。

 ……ふむ。

 ダダダ団壊滅の情報が、すでに伝わっているようだな。

 さすがはネルエラ陛下の命を受けて任務にあたっているだけはある。

 情報収集が早い。

 俺とゴードンの間に和やかムードが漂う中、横から声が聞こえてきた。


「あの……ゴードン隊長……。その方々は一体……?」


「むっ……? お前たち、いつまで立っているつもりだ! 早く膝を付け!!」


 ゴードンが首から上だけを横に向け、命令する。

 彼は俺に会うなり膝を付いていたので、他の警備兵たちの状況まで把握していなかったようだな。


「え……? この見るからに普通な男性と、非力そうな女性たちが何か……?」


「おい! この方たちに失礼なことを言うな!!」


「ひぃ……!」


 部下の問いかけに対して、ゴードンが厳しい口調で叱責する。

 叱られた隊員はビクッとすると、すぐにひざまずいた。

 ただならぬ空気を察したのか、他の警備兵たちも慌てた様子で同じように姿勢を整えていく。


「ふぅ……。申し訳ありません。こちらの者たちには、まだ礼儀というものが身に付いておりませんで……。どうか、ご容赦ください」


「いや、気にしていない。というより、彼らはそもそも俺のことを知らないんじゃないか?」


 俺はそう指摘する。

 ゴードンは、俺のことを『ハイブリッジ卿』と何度か呼んでいる。

 タカシ=ハイブリッジ男爵という存在を知っている者なら、ゴードンが口にした『ハイブリッジ卿』という言葉だけで姿勢を正しそうなものだが。


「いえいえ! そのようなことは……ええと……あるかもしれませんね……。戦闘の筋は良い者たちなのですが、まだまだ勉強不足のようで……。本当に申し訳ありません」


「いや、構わないさ」


 再び頭を下げるゴードンに対し、俺は苦笑いで返す。

 この秘密造船所において、もっともマズイことは何か?

 それは、チンピラや不慮の侵入者に対してきちんとした対処ができず、建造中の隠密小型船の存在が露見することである。

 そのリスクを最小限にするには、戦闘や警戒能力に長けた警備兵を選定し配置する方が良い。

 貴族に関連する知識や礼儀などは後回しにしても問題ないのだ。


 俺はそう思ったのだが、ゴードンは違ったようだ。

 彼は厳しい顔つきになると、警備兵たちに向けて口を開いた。


「いいか? よく聞け! こちらの方は、ハイブリッジ卿だ!!」


「はいぶりっじきょう……?」


「Bランク冒険者にして、『紅剣』の二つ名を持つ凄腕冒険者! そして、数々の功績が評価されて貴族に叙された方でもある! 『タカシ=ハイブリッジ男爵』と言えば分かるだろう!?」


「……ああっ!! は、はい! あの有名な!」


「シフト違いの奴らが、ゴードン隊長もろとも一蹴されてしまったという……」


「この方がそうだったとは……。言われてみれば、どこか秘めたるオーラを感じるような……」


 ゴードンの説明を受け、全員がハッとした表情になる。

 それからすぐに、緊張した面持ちになって俺を見つめ始めた。

 ……ふむ。

 この様子だと、やはり俺の名前や二つ名はそれなりに広まっているらしい。


「あー……、その、なんだ……」


「ひぃっ……! こ、殺さないで……」


「いや、殺しはしないが……」


 俺が声をかけると、警備兵たちが一斉に顔を青ざめさせた。

 特に酷いのは……先ほど俺を『冴えない男』と表現した男か。

 涙目になりながら震えている。


「あー、そんなにビビらなくていい。それに、畏まる必要もない。貴族と言っても、元は平民だからな。そもそも、ここは社交の場ではなく、造船所だ。普通に接してくれ」


「は、はいっ!!」


「ありがとうございます!!」


「よ、よろしくお願いします!!」


「うむ」


 俺の言葉に、警備兵たちは喜色満面の笑顔で答える。

 そして、彼らの視線が次に向かったのは――俺の両隣に立つ、モニカとニムだった。

 俺の顔を知らなかったということは、当然彼女たちの顔も知らないだろう。

 紹介が必要だな。

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