「おらああああっ!!」
俺は魔力を纏わせた剣で、ポセイドンの石像を斬りつける。
『ヌウンッ!! 甘イワ!!』
俺の攻撃をポセイドンは尻尾で防いだ。
だが、俺は構わず剣を何度も振るう。
『フヌッ! ムウンッ!!』
ポセイドンは必死にガードしている。
先ほどとは、立場が逆転していた。
今の俺なら、ポセイドンの依代に傷をつけることさえ不可能ではない。
『ヌウ……! 千年ノトキヲ戦イ抜イテキタコノ依代ガ、ココマデ追イ詰メラレルトハ……』
ポセイドンが唸る。
そして、彼は俺に向けて口を開いた。
『【大海嘯(だいかいしょう)】!!』
ポセイドンの石像が吠えると同時に、海流と渦潮が発生する。
俺はそれに巻き込まれる前に素早く泳いで移動した。
少し前に取得した『水泳術』『水中機動術』『潜水術』などがとても役立っている。
『逃ガサンッ!! 【海ノ捕ラエ手】!!』
ポセイドンの石像が吠えると同時に、巨大な手が無数に現れた。
その手は俺を捕らえようと伸びてくる。
かなり不気味な光景だ。
「くっ……! 【紅蓮剣】!!」
俺は魔力を纏った剣を一閃する。
巨大な海の手は斬り裂かれるが、すぐに再生した。
『無駄ダ! ソンナ攻撃デハ、水ノ追跡ヲ振リ切ルコトハデキヌ!!』
ポセイドンが吠える。
実際、魔力を込められた水というのは厄介だ。
物理攻撃が通じにくいのである。
「ぐうっ!?」
俺は伸びてきた水の触手に掴まれる。
そして、ポセイドンの元へと引っ張られた。
『捕エタゾ! タカハシタカシ!!』
「くっ……!」
俺はなんとか逃れようともがく。
しかし、水の触手は俺を離そうとしない。
『貴様ハ頑丈ダガ……。環境ノ急激ナ変化ニモ耐エラレルカナ?』
ポセイドンの石像が言う。
奴は巨大な右手を、俺へと振り下ろした。
「【圧迫死・直下行路】!!」
ポセイドンの右手が俺を襲う。
水の手で動きを妨害されている俺は、その攻撃を避けようがなかった。
「ぐああああぁーーっ!!!」
俺は悲鳴を上げつつ、海底方向へと叩き落とされる。
凄まじいパワーだ。
まともに食らえば、一瞬で即死だっただろう。
まぁ俺の場合、ポセイドンが指摘した通りかなり頑丈なので大きな問題はない。
常時まとっている魔力や闘気によってダメージが減る上、攻撃されそうなときには防御に魔力や闘気を回すことができるからな。
今も、攻撃される直前に防御を固めた。
特に大きな問題はない。
ここは何とか態勢を立て直して――
「ごはっ!?」
――そう思った瞬間、謎のダメージが俺を襲った。
ポセイドンの追撃?
いや、違う。
これは……。
「す、水圧か……」
俺はつぶやく。
ポセイドンの巨大な右手の攻撃によって、俺は海底方向に叩き落とされている。
ここは『海神の大洞窟』の最深部だったはずだが、まださらに底があったらしい。
海溝とかだろうか?
かなり深い。
当然、俺の体を襲う水圧も凄まじい。
「こ、こんな攻撃方法があったとは……。海中ならではの攻撃だな……」
通常の攻撃なら、攻撃を受ける瞬間だけ魔力や闘気で防御力を上げればいい。
だが、水圧による攻撃はそうもいかない。
常に水圧に襲われている状態だ。
「これは……きついな」
俺はつぶやく。
状態を把握さえすれば、適切な防御力を維持することはできる。
俺には治療魔法もあるので、ダメージが蓄積することもない。
だが、MPの消費速度を考えると、このまま高水圧に晒され続けるのは得策ではないだろう。
「さっきの場所に戻って、さっさとポセイドンを撃破せねば……」
ここは『海神の大洞窟』最深部にある海溝の奥底である。
さっきの場所に戻れば、水圧によるダメージはマシになるだろう。
だが、ポセイドンの攻撃を再び受ければまた底まで叩き落とされかねない。
なんとかして、早めにあいつを倒さなければならないのだが……。
「……奥底に叩き落された状況を、逆に利用するか。向こうもこちらを一時的に見失っているはず……。千年のときを戦い抜いたとかいう依代を、この手で粉砕してやるぜ!」
俺は作戦を練る。
そして、静かに上を目指して泳ぎ始めたのだった。
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