俺、マリア、キサラ、トパーズ、リン、ロロ、ノノン。
7人で、魔法の絨毯に乗って空を飛んでいる。
「いい風だなー」
空の旅はとても快適だ。
風は心地よく、気温もちょうどいい。
天気も良く、雲ひとつない快晴だ。
まさに絶好の飛行日和である。
「もぐもぐ……。このお菓子、本当においしいっ!」
「そう言ってもらえて嬉しいですぅ。また作っておきますねぇ」
リンが提供してくれたお菓子を食べ、みんなで雑談をしながら西の森の上空を進む。
今回の件で、それぞれの忠義度にも好影響があった。
まず、マリアは通常の加護を付与済みなので考慮外ではあるが、愛する妻の1人なのでもちろん絆を深めておいて損はない。
「見ろよ、トパーズ! 魔物がゴミのようだぜ! ギャハハハ!!」
「キサラ、落ちますよ……」
元黒狼団のキサラと、元闇蛇団のトパーズの忠義度も微増している。
また、2人の仲も良好だ。
お互いの呼び方が呼び捨てに変わっている。
彼女たちやその他の犯罪奴隷同士が結託して反旗を翻すリスクには留意する必要があるが……。
まぁ、リーダー格には『隷属の首輪』を付けているしな。
大きな問題はないだろう。
特にキサラとトパーズはいずれ俺の女になってもらう可能性もあるし、お互いに仲良くなってもらうのは悪いことではない。
「ふぁああ……。騎士様は本当になんでもできるのですねぇ……」
「お気に召しましたか? 姫様」
俺はノノンの耳元でそう呟く。
彼女からの忠義度も結構上昇している。
俺たちの『騎士と姫様ごっこ』をいつまでやるかは、微妙なところだ。
リンやロロの前で、ノノンを姫様扱いするのは少しばかりマズイ気がする。
いや、リンやロロの前に限った話ではないか。
男爵家の当主が平民の女の子にかしずいていては、周囲の不評を買う。
「は、はい……。騎士様、素敵です……」
「ふふふ。なら、良かったです」
顔を赤らめるノノンを見て、俺は満足げな笑みを浮かべる。
彼女は『騎士と姫様ごっこ』が大のお気に入りなんだよな。
忠義度を上げるために、今後もこれは継続させていきたい。
周囲の目がない範囲でならば、続けても別に大きな問題はないだろう。
今だって、ノノンの耳元で囁いているだけだ。
ノノンへの『姫様』呼びはリンやロロに気付かれていないはず……と思っていたのだが――
「…………(むう)」
「ご、ご主人さまぁ……」
ロロとリンが頬を膨らませていた。
ノノンへの『姫様』呼びがバレた?
いや、これは――
「すまんすまん。ほら、お前たちもこっちに来い」
「えへへぇ。ご主人さまー」
「…………(むふー!)」
2人を手招きすると、彼女たちは嬉しそうな表情を浮かべてこちらにやってきた。
「よしよし。いい子だ」
「ふぁぁぁぁ……。撫で撫では気持ちいいですぅ」
「…………(こくこく)」
リンやロロの頭を撫でてやる。
彼女たちは気持ち良さそうに目を細めた。
(ふふふ。ファイティングドッグ狩りでは危ないところだったようだが、結果的には最高の結果になったな)
俺はとても満足していた。
リンとロロが、通常の加護の条件を満たしたからだ。
さっそく2人に付与している。
レベル8、リン=シャオ
種族:ヒューマン
身分:隷属奴隷
役割:メイド見習い
職業:剣士
ランク:E
武器:名剣『プレッツェル』
防具:革の鎧
HP:60(46+14)
MP:36(28+8)
腕力:30(23+7)
脚力:33(25+8)
体力:33(25+8)
器用:33(25+8)
魔力:33(25+8)
残りスキルポイント:40
スキル:
料理術レベル2
清掃術レベル2
称号:
タカシの加護を受けし者
フルネームや種族については、加護(小)を付与した時点で分かっていた。
今回新たに判明したのは、基礎ステータスの具体的な数値だ。
まだ幼いためか、俺やミティが同レベルであった頃よりもステータスが低めな傾向がある。
ただし、そもそもの基礎レベルは年齢の割にかなり高い。
また、所持スキルのレベルも高い。
これは加護(小)の恩恵が影響しているだろう。
その恩恵は、主に3つ。
『全ステータスの2割上昇』『所持スキルの内の最大3つのスキルレベルをそれぞれ1ずつ上昇』『所持スキルの成長促進(微)』だ。
加護(小)が付与された時点でステータスが強化されたことにより、日々の活動や狩りを精力的こなすことができる。
それにより、知らず知らずの内に基礎レベルが上がっていたのだろう。
また、加護(小)の時点で強化されたスキルレベルは、通常の加護に昇格したら補正前のレベルに戻るのではなく、補正後のレベルのままで据え置かれる。
具体的に言えば、少し前までリンの清掃術のレベルは『2(1+1)』という表記だったのだが、今は単純に『2』と表記されている。
続けてロロのステータスを確認してみよう。
レベル8、ロロ=アロティ
種族:ハーフドワーフ
身分:平民
役割:鍛冶師見習い
職業:槌士
ランク:E
武器:ウッドハンマー
防具:革の鎧
HP:60(46+14)
MP:33(25+8)
腕力:36(28+8)
脚力:30(23+7)
体力:33(25+8)
器用:33(25+8)
魔力:33(25+8)
残りスキルポイント:40
スキル:
槌術レベル1
鍛冶術レベル2
清掃術レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
総合的な能力としては、リンと大きな差はないか。
違いがあるとすれば、その能力の方向性だけだ。
リンがメイド剣士だとすれば、ロロはハンマー使いの鍛冶師といったところか。
ただ、メイド剣士にはレイン、ハンマー使いの鍛冶師にはミティという上位互換が存在する。
層に厚みができると考えればそれも悪くはないのだが、できれば多少の差別化はしていきたい。
「ど、どうされましたかぁ?」
「ん? ああ、ちょっと考え事をしていてな」
「…………(じーっ)」
「そう心配するな。別に悪いことじゃない。リンやロロが、将来どんな魅了的なレディになるのか想像していたんだ」
「あぅぅ……。そ、それは……」
「…………(わくわく!)」
リンは恥ずかしそうにモジモジした。
一方で、ロロは期待に満ちた眼差しをしている。
「若い2人には無限の可能性がある。期待しているぞ」
込み入った話は、魔法の絨毯の上でするべき内容ではない。
なので、俺は話を打ち切った。
「はいぃ! がんばります!」
「…………(こくり!)」
リンとロロはやる気に満ち溢れている様子だ。
近い内に、成長の方針を聞き出しておこう。
現時点でそれなりのスキルポイントがあるし、使わないで温存しておくのはもったいない。
少なくともいくらかは使用して、戦闘系のスキルを強化しておくのがいい。
そうなれば、狩りで多少の不測の事態が発生しても対処できるはずだ。
トミーやアランあたりにも声を掛けておく予定だし、もう二度と今回のようなピンチは訪れないだろう。
「はぁ……。無限の可能性か……」
「羨ましいですね。鉱山奴隷となる私とは大違いです」
キサラとトパーズがそんなことを言い出す。
確かに、一般的言って鉱山奴隷は過酷な環境で働かされるが……。
俺が人材と無闇に使い潰すわけがないだろう。
(ここで説明してもいいが……。百聞は一見にしかず。もう少しで採掘場に着くし、そこで実際に見てもらうか)
俺はそんなことを考えつつ、魔法の絨毯で空を飛ぶのであった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!