【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1046話 魔法封じの芳香

公開日時: 2023年6月8日(木) 12:13
文字数:1,786

 ダークガーデンとダダダ団の戦いが佳境を迎えている。

 様々な古代魔道具を使ってきた彼らだったが、所詮はザコ。

 俺たちダークガーデンの敵ではない。


「さて……。残るはお前1人だぞ?」


「ぐぐぐ……。てめえらみたいな怪しい奴らに、俺がここまで追い詰められるとは……」


 ヨゼフが悔しそうに歯噛みしている。

 部下はすでに全滅。

 彼自身も、被ダメージが大きい上に闘気も消耗している。


「ほら、どうした? さっさと『奥の手』とやらを見せてみろ」


「くっ……言われずとも見せてやる!!」


 ヨゼフが懐から何かを取り出す。

 どこか不思議な雰囲気のある道具だ。


「この魔道具の力があれば、俺たちが優勢になる! いくぜぇっ!!」


「む……?」


 周囲に甘い香りが漂ってくる。

 その上、体に妙な感覚がある。

 これはいったい……?


「へへへ。効き始めたみたいだな」


「何だと……?」


「この魔道具は『魔法封じの芳香』。これであんたらは、魔法が使えなくなったわけだ!!」


「……ほう。魔法が封じられたのか……。本当にそうかな?」


「ふん! 強がりは止めな! 今に分かる!!」


 ヨゼフが勝ち誇ったように笑う。

 確かに彼の言う通り、魔力が阻害されているような感じがする。

 魔力というのは地球にはなかった存在なので、言語化するのが難しいのだが……。

 物理的な動きに例えるなら、先ほどまでは空気中で動かしていた自分の体が、今は水中にあるといった感覚だろうか。

 即応性が落ち、最大速度が落ち、さらには余計な体力も消耗してしまう感じだ。


「どうだ? 魔法が使えないだろう? テメェ程度の魔法使いは、これで完封できる! これが『魔法封じの芳香』の効果だ!!」


「なるほどな」


「……? 反応が薄いな。もっと怖がってもいいんだぜ? テメェらダークガーデンは、魔法使いの集団なんだからよ!! 純粋な肉弾戦はできねぇだろ!!!」


 ヨゼフがニヤリと笑っている。

 完全に勝利を確信した顔だ。


「ふむ……」


 俺は静かにヨゼフを眺める。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「――3つ」


「あ?」


「お前は3つの誤解をしている」


「……どういう意味だ?」


 ヨゼフの表情から、余裕が少しばかり消えた。

 俺はそのまま言葉を続ける。


「まず1つ目。俺たちは魔法を使えるが、魔法専門というわけではない。当然、肉弾戦もできる」


「はっ! そんなわけあるかよ! ただのハッタリ――」


 バキッ!


「何だとっ!?」


 ヨゼフの顔色が変わる。

 俺が手頃な瓦礫を、素手で握り潰してみせたからだ。

 別に魔法使いであっても、魔力で身体能力をブーストすればこれぐらいはできたりする。

 だが、今の俺は『魔法封じの芳香』の影響下にある。

 この状況において素手で瓦礫を破壊できるということは、素の身体能力や闘気量が十分に高いということの証明になる。


「2つ目。お前はさっき、『テメェ程度の魔法使いは、これで完封できる』と言ったな。それは間違いだ」


「つ、強がりはよせ! お前の影魔法の練度はなかなかだが、出力自体が低いことは分かってんだよ!」


「それこそ勘違いだ。俺の本来の実力はこれじゃない」


「バカを言うな! なら、どうして今まで本気を出してこなかった!?」


「これが答えさ。――【影棺・解放】」


 ドサドサ……。

 俺が唱えた瞬間、地面から黒い棺桶が現れる。

 その中で気絶していた3人のチンピラが、無造作に投げ出された。


「コイツらは……」


「お前の部下たちだ。見覚えがあるだろう?」


「……! コイツら、冒険者タケシの始末に向かわせた連中じゃねえか!」


 ヨゼフが目を剥いている。

 Dランク冒険者の始末に向かった部下が、なぜか侵入者の魔法に囚われていたのだ。

 驚くのも当然だろう。


「なぜテメェがコイツらを……!?」


「なに、大したことではない。俺が通るところを塞いでいたのでな。ちょっと眠らせてやっただけだ。コイツらを収納するために魔力を割いていたから、本気を出せていなかったのだ」


「……!!」


 ヨゼフが絶句している。

 人間3人を影の中に収納する――。

 そんなことは空間魔法の『アイテムボックス』や『アイテムルーム』でも不可能だ。


 影魔法ならではの芸当なのだが、それも簡単にはできない。

 かなりの魔力を消費することになる。

 チンピラ3人を収納し、なお余力を残したままヨゼフたちと戦っていたという事実は、彼の想像を超えていたらしい。


 俺の口撃で、いい感じに動揺させることができたな。

 続く3つ目の誤解も指摘して、さらに動揺させてやることにしよう。

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