「よし、流華。次はお前の番だ」
「待ってたぜ、兄貴!」
俺に指名された流華が、嬉しそうな声を上げる。
俺たちは、ステータスを事前に記載しておいた紙を共に見た。
そこにはこう書かれている。
レベル10、朝霧流華(あさぎりるか)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:忍者見習い
ランク:ー
武器:苦無(くない)
防具:村人の服
HP:74(57+17)
MP:43(33+10)
腕力:40(31+9)
脚力:47(36+11)
体力:43(33+10)
器用:43(33+10)
魔力:43(33+10)
残りスキルポイント:60
スキル:
忍術レベル2
窃盗術レベル2
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
流華の初期レベルは10。
紅葉よりも1つだけ高い。
鍛錬などをする余裕がなかったのは紅葉と同様だろうが、流華の場合はある意味で毎日が実戦だった。
なにせ、スリとして生きていたのだから。
彼は多くの修羅場を潜り抜けてきた。
その成果……と言っていいのかは分からないが、彼は紅葉よりも初期レベルが1つ高く、そして『窃盗術レベル2』を持っている。
「流華、一応聞いておくが……」
「何だよ、兄貴?」
「得意分野を伸ばすとは言っても、『窃盗術』は上げないよな?」
流華は、既に罪を償っている。
スリの被害者たちに謝罪と賠償も済ませた。
もう犯罪行為に手を染める必要はないのだ。
「は? 何言ってんだよ、兄貴?」
「ん?」
「もちろん上げるぜ! これからも機会があれば盗んでやるからな!!」
「…………」
俺は絶句した。
てっきり、彼は心を入れ替えて真っ当に生きるのだと思っていた。
しかし、違った。
彼は盗むことをやめられないらしい。
「流華、尻を出せ」
「え? な、なんでだよ?」
「なんでもだ」
俺の有無を言わせぬ口調に、流華が慌てて従う。
……ペシンッ!!
「痛ぇ!」
俺は流華の尻を叩いた。
もちろん、手加減はしている。
だが、それでも彼は涙目だ。
「な、何すんだよ! 兄貴!!」
「これはお前のためなんだ。分かってくれ」
「え……? 俺のため――ひぃん!?」
俺は流華の尻を再び叩く。
今度は、さっきよりも強めに。
「や、やめっ! 兄貴!!」
「まだまだぁっ!!」
「やっ、やめろぉ!!」
俺は流華の尻を何度も叩いた。
何度も何度も叩いてやった。
なんだか楽しい。
野郎の尻なんか叩いても楽しくもなんともないと思っていたが、これはなかなか癖になるかもしれない。
「ん? どうした、流華?」
「んん……。はぁ、はぁ……」
流華の異変を見て、俺は手を止める。
彼は顔を真っ赤にして、息を荒げていた。
……いかんな。
ちょっとやり過ぎてしまったらしい。
顔を真っ赤にするほど怒り、息を荒げるほど苦しんでいたとは。
「悪かった、流華」
俺は深々と頭を下げる。
途中から、自分の楽しさを理由に彼の尻を叩いてしまった。
これは、彼からの信頼を裏切る最低な行為だ。
「はぁ、はぁ……。な、何がだよ?」
「お前のためだと言いながら、ちょっとやり過ぎた。反省している」
「あ、兄貴が謝ることなんかねぇぜ! そりゃ、どうして叩かれたのかはよく分かってねぇけどよ……その、兄貴に尻を叩かれること自体は嫌じゃないし……」
流華がボソボソと何かを言っている。
最後の方の言葉は、よく聞き取れなかった。
「え? 何だって?」
「な、何でもねぇよ! 俺のスキルをどうやって強化していくかって話に戻ろうぜ!」
流華が強引に話題を変えた。
まぁいい。
今は彼のスキル構成を考える方が先だ。
まず、彼の考えを聞いてみよう。
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