「高志様、あれを!」
紅葉の鋭い声に、俺は反射的にそちらへ視線を向けた。
彼女が指さす方向には、かつて巨大な岩が鎮座していたはずの場所がある。
だが――そこには、想像だにしなかった光景が広がっていた。
「……神社?」
思わず、声が漏れた。
「そ、そのようです。でも、こんな場所に神社が現れるなんて……」
紅葉もまた、目を見開きながら呟く。
俺たちは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
ついさっきまで確かにあった大岩が、突如として爆発し、その代わりに姿を現したのは、厳かなたたずまいの神社――。
まるで、長きにわたり隠されていたものが、突然この世に解き放たれたかのようだった。
「結界か何かで、神社を隠していたのか……?」
ふと、そんな考えが脳裏をよぎる。
誰の目にも触れないよう、隠蔽系の術が施されていたのかもしれない。
そして、何らかの理由でその封印が解け、今こうして俺たちの前に現れたのではないか――。
「高志様、どうしましょうか……?」
紅葉が、かすかに震えた声で尋ねてきた。
不安げな表情が、太陽光に照らされている。
「……まずは確認だ。深詠藩を統治するのは神社関係の勢力だったな? この神社こそ、俺たちが探し求めていた場所かもしれない」
自らの胸中を整理するように言葉を紡ぐ。
もしここが、俺たちが追い求めてきた神社だとしたら――この異様な現象にも、何かしらの理由があるはずだ。
「そうですね……。では、行ってみますか?」
「ああ、行こう」
紅葉が決意を固めたように頷いた。
俺たちは、慎重に足を踏み出しながら神社の境内へと進んでいく。
「これは……」
「……すごいですね」
境内に足を踏み入れた瞬間、俺たちは思わず息を呑んだ。
そこに広がっていたのは、ただの神社ではない。
本殿から拝殿に至るまで、まるで神話世界の建築物のような壮大な造りをしていた。
巨大な柱が天へとそびえ立ち、漆黒の屋根には金色の装飾が施されている。
高さ10メートルを優に超える本殿の荘厳さには、まるで神々の意志が宿っているかのような迫力があった。
そして、その周囲には無数の建造物が整然と配置され、それぞれが渡り廊下で繋がれている。
一つひとつの建物が独特の気配を放っており、ただの装飾ではなく、何らかの意味を持って建てられたものだということが直感的に理解できた。
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