海水浴を満喫しているところだ。
まあ、俺はビーチで日光浴をしているだけだが。
人によって、いろいろと趣味嗜好に違いがある。
ユナ、サリエ、リーゼロッテ、千は俺の近くで日光浴をしている。
サリエとリーゼロッテは、のんびりした性格なので遊び回るよりもこちらのほうが似合う。
ユナからは活発な印象を受ける。
しかしそれと同時に、彼女には暑さを好む嗜好もある。
ポカポカ陽気の日光浴を楽しんでいるようだ。
そして千は、お目付け役の俺の近くに置いている感じである。
ミリオンズの他のみんなは、思い思いに遊んでいる。
「い、いくよ。マリアちゃん」
「うん。ニムお姉ちゃん! それっ!」
ニムとマリアが浅瀬で無邪気に遊んでいる。
戦闘時には頼りになる2人だが、こうして見るとまだまだ子どもだ。
そして、その近くにはミティとティーナもいる。
「ふふ。マリアちゃん。久しぶりに、私の拳を味あわせてあげましょう」
「わあい! ミティお姉ちゃんのあれ、楽しみ!」
マリアが喜ぶ。
あれか。
「ビッグ……バン!」
バシャーン!
大きな水しぶきがマリアたちを襲う。
「わあい! 楽しいな!」
マリアは喜んでいる。
しかしーー。
「ピピッ。当機への攻撃を確認。反撃します」
バシャーン!
高性能ゴーレムのティーナが反撃する。
もちろんガチの反撃ではなくて、水しぶきによる反撃だが。
彼女もかなり溶け込んでいるな。
そんな風に海水浴を満喫している者たちの一方では、真面目な顔で何やら鍛錬をしている者たちがいる。
少女が3人だ。
「青空歩行(スカイウォーク)」
1人は、モニカだ。
空中で多段ジャンプする技を披露している。
「うーん。相変わらず、モニカのそれはすごいね。ボクはなかなかできないよ」
そう言うのは、アイリスだ。
せっかく海水浴に来ているのに、ともに技の練習をしているのか。
ちなみにモニカは標準的な水着を着ており、アイリスはやや露出の少ない水着を着ている。
そして、残りの1人はーー。
「すごいね、モニカさん。ナーティアさんも使っていたけど、僕には習得できなかったんだ」
”白銀の剣士”ソフィアだ。
彼女が驚嘆した表情でそう言う。
ナーティアは、モニカの母親である。
記憶を失い、ブギー盗掘団の一味として活動していた。
ソフィアはブギー盗掘団にやや肩入れをしており、ナーティアとも面識がある。
ちなみにソフィアの水着は、布面積が非常に大きい。
手首足首や首周り以外は、すっぽりと覆われてしまっている。
アイリス以上の鉄壁の防御だ。
ぐぬぬ。
もっと際どい水着ならよかったのに。
「ボクも以前から教わっているんだけど……。なかなか難しいねー」
アイリスがそう言う。
彼女の脚力は、ミリオンズ内でモニカに次ぐレベルだ。
闘気や聖闘気を合わせれば、彼女にも青空歩行が使えてもおかしくはない。
「ちょっとしたコツがあるんだ。3人でいっしょに練習しようか」
「ソフィアさんもいっしょなら、新しい刺激がありそうだね」
「ありがとう。よろしくお願いするよ」
そんな感じで、モニカ、アイリス、ソフィアの3人で練習を始めた。
せっかくの海水浴なわけだが、練習熱心だな。
彼女たちはしばらく練習を続けていく。
そして、そこに近づく人物がいた。
「君たちはスジがいいね。その年齢で、”虚空飛翔”を練習しているのか」
武闘家のジョージだ。
「虚空飛翔?」
聞いたことのない名称に、モニカが首をかしげる。
「ジョージ。この大陸では、”青空歩行”という名称が一般的だったはずよ」
ジョージの相方であるセニアがそう口を挟む。
「ああ、そういえばそうだったな。”青空歩行”は、なかなか難易度が高い技術だ。他の歩行術の練習はどのような調子なのだい?」
「ええっと。他の歩行術というと……?」
アイリスが首をかしげる。
「まさか、知らないのか? 独学でそこまでの力を? 順序がメチャクチャだな……。それはそれですごいが、少しもったいない」
「ジョージ。せっかく海に来ているわけだし、あの技を教えてあげましょう」
「ふむ。そうだな。私たちの奥義を見せてあげよう」
ジョージが闘気を開放し、海に近づいていく。
「はああ! ”青海歩行(ブルーウォーク)”」
バシャバシャバシャ!
ジョージが海上を走っている。
「す、すごいね。海の上を走るなんて」
ソフィアが驚く。
確かにすごい。
しかし、空中での多段ジャンプに比べるとひと回りすごさは落ちるか?
そして、しばらくしてジョージは戻ってきた。
「見ただけでも、概要はわかっただろう? まずはやってみたまえ」
「うまくいかないようだったら、私たちがアドバイスしてあげるわ」
ジョージとセニアがそう言う。
「わかりました。やってみます!」
「ええと。足に闘気を集中させて……」
「僕もがんばって習得してみよう」
モニカ、アイリス、ソフィアが練習に励みだす。
その様子を、ジョージとセニアが満足げに見守る。
「ふふふ。ハイブリッジ騎士爵は、今回の功績でまた貢献値が跳ね上がるだろう。”白銀”も然りだ。”あの御方”も満足されるはず……」
「それに、パーティメンバーのお嬢ちゃんたちも想像以上だわ。もしかすると、彼女たちも”条件”を満たすかもしれないわね。うふふ。楽しみだわ」
ジョージとセニアがそうつぶやく。
何やら意味深な発言だ。
そういえば、彼らは何かの目的でこの街に来ているのだったか。
そのあたりの詳細も、できれば聞いておきたいところだが……。
「ふぁああ……」
俺は大きなあくびをする。
今日はやる気が出ない。
このままのんびり日光浴をすることにしよう。
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