【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1664話 おにぎり

公開日時: 2025年2月20日(木) 12:10
文字数:1,065

「あ……」


 紅葉が顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうに俯く。

 今の音は、彼女の空腹によるものだったらしい。


「ご、ごめんなさい」


「いや、気にしなくていい。もう昼時か」


 俺はふと空を見上げた。

 太陽はちょうど真上にあり、雲ひとつない青空に強烈な光を放っている。

 肌を刺すような日差しが、時間の流れを改めて実感させた。


「幸い、ここは山の頂上だ。景色も素晴らしいし、昼食にするか」


「はい! そうしましょう」


 紅葉はぱっと表情を明るくし、元気よく頷く。

 その笑顔を見るだけで、先ほどの落胆が少しだけ和らぐ気がした。


 俺たちは、山の頂上にあった大岩の上に腰を下ろし、昼食をとることにする。

 岩肌は程よく温まっており、座ると心地よいぬくもりが伝わってきた。

 風は爽やかで、遠く鳥のさえずりが響いている。


 メニューは、俺のアイテムボックスに入れてあったおにぎりと漬物だ。

 白米の香りがほのかに鼻をくすぐる。


「美味しいです!」


 紅葉は目を輝かせながら、おにぎりにかぶりついていく。

 その幸せそうな表情に、思わず俺も口元を緩めた。


「それは良かった」


 俺もおにぎりを一口かじる。

 ふんわりと握られた米の甘みが口の中に広がり、塩気の効いた漬物がいいアクセントになっている。


「あぁ……。それにしても、この景色は本当に素晴らしいですね」


「そうだな」


 澄んだ空気が頬を撫でる。

 紅葉が感嘆の声を上げたのも無理はない。

 眼下に広がる景色は、まるで一幅の絵のようだった。

 山々の稜線が緩やかに連なり、紅葉に彩られた木々が風に揺れる。

 遠くには静かに流れる川のきらめきが見えた。


 俺も、思わず息をのむ。

 こんな美しい景色を、紅葉と共に眺められるのは幸運かもしれない。


「私、高志様に出会えて本当に良かったです。こうして、美味しいご飯が食べられるのも、高志様のおかげですから」


 紅葉が柔らかく微笑む。

 その頬は紅葉の色に負けないほどの温かみを帯びていた。


「大袈裟だな。俺は大したことをしていないぞ?」


「いいえ! そんなことはありません。本当に感謝しているのです。ありがとうございます」


 澄んだ瞳が真っ直ぐ俺を見つめてくる。

 その真剣な眼差しに、俺は少し戸惑った。


「そうか……。まぁ、どういたしましてだな」


 気恥ずかしさをごまかすように視線を逸らしながら答える。

 紅葉が俺を慕ってくれるのは嬉しい。

 だが、こうも率直に感謝されると、どうにも落ち着かない。


「あ、紅葉」


「なんでしょうか?」


 俺は彼女の顔をじっと見つめた。


「ちょっとじっとしてろ」


「え? ……えっ!?」


 驚いたように目を見開く紅葉。

 その表情が面白くて、俺は少し口元を緩める。

 そして――

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