「景春、お前はただの『平民少女』ではないぞ」
「え? どういう意味?」
景春は首を傾げる。
この様子では、自分の価値をまるで分かっていないようだな。
なら、教えてやらねばなるまい……。
「お前は、新藩主である俺の女になったのだ。表舞台に出すつもりはないが、純然たる平民として扱うつもりもない」
俺は景春を見据える。
彼女の頬は真っ赤に染まり……そして、俺の胸にもたれかかってきた。
「……嬉しい」
「ふふ、可愛いやつめ」
俺は景春の頭を優しく撫でてやる。
元々の計画では、景春は桜花城の離れに隔離して軟禁する予定だった。
先日の戦犯審議会では嘘を伝えたが、実際には俺の呪いは健在である。
老若男女を問わず、誰かを死に至らしめる行為はできない。
また、女性や子どもに対しては肉体的な苦痛を与えることも難しい。
政治的には間違いなく排除した方が無難な前藩主景春にさえ、呪いのせいで俺は手を下せなかった。
そこで考案したのが、景春の心を折って藩主としてのメッキを剥がす作戦だ。
殺せない以上、精神的に屈服させて軟禁するぐらいしか方法がないと判断したのである。
しかし実際に策を実行してみれば、なぜか景春は俺に懐いてしまった。
ストックホルム症候群の亜種的な精神状態になっているのかもしれない。
そのメンタルには配慮が必要だが、完全に心が折れて引きこもってしまうよりも結果的には良かっただろう。
血統妖術の『桜妖術』を操る彼女の戦闘能力は侮れないからな。
通常なら『面目服従でいつか裏切られる』リスクを考え、傍に置くことは躊躇ってしまうところだが……。
俺には関係ない。
なぜなら、俺にはチートスキル加護付与があるからだ。
何やかんやで条件を満たした景春には、さっそく加護(小)を付与している。
レベル?、桜花景春
種族:ヒューマン
身分:元大名
役割:元藩主
職業:血統妖術使い
ランク:ー
HP:??
MP:高め
腕力:??
脚力:低め
体力:??
器用:??
魔力:??
残りスキルポイント:???
スキル:
桜妖術レベル5(4+1)
???
景春の桜妖術には、俺も手を焼かされた。
物理攻撃を無力化する『散り桜』は凄まじい防御性能を誇る。
だが、それを操る彼女もいまや俺の女だ。
もう怖いものはない。
強いて言えば、景春が結果的に少しばかりの影響力を保ってしまったことが懸念材料だろうか。
景春にその気はなさそうだが、彼女を利用して俺に反目する一派がいるかもしれない。
樹影を始めとした桜花七侍以外で特に注意すべき存在は――
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