【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

404話 アヴァロン迷宮 4階層 ゼータナイン

公開日時: 2021年8月30日(月) 21:13
文字数:3,810

 引き続き、アヴァロン迷宮の4階層を進んでいるところだ。

 この階層にはゴーレム系統の魔物が多い。

 通常のゴーレム、リトルドラゴンゴーレムがうようよしている。


 出現頻度は少ないが、ジャイアントゴーレムですらザコ敵のように徘徊している。

 かつてのボス級の魔物がザコ敵扱いとは、この迷宮の難易度は相当に高い。


「ぜえ、ぜえ……。そろそろキツくなってきましたぜ」


「踏ん張れ、相棒。道中の魔物ぐらいは、俺たちで倒していかねえとな」


 トミーたち同行の冒険者がそう言う。

 彼らはCランクであり確かな実力を持つ。

 しかし、2階層ボスのスコーピオンや3階層ボスのコカトリスを少人数で討伐できるほどではない。

 おそらくだが、4階層のボスを相手取るのも厳しいだろう。


 せめて、道中のザコ敵ぐらいは撃破して少しでも貢献しようといったところか。

 まあ、ザコ敵とはいっても4階層ともなるとかなり強いが。


 彼らの献身もあり、順調にダンジョン内を進んでいく。

 俺たちミリオンズにそれほど消耗はない。

 サリエのMPが少し消耗気味なぐらいだ。

 彼女は、治療魔法で同行の冒険者たちの治療をしてくれているからな。


 そして、しばらくして。


「……むっ!? ずいぶんと開けた場所に出たな」


「そうですね。ここが4階層の最奥でしょうか」


 ミティがそう言う。


「そうみたいだね。見て、あそこに一際大きなゴーレムがいるよ」


 俺は、アイリスが指差した方向を見る。


「確かにずいぶんと大きなゴーレムだ。名付けて、ギガントゴーレムといったところか」


 全長3……いや、5メートル以上はあるか。


「あれほどのサイズのゴーレムは見たことがありませんわ。確かに、ここがダンジョンの最奥のようです。ここを突破すれば、ファイアードラゴンの封印の間に行けるかもしれませんわ」


 リーゼロッテがそう言う。


「よし……。みんな、準備はいいな。いくぞ!」


「はい!」


「りょーかい!」


「わかりましたわ!」


「「「おうともよ!!!」」」


 ミティ、アイリス、リーゼロッテ、そして他のみんなやトミーたちがそう言う。

 俺たちは、大広間に足を踏み入れる。


 ギガントゴーレムは動く気配がない。

 魔力切れや故障により、このまま動かないというパターンもあり得るか?

 それなら、俺たちは楽にここを突破できる。


「ピピッ! 侵入者を観測しました……。収集した戦闘データは解析済み……フィードバック完了」


 そううまくはいかなかった。

 範囲内に足を踏み入れたら、それを検知して動き出す感じだったようだ。


「ピピッ! ゼータナイン、戦闘を開始します」


 ギガントゴーレムの個体名称はゼータナインか。

 やつの目に光が灯る。


「ミティ! 投擲で先制攻撃だ! あのゼータナインとやらにぶちかましてやれ!」


「わかりました!」


 ミティがアイテムバッグから巨大な岩を取り出す。


「ギガント……」


 ミティが闘気を開放し、巨大な岩を振りかぶる。


「メテオ!!!」


 猛烈な勢いで巨石がゼータナインのほうに向かっていく。

 ドガン!!!

 ゼータナインはよけるそぶりを見せず、真正面からそれを受けた。


 だがーー。


「わ、私の投擲を受けて無事だなんて」


 ミティが驚愕した表情でそう言う。

 ゼータナインはまだピンピンしている。


「だいじょうぶだ。ちゃんと効いているはず……。リーゼロッテさん、追撃を!」


「……氷の精霊よ。我が求めに応じ、氷の雨を降らせよ。アイスレイン!」


 ヒュンヒュンッ!

 氷の弾丸がゼータナインを襲う。

 これで少しはダメージを稼げていればいいのだが。


 ゼータナインは着々とこちらに接近してきている。

 ここからは近接戦だ。


「よし。気を引き締めてかかれ!」


 俺の号令を皮切りに、みんながゼータナインに向かっていく。

 ただし、トミーたち同行の冒険者は道中で疲弊している者も多い。

 主戦力は、俺たちミリオンズと蓮華だ。


「……従順なる土の兵士よ。我が求めに生まれ出よ。クリエイト・ゴーレム!」


 ニムが巨大なゴーレムを生成する。

 サイズ的にはゼータナインには一歩及ばないが、ジャイアントゴーレム級のサイズ感はある。


 ガシャン!

 ニムのゴーレムが一歩踏み出し、ゼータナインと対峙する。

 巨大ロボの決戦といった様相だ。


「い、いきます! アイアン・パンチ!」


 ドゴオン!

 ニムのゴーレムが鋭いパンチを放つ。

 そして、ゴーレム同士の激しい戦いが繰り広げられていく。


「やや劣勢か……」


 このゼータナインは、おそらくだが複数の術士がたっぷり時間をかけて生成したものだと思われる。

 ニム1人で短時間で生成したゴーレムで勝つことは、さすがに厳しそうだ。


「な、長くはもちません! 今のうちに追撃を!」


 ニムの言う通り、今が攻撃のチャンスだ。


「承知したでござる。四の型……斬鉄剣!」


 蓮華の鋭い斬撃がゼータナインの胴体を襲う。

 ザンッ!

 やつにそれなりに深いキズを負わせた。


「斬魔一刀流……魔皇炎斬!」


 出し惜しみはしない。

 俺の技の中で、瞬間攻撃力ではこれが最大に近い。


 ズバッ!

 蓮華がつけたキズに被せるように、俺の斬撃がゼータナインを襲う。

 やつの胴体のキズはさらに深まった。

 ここを起点に崩せるだろう。


「ピピッ! 収集したデータ以上の攻撃を観測……。早々に脅威を取り除くべし。リミットを解除……」


 ゼータナインが無機質な声でそう言う。

 ガシャーン。

 ウインウイン。

 ゼータナインの頭部が何やら変形していく。


「様子がおかしい……。みんな、一時離脱しろ!」


 俺の指示で、近接戦を仕掛けていたみんなが退避する。

 変形中に総攻撃を仕掛けるという手もあるが、少しリスクがある。

 見慣れない敵は、まずは見極めるほうが堅実だ。


 通常のゴーレムは土でできており、魔力で動く。

 だが、このゼータナインは少し様相が違うな。

 どちらかと言えば、機械で動くロボットみたいな雰囲気だ。


 ガシャーン!

 ゼータナインの頭部の変形が終わる。


「あ、あれはいったい……?」


「なんの目的があってあんなことを……?」


 ニムとモニカが怪訝な声でそう言う。


 フサッ。

 ゼータナインの頭部には、何やら球状の緑の物体が乗せられていた。


「あれはマリモかなあ」


 アイリスがそう言う。


「なるほど……。ゼータナインから、マリモゼータナインに移行したといったところか」


「ふふん。それで、目的は?」


「わからん」


 ユナの問いに、俺はそう答える。

 マリモゼータナインに関して、何もデータはないんだ。


「あんまりカッコよくないね! マリアは前のほうが好きだな!」


「ちょ、ちょっとマリアちゃん。今はそういう場面じゃないわ。おとなしくしていなさい」


 無邪気なマリアに、ユナがそう注意する。

 確かに、今はそんなことを言っている場合ではない。

 思わぬ変形に動揺したが、今は戦闘中なのだ。


「ダ、ダメです! もうもちません!」


 ドガーン!

 ニムのゴーレムがとうとう砕かれた。

 マリモゼータナインは、パワーが向上しているのかもしれない。


 自由になったマリモゼータナインが、こちらに攻撃を繰り出そうとしている。

 だが、その前にーー。


「全てを討ち滅ぼせ! プロミネンス・アロー!!!」


 シュンッ!

 風切り音とともに、ユナから矢が放たれた。


 闘気と魔力を込めた、強大な弓矢だ。

 大きな炎を纏っている。

 一矢だけではあるが攻撃範囲は広い。


 乱戦の中で使えば、みんなを巻き込む可能性がある。

 一時離脱していた今がいいタイミングだ。

 矢がマリモゼータナインを襲う。

 撃破には至らないが、やつのダメージは着実に蓄積しているはず。


「機械仕掛けのゴーレムには、雷魔法がよく効くって聞いたことがある。私の出番だね」


 モニカがそう言って、雷魔法の詠唱を始める。


「万物貫く雷の精霊よ。我が求めに応じほとばしれ。パラライズ!」


 バリバリッ!

 モニカの手から、電撃がほとばしる。


 パラライズは、集団戦において便利な魔法だ。

 直接的な攻撃力はないが、相手が麻痺している間に他の者で好き放題攻撃できるからな。

 それに、初級の魔法のため消費MPや詠唱時間も少なめだ。


「ピピッ! エラー発生。修復中……」


 マリモゼータナインの動きが大きくにぶる。

 パラライズの効力によって麻痺しているというよりは、電撃によって機械回路にエラーが出た感じか。

 まあ、どちらにせよ目的は果たしている。

 今がチャンスだ。


「豪・裂空脚!」


 ズガン!

 アイリスの強烈な回し蹴りが叩き込まれる。

 マリモゼータナインがよろける。


「ギガント・ホームラン!」


 ミティが豪快にハンマーを振り抜く。

 マリモゼータナインの巨体が、とうとう倒れ込んだ。


「ピピッ! エラー修復中……。損傷甚大……。アヴァロン防衛システムに深刻な懸念発生……」


 まだ活動を停止しないのか。

 ずいぶんとタフだな。


「タカシさん。ここはあれを使いましょう。ファイアードラゴン戦前の肩慣らしですわ」


「あれか。消費MPが多いが……。出し惜しみしている場合ではなさそうだな」


 俺とリーゼロッテは、合同水魔法の詠唱を開始する。

 最上級の水魔法であり、詠唱が長い。

 だが、何とかマリモゼータナインが起き上がる前に詠唱が終わりそうだ。


「「……契約によりて我に従え氷の妖精女王。生命絶える黄泉の冷気。我が敵を物言わぬ結晶に。エターナルフォースブリザード」」


 パキンッ!

 俺たちが魔法を発動した刹那、周囲の気温が急激に下がった。


 これは気温を下げる魔法ではない。

 対象を冷やす魔法だ。

 その余波で、周囲の気温が下がっているのである。


「ピピッ……。損傷が修復可能値を超えました。魔力枯渇……。アヴァロン防衛システム、停止……」


 最後に、マリモゼータナインの無機質な声が響いた。

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