【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1007話 『三日月の舞』のエレナ

公開日時: 2023年4月30日(日) 12:10
文字数:2,122

 俺はダダダ団のチンピラたちと敵対している。

 リーダー格のヨゼフを事故に見せかけた金的攻撃で戦闘不能に追い込んだり、大人しく金貨100枚の借金を肩代わりしたりと頑張った。

 だが、敵もなかなかにしつこい奴らだった。

 その程度では引き下がらない。


 他に良い策が思い浮かばず、俺は奴らにフルボッコにされる。

 そんなとき、助けに入ってくれたのが――


「改めて自己紹介するわ。私は冒険者のエレナ! Cランクパーティ『三日月の舞』のリーダーを務めているわ!」


 ――エレナだった。

 彼女は、チンピラたちに鋭い視線を向けると、堂々たる態度で言い放つ。


「あなたたち、『ダダダ団』は今すぐに解散しなさい! これ以上の狼籍は許さないわよ!!」


「なんだとコラァ!?」


「てめぇ、女だからって調子に乗るんじゃねぇぞ!!」


「その綺麗な顔をグチャグチャにしてやるぜ!」


 チンピラたちが一斉に叫んだ。


「あら、口だけは達者なようね……。でも、そんな脅しは私には通用しないわ! 私にはあの高名なハイブリッジ男爵の力があるのだから!!」


「なっ……! ハイブリッジ男爵だと!?」


「あ、あの『紅剣』の二つ名を持つ、Bランク冒険者の……?」


「奴がこの街に来ているってのか!?」


 チンピラたちが動揺している。

 Bランク冒険者と言えば、王家から重用されるレベルだ。

 高い戦闘能力を持つことは確定している。

 また、統治能力だったり部下や仲間の統率能力を合わせ持っていれば、俺のように貴族位を授与されることもある。

 ただのチンピラには荷が重いだろう。


(いやしかし……ハイブリッジ男爵ってのは俺のことだぞ? 俺はエレナと一応は顔見知りだが、男爵として会ったことはない……)


 俺は内心で首を捻る。

 俺が『三日月の舞』と会ったのは、これまでに2回ある。


 一度目は、俺がラーグの街からゾルフ砦に初めて移動する際に、隊商の護衛依頼で共に行動したとき。

 これは3年近く前の出来事だ。

 俺はまだDランク冒険者であり、当時からCランクであったエレナは格上の存在であった。

 名前を『タケシ』と間違われて覚えられた上、扱いがややぞんざいなのも仕方ないだろう。


 二度目が、王都からラーグの街に移動する際に、とある街の冒険者ギルドを幼女ラフィーナと訪れたとき。

 これは2か月ぐらい前の出来事である。

 俺は既に男爵かつBランク冒険者であり、ドヤ顔で出世を伝えようとした。

 しかしタイミング悪く彼女たちは依頼人に呼び出され、中途半端なところで会話が終わってしまったのだ。

 そのため、彼女は俺の正体がハイブリッジ男爵だということを知らないはずである。


(いや、そんなことよりも……。ハイブリッジ男爵がこの街に来ていることが、どこかから漏れてしまっているのか? 少しばかりマズイぞ……)


 ラーグからゾルフ砦を経由して、ここオルフェスまで……。

 俺はお忍びで行動してきたつもりである。

 目立つ行動は避けてきた。

 同行者はモニカとニムだけだし、ゾルフ砦ではヨゼフに殴り飛ばされても反撃しなかった。

 今も、無茶苦茶な論理で借金返済を迫るチンピラたちに対して、なるべく目立たないように対処している。

 にもかかわらず、なぜバレてしまったのだろうか……。


「あわわ……。ダダダ団はもう終わりだぁ……」


「あわわ……。秘密作戦は失敗かぁ……」


 エレナの言葉を受けて狼狽えるチンピラたち。

 そして、彼らと同じように俺自身も狼狽えてしまう。


「落ち着け、テメェら!」


 そのとき、リーダー格のヨゼフが大声で言った。

 どうやら、いつの間にか金的攻撃のダメージから回復していたらしい。

 彼の堂々とした声を受けて、チンピラたちが背筋を伸ばして落ち着く。

 ついでに俺も落ち着いた。


「ハイブリッジ男爵がこの街に来ているはずがねぇだろう! 奴は領地運営に忙しいはずだ! こんな辺境にいるわけがない!! そもそも、ミリオンズみたいな大人数が移動すればかなり目立っているはずだ!!」


 おお……!

 ヨゼフもたまにはいいことを言うじゃないか。

 その通りだ。

 ハイブリッジ男爵がオルフェスに来ているわけがない。

 俺のお忍び作戦は成功している。

 そのはずだ。


「そ、そうだぜ! それに、仮に本当にハイブリッジ男爵が来ていたとしても、奴は俺たちみたいなチンピラの相手はしないだろ?」


「むしろ、俺たちの味方になるに決まっているぜ! なにせ、奴は生粋の女好きらしいからな!!」


「そうだ! きっと俺たちの手助けをしてくれるさ!! 俺たちは女奴隷も手広く扱っているんだ!!」


 チンピラたちが騒ぎ出す。

 どうやら、俺のことを『女好きなエロ野郎』だと勘違いしているようだ。

 確かに間違ってはいないが……。

 女好きだからといって、女奴隷を扱っているマフィアの味方をするとは限らないだろう。

 むしろ、マフィアを潰すことで女奴隷たちを自由にして、その中で感謝の念を抱いてくれた人と愛を育む方がよほど運命的で素敵だと思う。


「おい、エレナとか言ったか? ハイブリッジ男爵の名前を出せば、俺たちがビビるとでも思ったか? マフィアを舐めちゃいけねぇ」


「ふん! 勝手に何を勘違いしているのか知らないけれど、私にハイブリッジ様の力があるのは本当のことよ。今から証明してあげるわ!!」


 エレナが叫ぶ。

 そして、彼女は懐から立派な杖を取り出したのだった。

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