【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1723話 虚空島の神

公開日時: 2025年4月20日(日) 12:10
文字数:895

「結界妖術は厄介だな。神に由来するものなら、なおさらだ」


 俺の言葉に、諦観と憂いが滲む。

 いくらこちらが力を持っていようと、神の領域にまで踏み込むには、それなりの覚悟が必要だ。


 大抵の藩に対しては、『最終的には俺が単騎で突っ込んでいけば8割方は何とかなるんじゃね?』という甘い考えを持っている。

 だが、虚空島だけは微妙だ。

 あまりにも情報が少ない。

 空に浮かんでいて潜入できないという物理的な事情に加え、住んでいるのが天上人とかいう偉そうな奴らで、情報統制がされているという事情もある。

 それに加え、神とやらが結界の構築に加担しているのであれば、もはやお手上げだ。


「……私が行く……」


 場の空気を切り裂くように、控えめだが確かな声が届いた。

 驚いて視線を向けると、桔梗が静かに立ち上がっていた。

 その小さな体からは想像できない芯の強さが、淡い灯火のように漂っている。


「桔梗が? ……おいおい、まだ情報が少なすぎる。俺でさえ単騎特攻は躊躇する地なのに、桔梗を行かせられるわけがないだろう?」


 思わず言葉が荒くなる。

 守りたいという気持ちと、信じたいという気持ちが拮抗していた。


「……ん、大丈夫。神の存在を探るだけだから……」


 彼女の声は小さいが、はっきりと届く。

 曖昧な微笑と共に口にされたその一言には、どこか抗えない力があった。


「ええっと?」


 俺は思わず目を細めた。

 桔梗の頑張る意志は伝わってくる。

 だが、詳細が掴めない。

 彼女は口数が少ないタイプだからな。

 日常生活においては特に問題ないし、親睦を深めるには肉体的なスキンシップという手段もあるのだが……。


「……虚空島の下に広がる、山脈地帯。そのどこかに、神を祀らった神社や迷宮がある……かもしれない。私はそれを探すだけ……」


 その声には波紋のような余韻がある。

 言葉のひとつひとつが、静謐な空気を押し分けるようにして発せられた。

 石のように確かで、重く、心の奥底へと沈み込んでいく。

 目の前の人物がその言葉にどれほどの覚悟を込めたのか――それを察した瞬間、俺は思わず息を呑んだ。


「ふむ……」


 低く返したその声は、思考の深淵から這い上がってきたものだった。

 俺は短く目を閉じ、思索に沈む。

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