【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1014話 止めてくださいよ!

公開日時: 2023年5月7日(日) 12:26
文字数:1,747

 サーニャちゃんが、床の片隅にとある液体を見つけた。

 それは、昨晩の『エクスプロージョン』の残滓だ。


「にゃぁとしたことが、掃除漏れを見つけてしまいましたにゃ……。お客様、申し訳ありませんにゃ……」


 サーニャちゃんがシュンとする。

 彼女は真面目な良い子のようだ。


「いえいえ、こちらこそすみませんでした。元はといえば、俺が汚したものです。俺が拭きますね」


「いえ、にゃぁがやりますにゃ! お客様はゆっくり休んでいてくださればいいのですにゃ」


「そんな、悪いですよ。ほら、俺のこのタオルで拭きますから……」


 俺はベッド横に置いてあった自分のタオルを手に取り、それで濡れた箇所を拭こうとする。

 だが、それを見たサーニャちゃんが素早く動いた。


「させませんにゃ! これぐらい……手でパパッと……」


「えぇっ!?」


 俺よりも先に汚れ地点に手を伸ばしたサーニャちゃん。

 彼女は、そのまま素手で床をこすり始めた。


「ちょ、ちょっと待ってください! 手でなんて、汚いですよ!!」


「あっ、ごめんなさいですにゃ……。確かに、にゃぁの手で拭いたぐらいじゃきれいになりませんにゃ。逆に汚くなっちゃうですにゃぁ……」


 サーニャちゃんがそう言う。

 違う、そうじゃない。


「そうではなくて! さっちゃんさんのきれいな手が――」


「にゃぁのことですかにゃ? 大丈夫ですにゃ! 床は普段からちゃんと掃除しているので、そこまで汚くないのですにゃ!」


「いや、ですからその液体が汚くて……」


「え? これのことだったのですにゃ? 汚いものとは思っていなかったのですにゃ。これはいったい、何なのですにゃ?」


 サーニャちゃんが小首を傾げる。

 やはり、何もわかっていないようだ。

 マズイぞ……。

 どうにか誤魔化さないと……。


「何かわからないものを、手で拭いたのですか?」


「朝に掃除した感じだと、危険なものではないと思ったのですにゃ。危ないものは、触っただけで痛かったり、凄い匂いがしたり、色が変わっていたりしますからにゃ」


 サーニャちゃんが言う。

 どうやら、彼女の経験則からの答えらしい。


「なるほど……。しかし、いくら何でも無防備過ぎでは……?」


「そうかもしれませんにゃ。でも、にゃぁはこう見えても好奇心旺盛で、怖いもの知らずな性格をしているんですにゃ」


 確かに、彼女は度胸がある方だと思う。

 いくら両親が遠くに行ってしまったからといって、一人で宿屋を切り盛りしようとは思わないだろう。

 しかも、ダダダ団の件では、俺が駆けつける前の時点からチンピラと口論していたのだ。

 普通の少女なら、怖くて震えて動けなくなるところだろう。


「それで、この液体の正体は何なのですにゃ? 危険なものではありませんにゃ?」


「はい。確かに、それは危ないものではありませんが……。ええっとですね……」


 俺は、どう説明したものかと頭を悩ませる。

 まさか、俺のアレだとも言えないし……。


「ふむぅ……。お客様は、この液体についてご存じのはずですにゃ! にゃぁに教えてくれないのは、ずるいですにゃ! にゃぁだって知りたいのですにゃ!」


「しかし――」


「教えてくれないなら、もういいですにゃ! にゃぁが自分で当ててみせますにゃ!!」


 サーニャちゃんがムキになる。

 好奇心旺盛な性格というのは、本当のようだ。


「いったいどうやって当てるつもりなのです?」


「それは――こうしますにゃ!!」


 ペロッ。

 サーニャちゃんは、自分の手を舐めた。

 そこには当然、先ほど拭いたばかりの液体が付着していた。


「なっ!? 何を……!?」


「ふむふむ……。にゃるほど。口にすると、改めて独特な匂いが鼻を刺激しますにゃ。イカ臭いというか……。味は――苦くて、しょっぱいような、不思議な味なのですにゃぁ。にゃぁは嫌いな味ではないのですが、美味しいとも思いませんにゃ」


「ちょ、ちょっと……。止めてくださいよ!!」


 何の羞恥プレイだ。

 こんな食レポを聞かされるとか……。


「にゃ? よくわかりませんが、お客様の顔が真っ赤になっていますにゃ! こうなったら、意地でもこの液体の正体を当てて――」


「止めてくださいよ!!!」


 俺が再度、強く制止する。

 今度は言葉だけではない。

 彼女の手を掴んで無理やり止め――


「あっ」


「にゃんっ!」


 俺はベッドの上でバランスを崩す。

 そして、サーニャちゃんに覆いかぶさるように倒れ込んでしまったのだった。

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