【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

896話 フレンダvsブラックタイガー

公開日時: 2023年1月8日(日) 12:27
文字数:2,282

「フレンダ、本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ~。でも、もしものときは代わってね~」


 フレンダは、まるで散歩にでも行くかのような気軽さだ。

 相手の強さが分かっていないのか?

 ……いや、それはないな。

 彼女はBランク冒険者なのだから。


「ああ、分かった。言ってくれれば、すぐに助けに入ろう。即死さえ避けてくれれば治療もできる」


「よろしく~」


 むしろ、自分の強さに絶対の自信を持っているがゆえの態度か。

 スキルレベルは低めだったが、何か特殊な戦闘技法を持っているのかもしれない。


「グルルル……」


 ブラックタイガーは、ゆっくりと近づいて来る。

 距離が詰まるにつれて、次第に威圧感が増していくのが分かった。

 しかしフレンダは全く動じていない。

 俺、そしてフレンダの取り巻き二人は、少し離れたところで様子を見守る。


「あは~。ブラックタイガーなんて、フレンダちゃんの前では大したことないでしょ~」


「ガウッ!」


 挑発するようなフレンダの言葉に、ブラックタイガーが反応した。

 そして、その巨体には似合わないスピードで突進してくる。

 速いな。

 さすがは災害指定生物といったところか。

 だが――


「【恋速移動】」


「ガフッ!?」


 フレンダが一瞬でブラックタイガーの背後に回り込み、強烈な蹴りを背中に叩き込んだ。

 ブラックタイガーは吹っ飛ばされ、木に激突する。


「え……?」


 俺は目を疑った。

 凄まじい早さだったからだ。


「あ、あれがフレンダ姉さんの移動術……!」


「久しぶりに見ました……!」


 取り巻き二人が、驚いたような声を上げた。

 この様子だと、普段はあまり使わない技のようだな。


「グルルゥッ!」


 だが、ダメージはあまりなさそうだ。

 ブラックタイガーはすぐさま起き上がり、怒りの表情を浮かべる。


「あは~。ギルドの情報通りじゃん。外皮が固いんだってね~」


 フレンダは余裕の笑みを見せた。

 ブラックタイガーは、再び彼女に襲い掛かる。

 今度は先ほどよりも更に速く、鋭い爪を振りかざす。


「お~っと~」


 フレンダはひらりと身をかわすと、すれ違いざまに再び蹴りを叩き込む。


「ガルァアアッ!?」


「まだまだいくよ~。【恋速攻撃】」


「ギャウンッ!!」


 今度は腹だ。

 ブラックタイガーは、苦痛の声を上げながらもなんとか耐えた。


「しぶといな~。でも、群れで行動するっていうホワイトタイガーなんかよりもやりやすい相手だよね。単体なら、いくら固くてもフレンダちゃんの相手じゃないよ~」


 ホワイトタイガーが群れで行動する?

 俺がかつて戦ったのは、単独のホワイトタイガーだったが……。

 あれは、まさかレアケースだったということか?


「グウウ……」


 ブラックタイガーの目つきが変わった。


「ん? どうしたのかな? 怒ったの~?」


「ガオオォオオッ!!」


 次の瞬間――

 ブラックタイガーの身体から、炎が噴き出した。


「えぇ~!?」


「な、なんですか! あれは!!」


 取り巻き二人も驚いている。


「くっ……」


 これには、たまらずフレンダも防御姿勢を取った。

 固い外皮や火魔法の情報はあっても、身体から物理的に火炎を放出するとは想定していなかったらしい。


「あは~。やるじゃん。でも、フレンダちゃんだって負けてないよ~」


 そう言うと、彼女は両手を天に掲げる。


「【恋心解放】」


「む? あれは……」


 彼女の周囲に無数のハートが浮かび上がった。


「愛と勇気と希望の名の元に、いっくよ~。【ビューティー・セイント・アロー】!」


 彼女がそう呟いた直後、それらのハートが次々とブラックタイガーへと飛んでいった。

 それらはブラックタイガーに触れると、爆発する。


「グギィイイッ!?」


「あは~。フレンダちゃんの必殺技だよ~」


「え、えげつないな……」


 俺は思わずそう呟く。

 だが、フレンダは戦闘態勢を解いていない。


「あは~。でも、まだ終わらないみたいだよ」


「なに?」


 見れば、確かにブラックタイガーはまだ生きていた。

 しかし、全身がボロボロになっている。


「グルルル……」


「あは~。まだやる気なの~?」


「グルルルルルル……」


「うーん……。これ以上は弱い者イジメになっちゃうんだけどな~」


 フレンダは困ったように頭を掻く。

 そのときだった。


 コロン……。

 何かが、ブラックタイガーの前に転がってきた。


「え……?」


「あ……」


 それは、巨大な魔石だった。

 街で上手く活用すれば、発展に大きく寄与するだろう。

 だが、今の局面でこれは……。


「ガルルルルルッ!!!」


 ブラックタイガーは、興奮した様子で魔石に飛びついた。

 魔石には、一部の魔物を癒やしたり強化したりしてしまう特性を持つ。

 瀕死状態であったブラックタイガーが本能的にそれを口にしてしまうのは仕方のないことだった。

 そして――


「グルル……グルル……」


 ブラックタイガーが、その巨体を膨らませ始める。

 小さな魔石であれば、傷を多少癒やす程度で終わっただろう。

 中くらいの魔石であれば、せいぜい傷が全快になる程度か。

 だが、今回の魔石は大きかった。

 全快になった上で、強化までされてしまったのだ。


「おいおい……マジかよ……」


 俺は唖然とした。


「あは~。こりゃヤバいかもね~」


 フレンダは苦笑する。

 取り巻き二人は、完全に腰を抜かしていた。


「よし、ここからは俺も戦おう」


 俺はそう提案する。

 彼女の戦闘技法は十分に見せてもらった。

 スキルだけでは説明しきれない、特殊な戦闘技法のように感じられた。

 あとは、落ち着いたところで口頭で解説してもらえばいい。


「あは~。もう少し待っててよ~」


「……なんだと?」


「久しぶりに、全力を出せそうなの。こんなに倒しがいのある魔物、簡単には譲れないよ~」


 彼女は瞳孔の開いた目でブラックタイガーを見つめながら、楽しそうにそう言ったのだった。

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