【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1715話 レオ・ボンバー

公開日時: 2025年4月12日(土) 12:10
文字数:1,036

「再生能力……? いえ、違いますね。これは――蓄熱型ですか」


 一瞬の沈黙ののち、ミティは目を細める。

 じっと見つめたのは、まるで火山のように光を放つ獣の背。

 そこに込められていたのは、生命力ではなく、蓄積された妖力だった。


 その立派な体毛に、火の妖力を貯蔵していたらしい。

 燃えさかる意志のようなそれは、外付けのバッテリーのごとく、再戦の力をその身に供給していた。

 言わば、最大HPや最大MPが底上げされているような状態だ。


 しかし、それは治癒の力ではない。

 消耗させれば、いずれは確実に崩れる。


「ゴアアアアァッ!!」


 突如、妖獣が咆哮とともに周囲へ炎を撒き散らす。

 空気が破裂し、あらゆるものを焼き尽くそうとする熱波が波紋のように広がった。

 ミティは即座に動きを止め、炎の流れに逆らわず、その場で身を伏せた。

 彼女の表情に焦りはない。

 むしろ――


「やはり、それが狙いですか。妖獣とはいえ、学習能力は高いようです」


 妖獣は、動きを止めた彼女を狙って突進してきた。

 圧倒的な速度と質量、まさに猪突猛進。

 しかしミティは、その迫力に怯むどころか、むしろ笑みを浮かべていた。


「お見事。いい作戦です」


 その言葉は挑発ではなかった。

 純粋な称賛――だが同時に、それは対応する一手を備えている者の声でもあった。


 炎が舞う。

 牙が迫る。

 しかし、ミティの瞳は静かだ。

 恐怖に揺れることはなく、ただ冷静に、冷徹に戦況を見据えている。

 その手には、重量級のハンマー。

 彼女は軽やかにその武器を操り、迫る獣の牙を正確に打ち砕いた。

 金属が火花を散らし、衝撃が空間を震わせる。


「ありがとうございます。おかげさまで、ひとつヒントをいただきました」


 彼女の声が、夜の静けさの中に落ちた。

 湖面に映る顔には、柔らかい笑み。

 だがその奥底には、燃え上がる意志があった。

 彼女は軽く獣を弾き飛ばし、距離を稼ぐ。

 そして――


「レオ……ボンバー!!」


 その名を高らかに宣言し、彼女はハンマーを振り下ろした。

 妖獣の動き、その戦法、その性質。

 すべてを見極め、良いところを学習した上での改良技。

 ビッグ・ボンバー改め、レオ・ボンバー。

 その衝撃は大地を割り、空気を断ち、重い雷鳴のように炸裂した。


「ガッ!? グ、グルルゥ……! ウウゥ…………」


 巨体が、音を立てて崩れ落ちる。

 その衝撃は地面に波紋のような震動を走らせ、やがてそれすらも土が吸い込むように消えた。

 獣の鼓動が止んだことを告げる静寂が辺りを満たしていく。

 だが、ミティはその場に立ち尽くしたまま、決して構えを解こうとはしなかった。

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