人類戦線

さむほーん
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第三十九話 寄生

公開日時: 2022年10月18日(火) 16:00
文字数:2,090

「ん?何だ?神柱くん」


話しかけると、そういう風に相手してくれた


「いや……僕の体から取ったデータを元にした論文、書けました?書けてたら中身を一応知りたいんですけど……」


そう聞くと、所長は思い出したように答えた


「ああ!あれか!実は纏まった結果を出せたんだ!」


そう言って、自分の懐から端末を取り出し、それを操作して僕に見せる


そこには、論文の寄稿者名として長崎千尋と表示されていた


「ここで書いてあるように、装備は私達の体組織と密接に絡み合っていてな……」


末恐ろしいスピードで捲し立てる


「あの……ちょっと落ち着いて下さい……それで、つまり……どういうことですか?」


出来るだけ纏めて話して貰わないと、僕が理解できそうに無い


「まあ簡単に言うと、装備が私達の体に寄生している、と考えた」


寄生……?


「随分と怖い言葉が出てきましたね……」


まあ、あくまで言葉の綾で、実態を表している訳では無いんだろうけど


「まあ、実際には寄生というよりの方が近いのかもしれないがね」


「共生……ですか」


寄生と共生ってイメージとしては随分違うけど、実際に言葉としてはどう違うんだろう?


共生の場合は互いにメリットが有る、みたいな感じなのかな?


「ああ、そうだ。装備が私達に与えるプラスの影響としては主に基礎能力の上昇だ」


基礎能力……


つまり、身体能力や計算速度とかが上がるってことで良いのかな?


僕の場合は……確かにちょっと足が速くなってた……気がする


「基礎能力が上がる原理は……」


「あ、それは説明してもらわなくて大丈夫です……ただ、僕の血液とかを検査した結果をどう使ったのかだけ知らせてくれれば大丈夫です」


こういう専門知識が絡むことは気になったことを一々聞いていたらキリが無い


ある程度は分からないものとして割り切るしか無いだろうね


「ああ、そちらを知りたかったのか。とは言っても、君の体のデータはあくまで実験の結果を確かめるものとして使わせてもらっただけだからね……具体的にどう使ったかと言われると、どう答えて良いものか……」


まあ、確かに最終確認じゃ無かったらあんな短期間で論文なんて出せないか


あ、でも僕の体のデータについてもう一つ聞いておかないといけないことが有ったんだった


「そういえば、僕の体の検査についてもう一つ聞いておきたいことがあるんですけど……あの、適合率?つまてなんですか?」


それを聞くと、所長は少し固まってから言葉を返した


「どうして知っているんだ?」


理由?


でも、普通に書いてあったんだけど……


「どうしても何も、検査の結果に書いてあったじゃないですか。いきなり意味の分からないパラメーターが出てきたんでちょっとビックリしましたよ」


そうか、書いていたかな……ということを呟いてから所長は僕に【適合率】について話し始めた


「この適合率という数値は名前の通り持ち主――いや、この場合は宿主と言った方が良いな――の肉体と融合している程度を数値化したものだ」


融合している程度……か


具体的に何を基準にしているかは聞いても分からないだろうから放置しておこう


「それで、僕の数値は高い方なんですか?それとも、低い方なんですか?」


そこは少し気になるな


「まあ、絶対評価で行くと高いね。相対評価で考える方は他のサンプルが揃っていないから今は無理だろうね」


あれ?データを取ったのは僕だけなんだ


実験なんだから他の人のデータも取った方が良いと思うんだけどね……


まあ、その辺りは実験者である所長に任せるけど


「それが上がり過ぎることによるデメリットとかは……何か有るんですかね?」


結局気になるのはそこなんだよ


僕に何かデメリットが有るのならちょっとこれからの自分の行動を変える必要が有りそうだけど……


「現在分かっている範囲では、無い。ただ、まだ装備と人体の関係に関する研究はあまり進んでいないのが実情だからね……」


今分かってる範囲では、かぁ……


まあ、仮に何かデメリットが有ったとしても余程強烈なもので無い限りは装備の使用は躊躇わない方が良さそうだね


一応メリットも有るみたいだし


ん?そういえば、共生ってことは装備の方にも何かメリットが有るのかな?


そこも気になったので、聞いてみた


「その……装備によって僕達に与えられるメリットは何となく分かったんですけど、装備が僕たちから得ているメリットって何なんですか?」


それを聞くと、所長は少し困った顔をした


「実を言うと……その研究はまだ目処が立っていないんだ。そもそも、装備側の価値判断の基準が分からないからまともな研究ができないくてね」


なるほど、装備にとって何がメリットで何がデメリットかが分からない、と


まあ、装備との意思疎通が出来るわけでも無いしね〜



生き物だったら自信の生存にプラスとなることがメリット、っていう感じで簡単に分けることが出来るんだろうけど


装備ってそもそも生きているのかどうかも分からないからその判断基準も正しいのかどうか分からないし


まあ、これからも研究していくみたいだし、ちょっとでも分かれば今の時点では大丈夫でしょ


エルサレム行きまでに何か分かったら伝えてもらうように言ってから僕はその場を去った

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