人類戦線

さむほーん
さむほーん

第二十六話 変異

公開日時: 2022年9月21日(水) 16:00
文字数:2,082

「なるほど……確かにこれは……」


いけるぞ


やはり装備を多用している人間の遺伝情報ゲノムには大きな変化が起こっている


これは、単純に塩基の配列が変わっているという話では無い


そもそもの塩基のが増えているのだ


簡単に言うと、別の生物に生まれ変わっている


しかし、通常の場合はそんなことをすれば体内の免疫細胞が即座に変化した細胞を壊し、『生まれ変わった』細胞が残ることは無い


だが、今回は残っているということは、なにか別の要因も関係しているということになる


「その予測もある程度は立てているが……」


その確認のためには血液から得られる情報だけでは不十分だ


別のを被験者に試せば確認できるが


血液を採取した後であり、体力の弱っている相手に行えることでは無いな


明日にでも試せるかどうか聞いてみよう


「しかし……増えた配列以外にも妙な所が有るな……」


塩基の増加に比べれば些細な問題だが……


一応そちらの方も確認しておくか


「さて、私もそろそろ寝るか」


こうやって研究の途中でも睡眠を取らないといけない事態に陥ると、睡眠など必要無い単細胞生物が羨ましく思えてくるな


「久しぶりに隣の部屋で寝るか?」


昨日もした問いをもう一度行う


少しだけ考えるが、隣の寝室で寝るとなると色々準備が必要になるだろうということに気が付き、今日もここで仮眠を取ることに決めた


「そうと決まれば、寝るまでの時間はの解析に使うとしよう」


そうして、いくつかの金属片らしきものを取り出す


これが一体何なのか……


そこを調べるのも面白そうだな


「ま、何にせよやることは多い。暇するとこは無さそうだね」


作業に取り掛かろうと部屋を移動するとき、神柱くんが居る部屋の方から私を呼ぶ声が聞こえた


「何だい?」


その部屋に入ってみると、神柱くんはベットメイキングをしている最中だった


「いや……布団を敷く派なのかベット派なのかを聞くのを忘れてしまって……どっちですか?」


……?


ああ……つまり、私の分まで準備をするということが


「助かるな。ちなみに、私は地面に布団を敷くタイプだ」


「あ、分かりました〜。ところで、僕の渡した何か情報出てきそうですか?」


「それについては、今から調べに行くところだ。結果が出るまでは少し時間がかかると思っておいてくれ」


髪柱くんに伝えるより先に論文として出すことになるであろうと言うことも伝えてその場を後にする


「まずは元素分析からだ」


装備の動力源などはまだ分かっていないが、素材については今までの研究である程度分かっている


その素材の殆どは現在地球上に存在しない原子や人類によって作られたものの特定の放射性同位体を持つことが出来なかった原子によって構成されていた


そのお陰で超アクチノイド元素についてかなり研究が進んだようだが、今まで存在しなかった原子が現れたことでかえって不明な部分は増えたようだ


さらに、今でも世界の様々な研究機関、特に中国とEUにある機関では、新種の安定原子の発見が相次いでいるらしい


「さて、この金属片はどうなるか……」


そうして、私は金属片を少しだけ、本来はこの研究所には無い上、どう考えてもこの小さな研究所内には収まらない電磁式荷電粒子加速器サイクロトロンに投入した


結果が出るまで栄養ドリンクを飲みながら待つ


「しかし、やはり装備の力は偉大だな」


複数人の持っていた装備の合わせ技とはいえ、空間を歪ませて直径数キロに及ぶ装置を10m立方の部屋の中に収めてしまうとは……


ますます原理が気になるな


というか、原理を解明しないと既存の法則が合っているかどうかすら分からないので他の研究に移れない


「後は時間を歪ませる装備が有れば研究速度が大幅に上がるんだが……」


今のところ、の時間を歪ませる装備は見つかっていない


まあ、そこはもう割り切って待ち時間に他の作業をしよう


暫く資料の整理を行っていると粒子の衝突が終了したことが分かった


そこで、一度確認してみる


「……大体予想した通りの結果になったな」


だが、予想の範囲内なのが嬉しいような、つまらないような……


まあ、上手く論文が書けそうなんだ。良かったということにしておこう


「よし。そろそろ寝る準備に入ろう」


とは言っても、神柱くんが準備をしてくれているお陰で私がするべきことというのは少いんだが


それこそ、歯を磨いたりシャワーを浴びたりするといった私自身の準備しか……


「……ああ、そうだ。栄養の補給もしておかないとな」


懐にある私の装備バッグから特殊なエナジードリンクを二本取り出して素早くそれを飲む


これで丸一日は何も摂取しなくて大丈夫な筈だ


歯磨きを済ませて自分の休憩室に入る


そこには、見事な様子で床敷きの布団が用意されていた


「おお、これは素晴らしいな」


そうしてそのままシャワールームに入る


シャワーを浴びながら、今後の予定について考える


取り敢えず、早いところ論文を書き上げないとな


そうしないと、同じ内容を他の誰かが発見して先に提出されるかもしれない


やはり研究発表において速さが重要だというのは変わっていないからな


スピード感を大切にしながら確実な研究も進めなければ


そうして、シャワーを浴びた後は普通に布団に潜った

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