「それでは、今回のことについて、報告を始めよう」
保健室で城崎がそう言った
「それで……私はなぜここで話を聞いている?参加してないから話を聞く必要は無いと思う」
弘岡がそう言う
けど、ちゃんと参加する理由は有ると思うんだよね
だって、弘岡は今回僕たちが攻撃している間、体を無理に動かして学校の防衛をしていたらしいからね
そのお陰か、建物等の物的被害に対して人的被害はかなり抑えられている
まあ、装備や人材を集めるのは大変だからね
その被害を減らしてくれたのは城崎も感謝してるんじゃないかな
「とは言え、話すことが多すぎて何から話していいのか分からないな……」
「取り敢えず、相手のボスを倒したことを話せば良いんじゃない?まだ向こうの制圧をしたわけじゃないけど、ここには元々向こうに居た人も居るから、内情知り放題で実質勝ちでしょ」
自分で言っておいて何だが、かなり楽観的な見通しだな……
この考え通りに行ったらかえって引くぞ……
「……そういえば、隣りにいる人は誰?城崎達が向かった時に一緒に居たのはこの人じゃ無かったはず」
そうか。弘岡は篠原さんが死んだことを知らないのか
「ああ、この人とは向こうで会ったんだ。実は官邸から帰る途中?に助けてもらってね」
僕に合わせるよう、伏原会長に目配せをする
「うん。その時に篠原クン――君の言ってる人だね――が死んじゃってね……」
「ふ〜ん……分かった。蒼生が無事ならそれでいい」
どうやら、その話も弘岡の興味はあまり引かなかったようだ
じゃあ何で聞くなよ……
「あ、そういえば、須斎の不調ってどうなったの?もう治った?」
当てつけと言えば良いのか、露骨に須斎のことについて話す
「そうそう。なんか結構大変そうだったけど、大丈夫なのかな?」
「いや、多分大丈夫だ。今は部屋で装備の状態を確認しているところだろう」
空気を読まない城崎はそんなことを言ってくれる
へぇ……とういか、須斎ってもう部屋に戻ってたんだ……
てっきり隠れてこの場に居るものかと……
それで、部屋に居るんだ……
「あれ?情報共有とかは良いの?」
ここに居なければこの話にも参加できないっていうことになる
須斎ってそこそこ重要な人じゃなかったっけ?
「大丈夫だ。あいつには後で必要な情報は伝えておく」
そっか……なら一応大丈夫……なのかな?
画面越しとかでも、実際に聞いた方が良いような気がするんだけど……
そうして暫く、情報共有が続いた後に城崎がこう言った
「当分の間は足場固めに注力しないとな。それに、他の勢力の様子以外にも気になることがある」
そう言って、城崎は小さなバケモノの死体を持ってきた
「これが、言っていた【バケモノ】?サイズは人と大きく変わらないみたいだけど……」
予想とは違うサイズに驚いているような反応を見せる弘岡
あれ……さっきの話の中で人間と同じサイズって言って無かったっけ……?
もしかしたら、僕か弘岡のどっちかがでっかいバケモノと勘違いしてるのかもね
まあ、それは関係ないや
まず、僕がそのバケモノの皮膚を触ってみる
「おい!神柱!」
「え?」
城崎が叫んだけど、その頃には僕はもうバケモノの死体に触れていた
でも、特に何も変化が起こらない
精々、やたらとカサカサしているのが分かる位だ
それと、この皮膚はやたらと固いことは分かった
これは……長崎所長のところに回そう
あの人の居る研究所は確か再生医療を専門にしている筈だから、こういう謎の生物について何か知っているかもしれない
この会議が終わったらこれを連れていけば良いんじゃないかな?
「神柱……何か体に違和感等は無いのか……?」
城崎が聞いてくるけど、特に違和感は感じないかな……
「いや……分からないけど……」
でも、なんというか……肌がかぶれたときと似たような感覚は……ないでも無い
「まあ……特に被害がないなら構わない……それに、安全確認をする手間も省けたしな」
そこで、弘岡が口を挟んでくる
「ところで、それはこの後どうする?何処かの研究機関にでも持っていく?」
「ああ。研究所に持っていく。幸い、その手の施設との伝手は有るしな」
やっぱり皆考えることに大きな差は無いのかな……
城崎の言っている伝手は多分所長のことだよな……
じゃあ、会長に話を通してもらった方が良いかな?
あの人と所長は前から知り合いだったらしいし、僕や城崎よりも交渉が上手くいくだろう
ここは、この中で伏原会長とあんまり悪い関係を築いていない僕が頼むべきだろうか
「ということで、伏原会長。お願いします」
「千尋姉さんに頼めっていうこと?……分かったよ。タイミングを見て聞いてみる」
取り敢えず、協力は取り付けることができた
「よし、じゃあ、これからの方針について話す」
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結果として、暫くの間は官房を制圧したことで得られた権限や動かせる機関などの把握に当たるそうな
つまり、現状把握ってこと
だとしたら、暫く暇になるのかも……
じゃあ、その間に「目」の確認を済ませておかないと
後は、まだ名前も聞いていないあの人に頼んで大きいバケモノもといデカブツの能力とかも確認しとかないとね
「やること、多そうだな……」
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