「思っていたより遅かったな」
「仕方無いでしょ?バスが全然無いんだからさ」
そもそも話してからそんなにすぐに着く訳が無いでしょ
やっぱり、今日の城崎はどこか変な感じがする
「まあ、構わない。それよりも、今すぐ話を始めるぞ。資料を出せ」
歩いて、生徒会室に着くや否や、城崎はそう話し始めた
「そんなに焦らないでって……ちゃんと有るんだから」
そう言って、僕はリュックから紙束を取り出す
ここにさっき官邸で手に入れた文書が入っている
「……今ここで開けた方が良いかな?」
今開けるとどこかで見られるかもしれないから、一応城崎の意志を確認する
「いや、その文書だけ渡してくれ。……原本なんだよな?」
「うん。これ以外に文書が無ければね」
さらに、僕が手に入れたこれが原本であることも前提になっているけど……
こういう機密文書は変なところから外にバレたりしないよう、コピーはそこまで沢山作らないと思う
「……なるほど、分かった」
そう言って、城崎は紙束を受け取った
「他に何か、連絡すべきことは有るか?」
暫く考えるが、特に思いつかない
「いや、大丈夫」
「分かった。じゃあな」
そう言って、城崎は学校の中に帰っていった
「……あ、久しぶりに院の方に行こうって言うの、忘れてた……」
最近、城崎もあんまり孤児院の方に来てくれなくなったからね……
院長がちょっと寂しそうにしていたのは、その辺も関わっていると思う
城崎のこと、僕の目から見ても明らかに可愛がってたからね
孤児院の院長としてはあんまり一人にばっかり目をかけるのもどうかとは思うけど
ま、どちらにしろ誘えなかったから関係無いんだけどね
「けど、この機会を逃したら次が何時になるか分からないんだよね……」
ただでさえ城崎はやることが多いのに、最近はそれに輪をかけて忙しそうだ
だから、あんまり気軽に誘ったり出来ない
まあ、良っか
今はやることが多いだけで、いつかまた三人で……
「……ああ、三人は無理なのか」
すっかり忘れてた
――――――――――――――――――――
「なるほど……つまり、政府……というよりは官邸の調査期間は事前にこのことを知っていた訳だ」
だが、だとしたら気になることがある
ここには、人の信じたものが具現化する現象について書かれている
恐らく、怪異が発生しているのも噂という形で人に信じられているからなのだろう
しかし、一つ説明のつかないことがある
あまりにも急激過ぎる
少なくとも俺の知る範囲では、装備が降ってくる前はそのようなことは起こっていなかった
何か他にも原因があると考えられるんだが……
「装備が降ってきたことによる変化……何か有るのか?」
もう一度詳しく調べてみるか
「確か、この辺りに……」
見つけた
必要になるかもしれないと思って用意させておいた個々人の人格分析と装備の関係性を纏めたものだ
他にも、持ち主の社会的な地位と装備にも何か関係があるのではないかと思い、調べさせてある
それは別の場所にあるから、今は人格分析の方だけ見ておく
これによると……なるほど
――――――――――――――――――――
帰り道、バスに乗っているけど、やっぱり乗客は僕以外居ない
……ちょっと寂しいな
せめて、もう一人くらい居ないものなのかな……?
まあ、人が居ても別に話す訳じゃあ無いけど
「はぁ……」
運転手しか居ないから、盛大にため息をつくことが出来るね
でもまぁ、取り敢えず本来の目的は達成できたんだし、良しとしよう
「それにしても、あの文書の中身、かなり強烈なことが書いてあったな……」
政治においては、決算の偽装とかよりも大事になりそうなんだけど……
いや、でもこんな状況になる前だったら、あれは只の厨二病患者の落書きと一緒か
こんな世の中になって、怪異の存在が有り得るっていうことが分かってから初めて意味のあるものになるんだし
それはそうと、これからどうしよう?
今日はもうやることが無くなっちゃったから、暇になった
一旦院に戻るか?
でも、戻っても特にやることが無いから暇なまんまだし……
あ、そうだ
「これについて話すのも忘れてた……」
ポケットから破片を取り出す
これがなんの破片かは分からないから、今のうちに調べておきたいなぁ……
よし、じゃあ次は研究所の方に行こう
研究所とは言っても、前まで芳枝ちゃんが居たところとは別だ
千尋さんがいる方だ
あっちなら、確か色々と装備に関する研究もしていた筈だ
元々は再生医療とかの研究をする場所だったけど、混乱期に装備について調べる設備を作ってそれで研究していたらしいから、今は両方の研究をやっているんだって
だから、僕の知る限りでは唯一の装備研究所だ
そこに持っていくというのが今のところは一番の解決策に思える
じゃあ、研究所は……こっちか
今のところはこのバスで大丈夫そうかな?
途中で乗り換えないといけないみたいだけど
研究所に着くまでには言いたいことを纒めておかないと……
まずは、この破片が装備なのかどうかを調べてもらおう
それから、他のところから落とし物として似たようなものが届けられていないかを聞いてみよう
後者の用事は研究所じゃなくて公的機関に行った方が良いのかな?
「よし、方針は決まったかな?」
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