人類戦線

さむほーん
さむほーん

第十三話 戦線展開

公開日時: 2021年1月15日(金) 16:05
文字数:2,216

 あいつら、うまくやってるかな


正直相手がどうな強さなのか全くわからないから念には念を入れて僕も最初から出たほうがいいと思ったんだけど


まあ、僕があとから駆けつける役に適任なのはなんとなくわかるんだよね


「抜刀」してしまえば数百メートルなら現実の時間にして1秒以内にたどり着けるし


その時のためにここから見張っておこう


「あれ〜、誰かいるじゃん」


「匡広《まさひろ》さんの言ってることも全て正しいというわけではないからな」


うん、この二人は誰かな


確か、匡広《まさひろ》っていうのは葉狩の名前だったっけ


っていうことはこの二人は葉狩の味方ってことでいいのかな


「君らは僕に何の用なの?」


すると、背の高いほうが答えた


「私達は匡広さんの命のもと、偵察を行う予定だ。そのため、少しそこをどいてくれないか?」


小さい方も、


「そーゆーわけ。今はアンタに用事は無いからそのまま帰っていいよ」


なるほど、そういう任務があるのか


しかも、こいつらは本心から葉狩に従っているように見える


最後に警告をして、それでだめなら決裂だな


「もし僕が、葉狩と敵対している人の部下のようなものだ、と言ったら」


心なしか、相手の目が細められた


そうだ、こちらを警戒しろ


今ここで僕がするべきことは城崎の作戦に邪魔が入らないようにしつつ、いつでも向こうに参戦できるようにすることだ


こいつらの意識をこちらに向けておけば邪魔しには行かず、僕は「抜刀」すればすぐにでも向こうに参戦できる


それよりこいつらが油断をしなくて良かった


仮にこちらを軽く見ているとすぐに襲ってくるだろうから、そこで消耗するのは避けたかった


つまり、現時点でもう、ここでの戦いにおける僕の目的は達成された、ということだ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


なるほど


こいつの情報は匡広さんから頂いていない


匡広さんが伝える必要もないと考えたのか、それとも匡広さんが掴みきれないほどの人物なのか


後者と考えて接した方が良さそうだな


(どうする、こいつは今潰して置いたほうがいいか?)


(とりあえず、変な行動起こさないんなら現状維持でいーんじゃね?)


(まあ、私達の目的はこいつを倒すことではなく、邪魔をさせないことだからな)


なら、こいつは見張っておくだけでいいだろう


予定ではもうそろそろ戦闘が開始するはずだ


ここから「例の場所」までは200m近くある


少なくとも匡広さんが奴らを倒すまでの時間くらいは稼げるだろう


するとその時、どこかから爆発のような音が聞こえた


「始まった、か」


目の前の人物もそういうところを見ると、どうやら匡広さんと敵対勢力である城崎達が戦闘を開始したらしい


なら、私達の任務はここからだ


(隆章、プランCで行くぞ)


そして、隆章がこくり、とうなずいたのを確認して私は計画通りの言葉を放った


「では、改めて自己紹ーー


だが、そのときにはもう話す相手はいなかった


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なるほど、そう防ぐか」


「貴様もまさかこの程度で俺を片付けられるとは思っておるまい」


気付いたときには葉狩はほとんど無傷で私達の目の前に立っていた


「城崎、どういうこと?」


それに、コンクリートの床が崩れているなんて


「ああ、恐らく一定周波数の音を当てて共振せることでコンクリートを壊した」


ああ、前に物理の授業でやった


「その対策も兼ねて鉄筋コンクリート製の床を使ったんだが、恐らく鉄筋も共振させて壊したんだろう」


なるほど


「私は今から何をすればいい?」


「攻撃を畳み掛けろ。今はこいつの装備の限界を知るのが最優先だ」


そう言われるが、既に刀身は硬化させてある


今はとりあえず、何でもいいから攻撃するのを優先にして、


蒼井の居場所を探る余裕を無くすために


縦横無尽に動くしかない


身体の負担は大きくなるけど、この方法を使えばどこに敵がいるのかを反響ではなく「視覚」で捉えようとするはず


そうなるのが、一番蒼井が活きるパターン


「そうか、その程度か」


そう言って葉狩は私に向かって右手を向けた


すると突然、私は蔓に持ち上げられた


「あれを食らうと即死だと思っておけ」


「っっ?!何がっ!?」


そう言って私はすでに砕け散った蔓の残骸を指差した


「確信は持てないが波の中で爆発させるとしたらマイクロウェーブによって水分子を振動させて熱を持たせた、とかか?」


「電子レンジってこと?!」


だとしたら蒼井が危ない!


「まあ、とは言っても無差別に打つことはないだろう。万が一反射で自分に当たったらあいつの身体が弾け飛ぶことになるからな」


「そう。なら、速く応援を呼んで」


今は少しでも戦力が必要


「ああ、あいつの注意が俺から離れたら呼ぶつもりだが、なかなか厳しそうだな」


「じゃあ、どうするの?」


そう訪ねた


このまま待っていては二人ともさっきの蔓のようになってお終いだろう


だが、城崎はそこまであせっている様子ではなかった


これは恐らく、「そういうこと」なのだろう


「ああ、もう手は打った」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


敵は3人か


城崎の攻撃は俺には届きそうにない


もう一人のチビも剣術は修めている様だが、警戒するほどの動きでもない


後はさっきから動いていない最後の一人に警戒しつつ二人を削っていけばいいだろう


そう考えている俺の前に急に一人が姿を現した


(何だ!?こいつは?!)


さっきまでここには誰もいなかったはず


それより、速く衝撃波で攻撃を


そう考えながら切られていく俺を



俺は少し離れた場所からただ一人で見ているしかなかった

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