「あ、来たわ」
なんというか……言葉では表せないんだけど、物凄く危険なものが近寄ってる感じがする
これが『おおいさん』なのかな?
思ってたよりヤバイかもしれないぞ……これ
もしかして、さっき調べてたときに見つけた【『おおいさん』は都市伝説の中では最強】とかいう言説は意外と合ってたのか?
ヤバイヤバイ……煽ったのは良いものの、対抗手段になりそうなお祓いとか全く知らないよ……
物理攻撃が効くのかな?
取り敢えず、相手を探さないと
「……あれ、かな?」
顔を七変化させて立っている人がそこには居た
えっと……あれは……起こってる、のかな?
正直良くわからないんだけど……
「お、おおお……」
すると、その人は呻き声?みたいなのを発し始めた
「どど、どうも、おおお……」
どうも?お……何て言ってるんだ?
「おおい……おお、おおい……」
おおい?『おおいさんです』って言おうとしてるのかな?
取り敢えず、いつでも加速できるように準備はしておいて、と
さあ、どうなる
「お、おおおおおおお!」
急に叫びだした?
それと同時に、屋根から弘岡が降ってきた
そして、そのまま『おおいさん』の顔に刀を突き立てる
しかし、『おおいさん』は体を捻って回避する
(あ……今のは人間にできる動きじゃないわ)
そうわかって、すぐに加速する
そのまま、相手に近付いて首に刀を突き刺した
これで死んでくれたら良いんだけど
少し離れて、弘岡も移動させてから解除した
「これで、何とかなったかな?」
相手を見ていると、『おおいさん』は足を地面に着けたまま海老反りになるように立ち上がっていた
「お……おお、おおいさん……で……」
体を震わせながら言葉にならない言葉を発している
(嘘でしょ……まだ動くの……?)
相手はゆっくりとこちらを向く
「お?」
あ、ロックオンされた
おおいさんかこちらに向かって走ってくるが、その手が僕たちに届く前に、弘岡が銃を抜いた
銃弾がおおいさんに届いて、勢いで後ろに吹っ飛ぶ
そして、弘岡も吹っ飛ぼうとするが、僕が頑張って抑えつける
この銃、反動が凄いけど、どうにかしてくれないのかな?
まあ、元々対戦車砲だから腰撃ちとか論外な物だっていうのは分かるけど
「大丈夫〜?」
「ん。無傷。」
そう言って、弘岡は結晶化した腕を見せた
どうやら、弘岡は体を結晶化、もしくは硬質化出来るらしい
実は前もちょっと使ってたらしいんだけど……あんまり知らないな……
「でも、あっちもまだ動いてる。頭は飛ばしたのに」
え?嘘でしょ?
そう思っておおいさんが吹っ飛んだ方向を見てみると、確かに頭の無い人影が動いていた
人間じゃないというか……もはや生物なのか?
それとも、頭に脳が無かったのか?
どちらにしろ、弱点を探らないとダメージすら与えられない可能性があるぞ……
「ねぇ、おおいさんについて、詳しい話、知らない?」
何か新しい情報が無いか知りたくて、一応聞いてみる
「いや、あんまり知らない。そもそも、そんな怪談が有るのを知ったのが今回で初めて」
そうか
じゃあこれ以上対抗策とかは出てこない訳だ
そして、『おおいさん』の話には撃退する方法というのが書かれていない
となると、殺すのは厳しそうだな……
捕まえるのを軸に考えようかな?
でも、捕獲手段も思いつかない……
そうやって思考に時間を割いていたせいで、おおいさんの接近を許してしまった
(あ、まずい)
加速が間に合わない
とっさに左手を突き出した
(頼むから止まってくれ!)
すると、相手の手が燃えた
(……え?)
おおいさんも予想外だったのか、後ろに飛び退く
いや……確かに願ったけど、本当に出来るとは思って無かったな……
時間が無いから、戦いながら考察するしか無いな
状況は簡単だ
僕が止まってくれ、と思ったら、凍った
まあ、多分何かの装備だろうけど、心当たりが無い
熱くなる方なら僕の刀なんだろうけど、多分燃えはしない
少し前に装備の性能を確かめようと加速を使って温度を上げたら、高温で土がガラスになるくらいだつた
それにしては、今回のものは燃えるだけなので少し可怪しい気もする
おおいさんの性質にも関わってるのかな?
「お……おお」
ん?今度は結構効いているのか
顔を刺しても効かないのに腕を燃やすと効くって随分と変な奴だな
じゃあ、ガンガン燃やしていこう
加速して、周囲の棚から油を持ってくる
そして、その油をまとめておおいさんにかけた
「ん?出てこないな……」
まあ、実質1/200以上のスローモーションなんだからそう見えるのかも知れないけど
まあ、解除した瞬間に油が掛かればそれでいいか
後はライターを持ってきて……っと
じゃあ、解除
解除してすぐにライターをぶん投げた
すると、おおいさんに降り注いでいる油に火が付く
「おおおお!おお、おおい、おおいさ!」
この叫び方は……多分もうすぐだな
断末魔っぽい
そのまま、おおいさんをもう一度切りつけた
燃えろ、と願った状態で
すると、今度は今までに無いくらいに燃えた
油のお陰だろうか?
そのまま、断末魔が聞こえなくなるまで何度も切りつけた
「神柱!もう死んでる!」
弘岡が何か言っている
「賢!終わり!」
(え?)
懐かしい声が弘岡から聞こえた
「ひろ……おか?」
僕は、理解ができずに弘岡の方にゆっくりと振り向いた
読み終わったら、ポイントを付けましょう!